マイク・ペンス次期副大統領による、LGBTへの攻撃はすでに始まっている

その影響の本当の深刻さが明らかになるのも時間の問題だ。

【ハフィントンポストUS版「Queer Voices」編集統括ミケランジェロ・シグノリルのレポート】

遠回しな言い方をするつもりはない。私たちはこれまでに(若いLGBTならなおさら)見たことのないほどの規模で、LGBTの権利に対する攻撃を経験している。これまでの進歩はまず間違いなく完全に止まってしまうだろうし、もしかしたら悪い方へと巻き戻ってしまうかもしれない。そして、それはもう始まっている。

まず、次期大統領ドナルド・トランプはニューヨーク出身だとか、おそらくはゲイの友達がいるだろうとか、2005年にエルトン・ジョンの同性婚にお祝いのメッセージを送ったとか、「LGBT」 という表現を使ったとか(共和党大会でゲイとムスリムの対立を煽るのに使った。この時トランプはただ私たちを「憎しみに満ちた外国のイデオロギー」から守るとだけ誓っていた)、11月13日のCBSのインタビューで、最高裁が2015年にアメリカ全土で合法化を認めた同性婚を「済んだ話だ」「解決済み」と言ったこととか、みなさんがこれまでに読んだり聞いたりしたであろう表面的な事柄はすべて忘れてほしい。

ロナルド・レーガンだってハリウッド出身だったし、ゲイの友だちがたくさんいた。伝説的俳優ロック・ハドソンもその1人だ。レーガンがカリフォルニア州知事だった時は、反同性愛法案に反対の立場を取ることさえあった。しかしレーガンは1980年の大統領選に当選するため宗教右派と協定をむすんだ(彼にとって特に重要だったのが福音派のテレビ伝道師ジェリー・ファルエル・シニアだが、トランプの場合はジェリー・ファルエル・ジュニアだ)。1984年に再選を果たすにはこの宗教右派に頭を下げなければいけなかった。

つまり何千人ものゲイ男性、トランスジェンダーの女性、アフリカ系アメリカ人やその他の人々が(レーガンの友人のハドソンも含めて)エイズで死んでいくのを放置することになった。大流行まで「エイズ」という単語さえ口に出さず、ましてや率先して大流行に対応し、国費を投入し研究を支援することもしなかった

当時はそうだった、では今はどうか。2016年初頭、マイク・ペンスがドナルド・トランプの副大統領候補に選ばれる前、トランプの選対本部長だったポール・マナフォートが、ビジネスの経営になぞらえて、トランプの政権運営の計画についてハフィントンポストUS版のハワード・ファインマンに説明したことがある。トランプのもとで、副大統領は「最高経営責任者(CEO)」あるいは「最高執行責任者」(COO)に相当するという。一方、トランプ自身はどちらかというと「取締役会長」に近い立場を取る。

「彼は自分では直接やりたくない仕事をさせるため、経験豊富な人材を必要としている。自分自身をどちらかといえば取締役会長として見ていて、最高経営責任者や、ましてや最高執行責任者だとは考えていない。そちらの候補者は数多くいて、まだ選出中だ」

結局それはペンスだということが明らかになり、選挙の前も後も、分析や解説記事のいくつかではマイク・ペンスが「史上もっとも権力を持つ副大統領」となるだろうと言われてきた。そして今、大統領選からまだ日も浅いが、ペンスの権力はゆうに10倍は強まった。ニュージャージー州知事クリス・クリスティーからトランプの政権移行作業チームのチェアマンの座を引き継ぎ、これからのトランプ政権の重要な役職をすべて兼任している。

マイク・ペンスはおそらくもっとも反LGBT的な福音主義者、キリスト教的政治活動家として議会や州知事の仕事を務めてきた。インディアナ州の過酷な反LGBT的「信教の自由」法に署名するはるか以前から、彼は議会の一員としてLGBTのための「コンバージョン・セラピー」(性的指向を変える治療)を支援した。後にはコラムニストとして、またラジオパーソナリティとして、結婚の平等は「社会的崩壊」を招き、同性愛は「本人の選択によるもの」だと語った。同性婚を阻止するのは偏見のためではなく、むしろ「神の意志」によって強制されるものだと言う。

大統領選でトランプ氏と共和党候補の座を争ったベン・カーソンは、同性愛を小児性愛や近親相姦になぞらえた人物で、政権移行作業チームの副チェアマンを務める。同じく副チェアマンの元下院議長ニュート・ギングリッチは、LGBTの権利を主張する人々を「ゲイ・ファシズム」と呼び、また2014年には「新しいファシズム」と発言して攻撃されてきた。

政権移行作業チームで国内政策を担当するのは前オハイオ州副知事ケン・ブラックウェルだ。ブラックウェルは同性愛を放火や窃盗癖になぞらえ、「衝動」と呼んだ。2008年のセント・ポールでの共和党大会で、私のインタビューに応じた彼はこう説明した。

「まあ、実際には衝動を抑えるという選択肢があります。だからこそ私は、実際は必ずしも同性愛の衝動に従う必要はないと思うのです。これは数々の実例で証明されていると思いますよ……同性愛は衝動であって、制限したり、抑えこんだり、変えたりすることができる……私の主張を明快に言えばそういうことになります」

