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2018年03月28日 16時11分 JST | 更新 2018年03月28日 16時11分 JST

ジリ貧「テトラポッド」業界、反転攻勢なるか

「消波ブロック」の知られざる実態

「消波ブロック」と聞いてピンとこなくても、「ああ、これか」と思う読者も多いのではないだろうか(記者撮影)

「消波ブロック」と聞いてすぐさまピンとくる人は、建設業関係者か相当なコンクリート愛好家だろう。港や河川敷にごろごろ転がっている、三角形とも三角錐とも名状しがたい無骨なコンクリートの塊。一般的には「テトラポッド」の名で親しまれているが、これは最大手メーカーである不動テトラの商標で、正式名称は「消波ブロック」、あるいは平たい形のものと併せて「消波・根固ブロック」などと呼ばれる。

浜辺に大量のブロック

3月中旬、茨城県沿岸部で大量の消波ブロックが造られていた。訪れた時点ですでに製造は佳境を迎え、独特の丸みを帯びた4脚のブロックが海水浴場にひしめき合う。「ここまで大規模な現場はなかなかない」。不動テトラ東京本店茨城営業所の横田健蔵所長が目を細めるのもうなずける。

本記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら

波がぶつかることで威力を減衰させるブロックは、防災や海岸浸食対策として港や浜辺に設置されている。ひとつひとつが重くサイズも大きいブロックは輸送コストがかさむため、工場ではなく現地生産が基本だ。

ブロック会社の稼ぎ頭も、ブロックの製造・出荷ではなく、コンクリートを流し込む型枠のリース料となる。浜辺で造られているブロックの型枠は不動テトラの所有で、現場で製造するブロック1個につきいくら、という契約で地元の建設業者に貸し出されている。

Photo gallery「テトラポッド」はこうして造られる See Gallery

製造中のブロックは12トンモデル。身長170センチの横田所長にお願いして隣に立ってもらったが、その大きさに驚かされる。だが「これはまだまだ小さいほう。大きいブロックでは80トン級にもなる」(横田氏)。その場合は足場も必要で、ブロック1個の製造でも現場はちょっとした戸建て並みの規模になる。

完成したブロックには識別番号が振られており、確認した中で最も大きい数字は224だった。ここの現場だけで、製造するブロックは1000個以上にものぼるという。ちなみに12トンモデルでは、型枠リース料や労務・資材費などを含めて1個10万円ほどだという。むろん個人販売はしていない。完成したブロックは、既存のブロックの上にクレーンで積み重ねられていく予定だ。

もともとフランスで開発された

自然災害の多い日本では全国に消波ブロックが設置されている。その歴史をひもとくと、1949年に火力発電所の護岸工事のためにフランスで開発されたのが始まりだ。配水管を波から守るために設置されたが、その優れた消波能力が話題となった。ほどなく日本でもブロックが造られるようになり、1961年にはフランスからブロック製造の特許を譲り受けた日本テトラポッド(現不動テトラ)が設立され、加速度的に普及していった。

トレードマークとなった4脚のブロック「テトラポッド」が製造されるのもこの頃だ。高度経済成長の波に乗り、ブロックは全国の護岸工事で設置されていった。1967年には業界団体である「日本消波根固ブロック協会」が発足、現在16社1支部が加盟するひとつの産業へと成長した。

だが、ビジネスとしての消波ブロック事業の先行きには不透明感が漂う。「全国の港湾でブロックの設置が一巡し、需要が細ってきている」(日本消波根固ブロック協会の中西勉会長)ためで新規に設置できる港湾や河川敷になくなってきているのだ。市場全体の統計が存在せず厳密な業界動向の把握は難しいが、上場企業3社のブロック事業部門の売上高推移を見ると、長期的な衰退傾向にある。

実は、業界トップの不動テトラの収益柱は海洋土木や地盤改良事業であり、会社の源流であるブロック事業は慢性的な赤字が続いている。こうした状況を受け、今年1月にはブロック事業を手がける子会社を吸収合併することを発表した。

売上高推移のグラフが時折突き抜けているのは、震災復興で一時的に消波ブロック需要が急増するためだ。東日本大震災のほか、1995年の阪神淡路大震災や2004年の新潟中越地震でも港湾や河川が被災し、設置していたブロックが破損したことから、一時的に型枠の引き合いが強まった。だが復興需要も一段落し、震災前の水準をも下回りつつあるなど、「特需」頼みでは未来は拓けない。

消波ブロックの新技術

将来性に不安を抱える消波ブロック事業だが、業界からは「減少は底を打った」という楽観的な声も上がる。目線の先にあるのは、既存のブロックの更新需要だ。コンクリートの寿命は一般的に約50年。1960年代の高度経済成長期に爆発的に出現したブロックが、一気に更新時期を迎えるのだ。ブロックの設置を国が音頭を取って進めたこともあり、今回の維持更新も国の政策的な投資が見込めるのでは、と業界は期待を寄せる。

あまり知られていないが、技術開発が進んだ結果、消波ブロック自体も進化を遂げている。代表的なものは、ブロック特有の概念である「空隙(くうげき)率」の向上だ。

立体ブロックは積み重ねるとブロック同士のすき間ができるが、このすき間の割合を空隙率と言う。空隙率が高い、すなわち積んだ際のブロック同士のすき間が大きいほど、少ないブロック数で広い面積をカバーできるためコスト削減につながる。さらにブロックの先端に突起を作って積み重ねても崩れにくくしたり、イオンを放出する特殊な素材を用いてブロックに藻が繁殖できるようにしたりするなど、陰ながら改良が続けられている。

国内での更新需要に加えて、各社は東南アジアやアフリカなどでブロック設置工事を受注するなど、海外展開も進みつつある。アジアには主要なブロックメーカーが存在せず、ブロックがおいていない港湾や河川も多数存在する。経済発展により電力需要が増加することに伴う発電所の建設も追い風だ。沿岸部に建設される発電所には防災対策として消波ブロックが設置されるため、大型案件の受注のチャンスになる。

市場の縮小に歯止めがかからず、じり貧状態だった消波ブロック業界。反転攻勢に向けた模索はしばらく続きそうだ。

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