世界各国の首脳や富裕層の隠れた資産運用を明らかにした「パナマ文書」の報道を続けている国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は5月10日、タックスヘイブン(租税回避地)に設立された約21万社の企業リストなどを公表した。リストにはソフトバンクのグループ会社など有名企業の名前も含まれており、各企業は相次いで経緯を説明するコメントを出した。NHKニュースなどが報じた。
この日、ソフトバンクグループの孫正義社長は記者会見で、「パナマ文書」に記載された2社に計約2億6000万円を出資していたことを明かした。孫氏は「私も驚いた。租税回避の意図はない」と話した上で、2社については「どちらもソフトバンクが設立した企業ではなく、事業目的の企業への少額出資だ」と述べた。株式はすでに売却済みで「ほとんど利益は出なかった」と説明した。
一方で、タックスヘイブンが、租税逃れに利用されているのではという指摘について孫社長は「世界的な投資会社が、そういう形態を取って行っている状況なので、我々だけがそのルールと違う形でやると投資競争には勝てない。世界的にルールの見直しがあれば、我々も同じようにそれに従う」と述べたと、テレ朝newsが報じた。
パナマ文書には総合商社の丸紅と伊藤忠商事の名前も含まれていた。丸紅の国分文也社長は10日の決算会見で、関連会社などを調査をしているとした上で「今のところ違法性は全くないし、租税回避を目的にして会社を設立することはない」と述べた。その一方で「タックスヘイブンでは会社を設立する手続きが簡易なことや、パナマやシンガポールなど金融や商品の取り引きの中心ということもあるので、コンプライアンス上の問題や違法性がないという確認は当然したうえで、ビジネス上の判断から今後もそういう場所に拠点を置くことは否定しない」と話した。
伊藤忠商事はNHKニュースの取材に対し、法人への租税回避との指摘を否定した。また、同社の鉢村剛常務は時事ドットコムの取材に対し、「台湾企業が中国で銅関係のビジネスを行うために立ち上げた会社に出資し、それがタックスヘイブン地域にあった」と、同社の関連会社がパナマ文書に載っていた経緯を説明した。
■麻生財務相「G7でも議論をしていかないといけない」
一連のパナマ文書問題については、政府としても対応する構えだ。菅義偉官房長官は10日の記者会見で「適正、公平な課税の実現に努めるべきだということは全く変わりない。今後も適切に対応していく」と述べた。また、麻生太郎財務相もこの日の閣議後会見で「日本が議長を務めるG7でも議論をしていかないといけない」とし、5月に開かれるG7(主要7カ国)の財務相・中央銀行総裁会議や伊勢志摩サミットで議題とし、租税回避を防止するため連携を目指す方針を示した。
パナマ文書は4月上旬に報道されてから、ロシアのプーチン大統領の友人や中国の習近平国家主席の親族など、各国首脳が関与している疑いも次々に明らかにされている。市民から厳しい批判を受けたアイスランドのグンロイグソン首相は辞任に追い込まれた。また、スぺインのソリア産業相もパナマ文書に記載された中米バハマの法人への関与を報じられたことを受け、辞表を提出した。
「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)のサイトは https://offshoreleaks.icij.org/
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