就任からわずか10日後、ホワイトハウスの広報部長のアンソニー・スカラムッチ氏が、その職を追われた。後任のジョン・ケリー氏が首席報道官の職を引き継いでいる。
スピード更迭されたスカラムッチ氏が10日間で巻き起こした10の騒動を振り返ってみよう。
トランプ大統領に対する忠誠を誓い、愛していると宣言した
就任初日、スカラムッチ氏は、ホワイトハウスの記者会見で繰り返し自分の新しいボスとのつながりを示し「大統領を愛している」と宣言した。
トランプ批判するツイートを慌てて削除し同時に、「完全な透明性」を宣言した
大統領選の最中、スカラムッチ氏は、ドナルド・トランプ大統領に批判的なツイートをたくさん投稿していた。また、トランプ大統領とは相容れない政策や考え方を支持すると述べていた。例えば、厳しい銃器取締法やトランプ大統領が「デマ」と呼ぶ気候変動への対策などだ。
しかし、広報部長の職を得た後、スカラムッチ氏はそうしたツイートを削除した。「完全な透明性」を実現するためだとしたが、現実には透明性に反する行動になっていた。
大統領選へのロシアの介入がなかった証拠があるという「ある情報源」の存在を主張した。
新しい職に就いて数日後、スカラムッチ氏は日曜日の政治討論番組に出演し、その地位について意見を述べ、自分のボスを擁護した。
CNNの「State of the Union」のなかで、スカラムッチ氏は匿名の情報源が「もしロシアが実際に陰で選挙戦をハックし、トランプ氏を支援していたのなら、こうした(トランプ陣営の関係者がロシア関係者とやりとりしていた)Eメールを目にすることなどないだろう」と彼に言ったと述べた。
ホストのジェイク・タッパー氏が問い詰めると、スカラムッチ氏は情報源がトランプ大統領であることを認めた。
「大統領がエアフォースワンから電話をかけてきました。彼は『こういうことだ、ロシアはやったかもしれないし、やっていないかもしれない』と言っていました」。スカラムッチ氏はこう語った。
女性報道官のサラ・ハッカビー・サンダース氏の「髪型やメイクアップ」に余計なアドバイス
報道官のサラ・ハッカビー・サンダース氏が、スカラムッチ氏の起用に反対して辞職したショーン・スパイサー氏の後任となった。それを受けて、スカラムッチ氏は彼女の髪型やメイクアップについて言及した。
スカラムッチ氏はインタビューで「彼女が演台に立ってより良い仕事ができるように、できる限りのことはしたいと思います。彼女は最適な人物です。しかし、オリンピックを目指す全てのアスリートと同じく、私たちは常に自分たちを高め続ける必要があります」と語った。
さらに続けて「サラにお願いしたいことは1つ。サラ、もし見ていたら、金曜日のヘアメイクの担当者が気に入った。あの人を使い続けよう」と話した。
その後、批判を浴びたスカラムッチ氏は「この話は自分のメイクアップについての話である」と弁明した。
記録として:発言は自分のヘアアンドメイクアップについてのものだ。私がメイクアップアーティストを気に入っているのは事実だ。私にはできる限りあらゆる手助けが必要だ!#humor
トランプ大統領を「非エリート」として擁護。チーズバーガーやピザを食べるのがその理由。
BBCとのインタビューで、スカラムッチ氏は「エリート」が「ロシア疑惑」に過剰に注目していると非難した。2016年の大統領選期間中にトランプ陣営とロシアとの共謀があったかについては現在も調査が続いている。
BBCのホスト、エミリー・メイチルズ氏は、トランプ氏が大統領就任前は不動産王で、リアリティー番組のスターで、家業を引き継いだ人物であることを指摘した上で、「トランプ大統領のどのような部分が非エリートなのですか?事業の面ですか、政策ですか、相続でしょうか?」と質問した。
それに対してスカラムッチ氏は「大統領には多くの物事が伴います。チーズバーガーはどうですか?我々が食べるピザはどうですか?」と回答。メイチルズ氏は「チーズバーガーやピザは誰でも食べます」「何をおっしゃってるのですか?」と返した。
スカラムッチ氏は、メイチルズ氏を「ややエリート主義」と非難し、トランプ氏については「非常に共感できる」と述べた。
医療保険制度改革の撤回を奴隷制度の廃止になぞらえた。
