「卍」の変更見送り 「ナチス連想」の声もあった外国人向け地図記号

国土地理院は3月30日、訪日外国人向けの地図に使える15種類の地図記号を作成、発表した。
国土地理院

国土地理院は3月30日、訪日外国人向けの地図に使える15種類の地図記号を決定、発表した。同院は寺院を示す記号「卍」について「ナチス・ドイツを想起させる」とし、デザインの変更を検討していたが、今回は見送られた。

新たに作成された記号は、ホテルやレストランなど訪日外国人がよく訪れる15施設の記号。例えば交番の記号は、警察官が敬礼しているイラストにするなど、訪日外国人にもわかりやすいデザインになっている。

外国人向けの地図記号「交番」

作成が提案された記号のうち、寺院、モスク、観光案内所の採用は見送られた。寺院記号「卍」について、国土地理院は「ナチス・ドイツを想起させる」として「三重の塔」のイラストに変更することを検討していたが、「『卍』の由来を説明し、外国人に理解してもらうべき」「三重の塔は神社にもあるため、混乱する」などの意見がパブリックコメントで寄せられた。これを受けて国土地理院は「国民の十分な理解が得られて広く普及・利用される地図記号とは言えない」と判断した

当面のところ、寺院は「Temple」「卍(Temple)」のような表示を推奨し、卍に対する外国人の理解を深めつつ、動向を見極める方針だ。

■「『卍』がナチス・ドイツ想起させる」の意見、なぜ?

ナチスが使用したマーク「逆卍(ハーケンクロイツ)」

一般社団法人・日本地図センターによると「卍」の記号は、「明治13年式」と呼ばれる日本初の洋式図式に「佛閣」として記載されているという。

寺院の地図記号「卍(まんじ)」は古代インドで用いられたサンスクリット語(梵語)に由来し、幸福を意味する。ヒンドゥー教や仏教では吉祥の印として用いられる。ナチスが使用したマークは「卍」を逆向きにした「逆まんじ」と呼ばれるもの。ナチスの党章として使用され、1935~45年にはドイツ国旗にも用いられたことから、ヒトラーが率いたナチス・ドイツの象徴として知られている。

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