入院先のロンドン市内の病院に尊厳死を勧められていたイギリス人の赤ちゃんが7月28日、延命措置の中止によって亡くなった。母親のコニーさんは「私たちの美しい、小さな男の子は逝ってしまいました。チャーリーをとても誇りに思います」と声明を発表した。
亡くなった赤ちゃんは、生後11カ月のチャーリー・ガードくん。「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」という深刻な難病のために自力で呼吸ができず、病院側が両親に尊厳死を勧めていた。
両親はアメリカでの治療を求めたが、病院側は回復の見込みがないとして渡航に反対し、2017年3月から4カ月間におよぶ法廷論争に発展した。
イギリスの高等法院は4月に病院側が求める尊厳死を認めたが、両親が上告し、6月にイギリス最高裁と欧州人権裁はこれを棄却。7月に入り、治療法についての「新たな証拠」が提出されたとして、イギリス高等法院が審理を再開した。同月25日に判断が下される見通しとなっていたが、両親はアメリカ・コロンビア大学の専門医らによる検査結果を受け、チャーリーくんの治療を断念すると24日、発表した。
ロンドンを訪問しMRI検査を実施した同大学の平野道雄博士らの診断で、チャーリーくんの筋肉の消耗状態が判明。脳に回復不能の損傷があり、チャーリーくんが治療を受けるにはすでに手遅れだということが確認されたという。
この論争をめぐり、病院側には医師や看護師への殺害予告などの脅迫が寄せられたほか、入院する他の子どものお見舞いに来た人への嫌がらせをする人も現れた。両親はこれらの脅迫行為について、「私たちは病院職員や私たちの息子と関連している人に対する、いやがらせや脅迫的な行為を許しません」との声明を発表している。
母・コニーさんは、24日に発表した声明のなかで、「チャーリーがまるで、生きるチャンスがないかのように言われたが、彼は戦士だった」とコメントしている。
「息子が世界にもたらした影響を否定することはできません。彼の遺産は、決して死ぬことはありません。チャーリーは、多くの人が人生の中でやるよりも、11カ月でこの世でより多くの人々に大きな影響を与えてきたのです」