EU離脱の国民投票後、イギリスの鉄道内でヘイトクライムが急増

国民投票後の2週間で、事件は急増した。

イギリスのEU離脱が決まった6月23日の国民投票以降、イギリス国内の鉄道内で人種差別の疑いがあるヘイトクライムが急増したと、イギリス鉄道警察が発表した。

PA通信によると、投票後の2週間で列車内や駅構内で人種差別的発言や攻撃があったとの申し立ては119件に及んでいる。1日につき8件の事件が発生したことになる。

6月24日から7月7日までの間で報告されたヘイトクライムの件数は、それ以前の2週間に記録された件数より57%増えている。前年の同期間に比べても78%の急増だ。

国民投票後の2週間で、事件は急増した。

この統計は、イギリス国内の警察が公表した、ヘイトクライムが急増したというデータと一致する。EU離脱とヘイトクライムの急増で、外国人に対する憎悪が高まる懸念が強まっている。

PA通信が情報公開法に基づく開示請求で、イギリス鉄道警察から入手した国民投票後2週間の統計で、以下のことが明らかになった。

  • 投票結果の公表日翌日である6月25日、11件の人種差別的ヘイト攻撃が申し立てられた。
  • 公序良俗に反する違法行為が最も多く報告されており、多数の容疑者が乗客や駅員に対して人種差別的発言をしたとされている。
  • 6月26日にイーストサセックスのヘイスティングス駅で報告されたある事件では、容疑者がポーランド語を話していた被害者を怒鳴りつけたと報告されている。
  • 3件の申し立てで、人種や宗教の違いを動機とする傷害事件があったとされており、そのうちの1件では被害者の国籍を理由に攻撃があったとみられている。
  • 8月初め、情報公開法に基づく回答があった時点で、国民投票後の2週間で記録された事件に関連して22人が逮捕されている。

国民投票後の2週間に申し立てられたヘイトクライムは119件。6月10日からEU離脱投票日の6月23日にかけては76件、2015年6月24日から7月7日にかけては67件だったことを考えると、その急増ぶりがわかる。

鉄道機関サービスに関する情報を提供するイギリスの団体「railfuture」のブルース・ウィリアムソン氏は、「すべての乗客が、嫌がらせや暴力を心配をしなくても駅に行き、電車を利用できるようにならないといけません」と述べた。

「ここ最近のヘイトクライムに関する報告内容は非常に気がかりです。駅の構内や車両内に駅員を配置する必要があると言えます」

「ヘイトクライムは決して許されない」と、イギリス鉄道警察のクリス・ホートン警視総監は語る

慈善団体「ストップ・ヘイト・UK」の最高責任者ローズ・シムキンズさんは、「この問題がイギリスで全国的に報道された結果、被害者が申し立てする自信がついたのではという希望も出てきたのですが、一方でヘイトクライムの被害者は、ほとんど泣き寝入り状態だという悲しい現実があります」と語った。

「被害者たちが事件を申し立てない理由の一つは、警察が事件を取り扱ってくれる確信がないからだと、よく耳にします」

「イギリス鉄道警察に対し強く要請したいのは、報告される事件の種類を分析し、ヘイトクライムへの対処がどれほど効果的なのかを検証する機会を逃さないでほしいという点です」

イギリス鉄道警察は、イギリスの鉄道だけでなくロンドンの地下鉄のような都市交通網も管轄する。

イギリス鉄道警察のクリス・ホートン警視総監は、「ヘイトクライムは決して許されないし、社会でも鉄道上でもふさわしくない」と言う。

「ヘイトクライムがほとんど泣き寝入り状態であるのは自覚していますが、効果的に取り組んでいくためには、国民のみなさんが不快な行為に及ぶ人物に立ち向かい、我々に報告してもらう必要があります。すべての報告に対し、真剣に取り組みます。乗客を脅迫したり、怖がらせるような人物が確実に公平な裁きを受けるよう、常に根気強く対処します」と、ホートン警視総監は語った。

8月の調査で6月中旬からの4週間で、6000件以上のヘイトクライムがイングランド、ウェールズ、北アイルランドで申し立てられた。国民投票直後の急増ぶりからはやや減少したものの、報告件数は未だ前年同時期に比べて約3倍となっている。

政府はヘイトクライムに対する新たな対策を打ち出しており、その中には公共交通機関で発生する人種差別的な攻撃への措置も含まれている。

ハフポストUK版より翻訳・加筆しました。

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