アメリカ先住民が建設に反対している石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」建設について、ワシントンの連邦地方裁判所は2月13日、最終区間の建設差し止めの仮処分を求めるアメリカ先住民の訴えを退けた。
ダコタ・アクセス・パイプラインは、「エナジー・トランスファー・パートナーズ」がノースダコタ州からイリノイ州までをつなぐ1172マイル(約1886キロメートル)のパイプラインを建設するプロジェクト。建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族とその支援者たちが、水源のミズーリ川が汚染されることを懸念し抗議デモを続けていた。陸軍省は2016年12月4日、ミズーリ川をせき止めたダム湖「オアへ湖」の地下にパイプラインを通す工事を認可しないと発表し、建設は中断されていた。
しかしトランプ大統領は1月24日、ダコタ・アクセス・パイプラインの工事を完了させ、カナダのアルバータ州からネブラスカ州までの1179マイル(約1897 キロメートル)をつなぐパイプライン「キーストーンXL」建設を手がける「トランスカナダ」に、オバマ前大統領が2015年に却下した建設計画の再申請をするように促す大統領令を出した。トランプ氏は建設再開で何千人もの雇用が生まれると述べた。
大統領令を受けてアメリカ陸軍省は7日、環境に及ぼす影響調査が完了するまで建設許可を与えないとしていた方針を覆し、環境調査を中止し、建設を完了させる許可を与えると発表した。エナジー・トランスファー・パートナーズは9日からパイプラインの最終区間の建設を開始した。
ワシントン連邦地裁のジェームス・ボアズバーグ判事は、エナジー・トランスファー・パートナーズにノースダコタ州の貯水湖の地下にパイプラインを通す工事再開を認めた。一方、パイプライン計画に反対するアメリカ先住民の訴訟が現在も複数進行している。
BuzzFeedニュースによると、建設の一時中止を求める訴えを退けたことについて、ボアズバーグ判事は「先住民側はパイプライン建設によって直ちに修復不能な損害が出ることを示せなかった」と話した。AP通信によると、ボアズバーグ判事は27日の公聴会で工事中止の訴えについて再度検討する予定だという。
「今日の地裁の判断でダコタ・アクセス・パイプラインの建設を一時中止する訴えが退けられたのは残念ですが、驚いてはいません。この闘いがまだまだ終わらないことはわかっています」と、スタンディングロック・スー族の一員で「ラコタ族法律プロジェクト」のチェイス・アイアン・アイズ弁護士は声明で語った。
アメリカ陸軍工兵司令部は7日、エナジー・トランスファー・パートナーズにオアへ湖付近の最終区間を工事する許可を与えた。アメリカ陸軍工兵司令部が地役権(ある土地の便益のために、他人の土地を利用する権利)を認めることによって、ノースダコタ州からイリノイ州まで原油を運ぶ1172マイル(約1886km)のパイプラインの工事を完了できる。
スタンディングロック・スー族はこの計画に一貫して反対しており、部族が生活する居留地の水資源に打撃を与え、神聖な土地を脅かし、連邦文化財保護法とスタンディングロック・スー族ら先住民の居留地を侵害しないと約束した1851年のフォート・ララミー条約に違反しているとして抗議している。
この裁判では、スダンディングロック・スー族の隣に居留地が位置するシャイエン・リバー・スー族も原告として加わっている。裁判でシャイエン・リバー・スー族側は、たとえパイプラインから石油が漏れないとしても、宗教儀式で使う神聖な水を汚すことは「宗教の自由回復法」に違反するので、工事の一時中止が必要だ、と訴えたが、その訴えも退けられた。
一方AP通信によると、当局側はパイプラインに石油が流れるまで先住民側には訴訟を継続する時間があるので、一時中止の訴えは不当だと主張しているとが報じた。
エナジー・トランスファー・パートナーズの弁護士は13日の公聴会で、オアへ湖の区間は30日以内に完了の見込みだと述べた。同社の広報担当は、ボアズバーグ判事の判決についてハフィントンポストUS版へのコメントを控えた。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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