こうした人々や、他にも信仰に根ざした偏見を持つ人物がトランプ政権で影響力のある地位につく予定だ。

選挙期間中を通じて私が何度も何度も書いてきたように(メディアは奇妙にも、そして無責任にも、トランプを「比較的同性愛に寛容」な人物として描いてきたが)、トランプは宗教的な過激派と接触し、約束を交わしている。最高裁判所の判事を入れ替え、連邦裁判所が婚姻平等法を撤回させることを約束した(すでに20名の候補者リストを提出している。たしかに目的に見合うものだ)。トランプ自身、婚姻平等法には2000年から一貫して反対している。LGBT差別を合法化させる「表現の自由保護法」(FADA)への署名も約束している。この法律は政府関係者などによるLGBTの人々に対する差別を許容しかねないものだ。

時間をかけて婚姻平等法を覆すことが可能なのかどうかはわからない。たとえ平等法に反対するナショナル・オーガニゼーション・フォー・マリッジ(NOM)が、トランプの選挙戦を支援し、LGBTの権利を縮小する計画を彼に送ったとしてもだ。しかしFADAや、(すでに共和党が多数を占めた上院と下院が提出した)今後予定されている類似の法案が成立すれば、同性婚は一種の「下級結婚」として位置付けられるかもしれない。ケンタッキー州で同性婚の許可証発行を拒否したキム・デイヴィスのような書記官たちが、ゲイやレズビアンのカップルに結婚許可証を出さなくても許されるようになるかもしれない。州の職員たちも、ゲイやレズビアンのカップルへの行政サービスの提供を拒否できるようになるかもしれない。銀行員や花屋といった、これまでいくつかの州で同性愛者へのサービスを拒否して問題になったことがある人々も、連邦法のもとで同性愛者を追い返す権利を認められるかもしれない。そして異議を申し立てるには、今よりももっと保守的な最高裁判所に訴えなくてはならない。

トランプは、バラク・オバマが出した大統領令のなかでも、自分が違憲だと考えているものは撤回するつもりだと語った。そのなかにはオバマ大統領が出したLGBTの権利に関する大統領令も含まれる。たとえば連邦政府の関連業者がLGBTの雇用を差別することを禁止する法案(ENDA)などだ。

Buzzfeedの記者ドミニク・ホールデンが指摘するように、マイク・ペンスはすでに、オバマが各州に出したトランスジェンダーの学生たちを保護するようにという大統領令の撤回をトランプとともに検討していることを明言した。

ペンスは「ドナルドも私も、こうした問題は州単位で解決されるのが妥当だと考えている」と、10月のラジオ番組で、福音派のクリスチャン指導者「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」のジェイムズ・ドブソンに語っている。「ワシントンが、私たちの地元の学校運営に口を出すいわれなどないでしょう」

ゲイの億万長者ピーター・ティールが共和党全国大会でスピーチを行い、政策移行準備チームに在籍していることは何の慰めにもならない。

ティールはLGBTの権利を守る運動に熱心だったわけではないし、今ではニュースサイト「Gawker」の閉鎖を求める訴訟に資金を提供していることで有名だ。ティールがゲイだという事実を、Gawkerが暴露したことへの復讐だ。

もしトランプが大統領として政権運営する時、7月の共和党全国大会での発言通りなら、おそらくティールに要職を与えるか、「LGBT」の用語を使うなどしてメディアに対して彼がLGBTに比較的寛容だというイメージを与えるような振る舞いをするだろう。一方で他の連中に、LGBTの権利を制限させ、後退させてしまう手助けをする。

「LGBT」という言葉を使いながら(そしてティールのスピーチを引用しながら)、トランプが共和党全国大会のステージに登っている間 、共和党全国委員会の綱領は歴史上最も反LGBT的なものとなった。反LGBTの団体「ファミリー・リサーチ・カウンシル」(FRC)の代表トニー・パーキンスは、共和党全国大会で採択された政策綱領に「とても満足している」と語った。委員会の一員として、彼はそこに「コンバージョン・セラピー」の周知を含めることを決定している。

トランプはこの綱領の、LGBTに関わる部分には干渉していない。貿易の問題や、あるいは、ロシアに対抗するように見せかけたウクライナ支援の問題には積極的に関与した。そしてパーキンスのような人物が極端なアジェンダを推し進めるのを放置した。彼らにおもねることが必要だとわかっていたのだ。トランプがFRCのヴァリューズ・ヴォーター・サミットで9月に講演を行い、「宗教の自由」を守ることを約束したことで、白人の福音派の大多数が11月8日、トランプに投票した。その数は、ここ最近の他の共和党の大統領候補と同じか、あるいはもっと規模が大きかっただろう。トランプが2020年に再選を果たすつもりなら、白人福音派の協力は不可欠だ。それはつまり、トランプは今のうちに彼らになにか大きな土産を渡しておかなければならないことを意味する。そして福音派のリーダーたちはニューヨーク・タイムズに、トランプに期待することを語っている。

インディアナ州で中絶と同性婚の禁止を法制化した実績のある福音派のマイク・ペンスが副大統領になることで、キリスト教の指導者たちはホワイトハウスとのつながりと影響力を得られたと感じているという。

福音派の団体「フェイス・アンド・フリーダム・コアリション」の代表ラルフ・リードは、「私は彼が大統領として、公約を実行してくれると信じています」と語った。彼は大統領選で、キリスト教徒たちを動員する手助けをした。

もしトランプが、共和党全国委員会の時と同じように、大統領としてLGBTの問題に干渉せず、ペンスのような人々に(重ねて言うが、おそらくはこれまでに最も権力のある副大統領になる人物に) 、カーソン、ブラックウェル、ギングリッチその他大勢と一緒にやりたいようにさせておくのなら、LGBTの権利に対する攻撃はすでに進んでいると考えていい。その影響の本当の深刻さが明らかになるのも時間の問題だ。だからこそ、私たちは悲しみから抜け出し、怒りをあらわにし、今すぐに戦い始めなければならない。

(敬称略)

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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