写真家のダイアン・ユデルソンさんは、1993年から2005年の間に、11回の流産を経験した。
失った11人には、それぞれかけがえのない思い出がある。彼女はそれを撮影し、写真シリーズ「ロスト」にまとめた。
写っているのは、超音波診断機、ベビー服、おもちゃといった赤ちゃんの思い出の品だ。写真には、それらの品を身につけるはずだった赤ちゃんの名前がつけられている。
「ロスト:チャーリー」
写真を撮影した理由を、ユデルソンさんはハフポストUS版にこう語っている。「写真を通して、赤ちゃんを失った女性や今まさに失おうとしている女性の心を慰めることができればと願っています。苦しみを味わっている女性たちは、ひとりぼっちではありません」
撮影のきっかけは、流産をした友人を助けたことだ。友人の心のケアをしているうちに、自分の悲しみを思い出した。
「赤ちゃんたちの思い出の品を入れている大きな白い箱を引っ張りだし、ベッドの上に広げました。前に取り出した時から、ずいぶん時間が経っていました。思い出の品を見ているうちに、赤ちゃんたちを記録に残したいと思ったんです」
「ロスト:グウェンドリン」
ユデルソンさんが最初に失った赤ちゃんは、初めは順調に育っていた。12週間目に心音を聞き、超音波で赤ちゃんの姿を見て、ユデルソンさんと夫は大喜びした。しかし、喜びは長く続かなかった。周りの人からお祝いの品をもらい、名前を考えていた16週間目、赤ちゃんの心音が止まっていると医師に告げられたのだ。彼らは赤ちゃんを失った。
「数週間、人生が止まったかのようでした。ぼうぜんとして過ごしました」その後に彼らを襲ったのは、深い悲しみだった。
「赤ちゃんを失った悲しみに、流産による身体の痛みと、妊娠によるホルモンの変化が加わり、更に大きな精神的ダメージを受けました。流産はとても悲しく、心身を消耗します。そして孤独になります」
「ロスト:ジェーン」
ユデルソンさんは、流産には居心地の悪い沈黙が伴っていて、それがママたちを更に孤独にさせていると考えている。
「母、妻、姉妹、友達、同僚。まわりに流産を経験した人がいるかもしれません。でも多くの人は話そうとしません。よかれと思って言ったのかも知れませんが、なかには『そんなに悲しんでもどうにもならないよ』といった心ないコメントをする人もいます。だから何も話さないのです」
「流産を話題にしないと、流産は社会的、文化的なタブーになってしまいます。私は『ロスト』が、流産に関する対話と理解を広げるきっかけになってほしいと願っています」とユデルソンさんは説明した。
「ロスト:ロバート」
ユデルソンさんによると、「ロスト」を見た多くの人たちから、写真で心が慰められた、自身の体験について話す勇気をもらったという感想が寄せられたそうだ。
ユデルソンさんには2人の子供がいるが、11人の赤ちゃんを失った痛みが消えたことはない。しかし「ロスト」をシェアすることで、その痛みが和らいだという。
「与えることは受け取ることだと言いますが、本当そうだと感じています。流産を経験したママたちの心の痛みを癒やそうとして、自分の心の痛みも軽くなりました」
写真からは、この世に生まれてこなかった赤ちゃんへの、ママの愛が感じられる。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。