BABYMETALが世界的に受けた理由とは? 唯一無二、巧みな戦略

日本のアイドルシーンで、必ずしもロック×アイドルは珍しくなかった。しかし…
時事通信社

なぜ、BABYMETALは海外でウケたのか? 万国共通の魅力とは

女性グル―プ・BABYMETALが世界同時発売したアルバム『METAL RESISTANCE』がビルボードの全米アルバムチャート39位となり、日本人では故・坂本九さん以来53年ぶりのTOP40入りと話題になった。イギリスのウェンブリー・アリーナでの単独公演にも1万2000人の観客を集め、9月からは3度目のワールドツアーを行う。

彼女たちが日本より先に海外で人気を呼んだ理由はどこにあったのか? 改めて彼女たちの魅力について探ってみよう。

◆本格メタルを可愛らしい少女たちが歌い踊る……そのギャップが海外市場で人気

BABYMETALはもともと、中学3年生までの“成長期限定”アイドルグループ・さくら学院から派生した3人組。さくら学院は“学校生活とクラブ活動”をテーマにしており、クッキング部、バトン部などのクラブ(ユニット)のひとつ、重音部がBEBYMETALの原型だった。コンセプトが“アイドルとメタルの融合”。

これが「斬新だった」とよく言われるが、実のところ、多種多様なスタイルが生まれた日本のアイドルシーンで、必ずしもロック×アイドルは珍しくなかった。アリス十番(仮面女子)も“メタルアイドルユニット”を名乗っていたし、ひめキュンフルーツ缶もグループ名と裏腹のへヴィなサウンドが売り。Party Rocketsは元MR.BIGのエリック・マーティンの楽曲提供を受けている。

とはいえ、これらのグループはアイドルの基本線を守りつつのロック。アイドルファンが離れないよう、振り切りすぎは抑えられていた。それに対しBABYMETALはさくら学院が母体にあっての活動。アイドルらしさはそちらで発揮する分、クラブ活動ではガチの“重音”=へヴィメタルに取り組んだ。

ヘッドバンキングなどのパフォーマンスやキメポーズでメタルの様式に則ったのはもちろん、何よりサウンドが本格的。演奏する「神バンド」は日本トップクラスのテクニックを持つミュージシャンで構成されている。

その激しいメタルサウンドは、アイアン・メイデンやオジー・オズボーンなどを聴いていた層の鑑賞にも耐えるもの。かつ、そこで可愛らしい少女たちが歌い踊るギャップは、アイドルを見慣れた日本国内より、そもそもこうしたアイドルが存在しない海外でネットを通じて新鮮に受け取られた。それを物語るかのように、再生回数4700万回を越えた「ギミチョコ!!」の動画には英語コメントが並んでいる。

◆既存のアイドル市場で争わず、一択の存在で支持を得た巧みな戦略

SU-METALのボーカル力とYUIMETAL、MOAMETALのダンス力。日本式アイドルのフォーマットも、18歳と16歳の3人が外国人にはさらに幼く見えるだけに驚きのパフォーマンスに映る。それに加え、ツインテールのYUIMETALとMOAMETALの顔や背格好が似ていることもあり、神秘性も感じさせて。メタルの神である“キツネ様”のお告げという設定や、『METAL RESISTANCE』収録の「KARATE」での空手風の振りなどエキゾチックな和要素も取り入れられた。

結果、海外のファンに自国にいない唯一無二のアーティストとして認知が広がっていった。それは、制作サイドの意図以上だったかもしれない。

日本国内では、こうした海外での評判が逆輸入される形で火がついた。現在のファンの中心は、さくら学院時代からのコア層は別にして、アイドルファンではない。ライブ会場ではウォール・オブ・デスやサークル・モッシュとメタル特有の動きも起こる。かと言って、メタルファンだけに受けているようでもない。その支持だけでは東京ドームに至らないだろう。ジャンルは別にBABYMETALを「面白い」と感じた一般層がかなりいる。

そういった意味では、ももいろクローバーZがサブカル的存在としてブレイクした状況とも通じる。ただ、ロックファンがBABYMETALのスタイルの面白さを知るきっかけは、レディー・ガガのツアーのオープニングアクトを務めるなど海外発の話題だったという。

さらに、さくら学院は握手会など“接触系”イベントをしないだけに、BABYMETALも可愛らしい少女たちながら、過度なアイドル色は付いてなかった。新規ファンもいちアーティストとして、よりニュートラルに入れ、「BABYMETALのファン」と堂々と言えた。日本でも海外でも既存の市場でパイを奪い合ったのでなく、“一択”の存在として支持を集めたBABYMETAL。加えるなら、一心不乱な少女たちのピュアな輝きに惹かれるのは、万国共通だったようだ。

(文:斉藤貴志)

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