さらにBBCのインタビューでスカラムッチ氏は、医療保険制度改革の撤回に向けた共和党議員の取り組みをエイブラハム・リンカーンによる奴隷制度廃止の努力と対比して議論した。
「Team of Rivalsを読んでみれば」と、歴史家のドリス・カーンズ・グッドウィン氏によるリンカーンの伝記を彼は引き合いにだした。そして、「議会上下院で彼の望んだ奴隷制度全廃を勝ち取るために、リンカーンは大変な努力をしたはずです。我々が現在行っていることよりもずっと大変なことでした」と述べた。
当時の首席補佐官ラインス・プリーバス氏が機密情報を漏らしていると示唆した。
スカラムッチ氏はCNNの「New Day」に電話出演し、ほとんど番組を乗っ取った。スカラムッチ氏はプリーバス氏が記者に情報を漏らしたことを非難するために出演したのだ。
「私がラインスの名前を(情報漏洩を非難する)ツイートに入れたのは、ラインスが手を下したことを非難するためです。記者たちは誰が漏らしたのか知っているのですから」と彼は言った。「ラインスが自分が漏らしたのではないと言いたいのなら、そうさせればいいのです」。
自分とライバルのプリーバス氏の関係をカインとアベルに例えた。
30分ほど続いたこのCNNの番組への出演中に、スカラムッチ氏はプリーバス氏との不安定な関係について述べた。
「演台で我々が兄弟だと言ったのは、(スカラムッチ氏が初めてホワイトハウスに登場したとき)我々にはお互い無礼なところがあったからです。カインとアベルのような兄弟もあれば、お互い喧嘩しながら続いていく兄弟もあります」とスカラムッチは言った。
「この関係が修復できるかどうかはわかりません。大統領次第です」。
なお、聖書の物語ではカインはアベルを殺してしまう。
CNNのインタビューの翌日、プリーバスは首席補佐官を解任された。
解任されたペンシルバニア大学のフットボールコーチのジョー・パターノ氏を「道義心」の模範として上げた。
また、CNNの電話出演で、スカラムッチ氏はホワイトハウスの職員に「職務への忠誠」を求め、ジョー・パターノ氏を取り上げた。今は亡きペンシルバニア大学のフットボールコーチで、ジェリー・サンダスキーの性的虐待スキャンダルの隠蔽に関与したとされる人物だ。
「職務に忠実でありましょう。ジョー・パターノ氏を覚えていますか?彼はなんと言ったでしょう?」スカラムッチ氏はホワイトハウス職員に述べた。
「忠誠心と自尊心と尊敬をもって行動し、オフィスでの大統領職に自信を持つことです。ぜひそうありたいものです」。
おそらく、スカラムッチ氏のこのチグハグな例えはアル・パチーノがパターノを演じるHBO映画のエグゼクティブプロデューサーから学んだものだ。
2017年、ホワイトハウス広報部長の職にある人物がジョー・パターノ以上の人物であると気がつくでしょう。@Scaramucci
ニューヨーカー誌でのインタビューで同僚を罵倒
ニューヨーカーのライアン・リザ記者はスカラムッチ氏とのインタビューについて書いている。そのなかで広報部長は新しいホワイトハウスの同僚に対して怒りをぶちまけたという。
スカラムッチ氏はプリーバス氏を「ひどい誇大妄想の統合失調症で、変質病」とし、再びプリーバス氏が「情報を漏らしている」と示唆した。スカラムッチ氏はプリーバス氏がホワイトハウス報道官を解任されるだろうと主張した。
「彼らは全員私が解雇する」とインタビューでスカラムッチ氏は言った。「私は別の日にもう一人やめさせる。明日は3、4人やめさせるつもりだ。あなたに情報を漏らした人物を特定するだろう。ラインス・プリーバス、もし、お前が何か漏らすなら、プリーバスは間もなく辞任を求められるだろう」。
スカラムッチは大統領首席補佐官のスティーブ・バノン氏に対しても暴言を発した。
「私はスティーブ・バノンではない。私はあのクソ野郎とは違う」スカラムッチ氏は記者にこう述べた。「私は大統領の力を超えて自分自身のブランドを築こうとしているのではない。私は国に仕えるためにここにいる」。
インタビューは大騒動を巻き起こし、スカラムッチに引導を渡すことになった。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
▼TIME誌の表紙を飾ったトランプ氏(画像集)▼