アート&カルチャー
2018年03月31日 10時00分 JST | 更新 2018年03月31日 16時55分 JST

めちゃイケで炎上したジャルジャルが、「誰かを傷つけるのはしゃあない」と言い切る理由

「めちゃイケ」が最終回を迎える。いまジャルジャルに聞く、これからのお笑いとは?

ジャルジャルの後藤淳平(左)、福徳秀介(右)
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ジャルジャルの後藤淳平(左)、福徳秀介(右)

3月31日、フジテレビの看板バラエティ『めちゃ×2イケてるッ!』が最終回を迎える。番組を約7年半にわたって支え続けたのが、結成15年目のお笑いコンビ・ジャルジャルだ。

ジャルジャルは、一度めちゃイケで大炎上している。「27時間テレビ」で福徳秀介がナインティナインの岡村隆史にバスケットボールをぶつけ続け、「集団いじめ」に見えると批判され、「アンチ」が生まれた。

ギリギリを狙って笑いを生むことは、誰かを傷つけることと隣り合わせだ。

めちゃイケが終わる。お笑いが変わっていく。

「炎上経験者」のジャルジャルは、「これからのお笑い」をどのように考えているのだろうか。

「お笑いっていうのは、基本的に人を傷つける」

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『M-1グランプリ2017』決勝の舞台で2人が披露した漫才ネタ「変な校内放送ゲーム(ピンポンパンゲーム)」。

「ピンポンパンポン」という学校のチャイム音の最後に一節を足して「ピンポンパンポンピーン」と言ったり、逆に減らして「ピンポンパン」と叫んだりして、「(音が)1個多いな」「少ないな」と、ひたすらツッコミを入れていくという内容だ。

怒涛のスピードと軽妙なテンポで言葉遊びが繰り広げられ、「これは漫才なのか?」と困惑も呼び、視聴者に強烈なインパクトを与えた。

「ピンポンパンゲーム」は当時のジャルジャルの"最高傑作"。福徳は、「誰も傷つけなくて、老若男女が楽しめる。平和で、誰もが笑うネタができた」と話している。

福徳「僕ら14年間お笑いをやっていて、ネタが8000個あるんですけど。正直言って、やっぱり全部のネタが誰かをどこかで傷つけてるネタで。多分お笑いっていうのは、基本的に人を傷つけるものなんやと思います。

僕らのネタを笑う人がいる一方で、絶対にどっかでは笑わん人もおる。ピンポンパンゲームは、その8000個のネタの中で唯一、誰ひとり傷つけてないネタだった」

後藤淳平「まぁ、内容がしょうもなすぎるんで、傷つきようがないんですよね。2人が褒め合って笑いが起きるという不思議な形式にもなっているので」

文字通りゲームのような漫才で「誰も傷つけない笑い」を見せたジャルジャルのネタに、審査委員長のダウンタウン・松本人志は最高得点をつけた。それでも結果は6位敗退。感情をむき出しにして悔しがる福徳の姿は、多くの人の心を動かした。

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<ジャルジャルのコント「すごい展開」。公式YouTubeチャンネルより>

「気を遣いすぎたらなんも出来なくなってしまう」

M-1後にジャルジャルへ向けられた世間の反応は、かつての「大バッシング」とは対照的だ。

2011年、ジャルジャルはフジテレビ恒例の特番「FNS27時間テレビ」放送後、激しい批判にさらされた。めちゃイケメンバーや中居正広、アスリートたちがバスケの試合をするコーナーで、出演者がナインティナインの岡村隆史にボールをぶつける演出があり、「集団いじめに見える」などネット上で非難の声が噴出したのだ。

一連のやりとりはスタッフや出演者間で事前に打ち合わせされたものだったが、福徳は「あのイメージ、思いのほか引きずりましたね。多分世間的には、6年ぐらいは引きずった」と振り返る。

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炎上から数年経ったが、今でもバラエティにおける「いじめ」と「いじり」の境界線など、テレビが現実世界に与える影響についてさまざまな意見が交わされている。

そんな中、ジャルジャルが2017年のM-1の舞台で颯爽と披露した「誰も傷つけない笑い」。

この時代だからこそ、かつて「大炎上」を経験したからこそ、"優しい"笑いを追求したくなったのでは?そう聞くと、2人は「そうではない」と否定する。

福徳「これは本当に、ネタができてから考えついたことです。ある意味では、後付けですよね。これは人を傷つけてないなってふと気づいただけです」

後藤「結果として、出来上がったものが誰も傷つけなくて、たくさんの人が笑ってくれるだろうなって思えるネタだった。

人を傷つけない笑いを作るとか、そこを目指して作ったわけではないですね。傷つけないってことをモットーにしてネタ作るのはなかなか難しい。誰がどこでどう傷つくか、わからないじゃないですか。

自分たちは、『これをやったらこういう人が傷つくやろうな』と思ってネタを作ってませんし、気を遣いすぎたらなんも出来なくなってしまう。だから、基本は自分たちがおもしろいと思ったもの、目の前のお客さんが笑ってくれると思うものをやるしかない、っていうだけですよね」

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<コント「男か女かわからん奴」。公式YouTubeチャンネルより>

「そのうち世界中のテレビが同じような番組になっていく。そうすると、余計つまらなくなる」

「バスケットボール」の一件のように、ネット社会で多くの情報が拡散されるようになり、テレビに映されたワンシーンが「炎上」する騒動は次々と起きるようになった。

「日本のお笑い文化」と、「差別問題」との衝突もその一環だ。

直近では『ガキ使』の「黒塗りメイク騒動」があった。2017年大晦日に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しSP! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』で、ダウンタウンの浜田雅功が顔を黒く塗ってエディ・マーフィーのモノマネをした。この「黒塗り」が人種差別的でタブーな表現ではないかと、ネット上で物議を醸した。

ジャルジャルの2人はこの騒動をどう受け止めたのか。後藤は、「そういう時代なんやなって思います」と冷静に分析する。

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後藤「アメリカの歴史の文脈であの表現をタブー視するんだとしたら、そのうち際どい表現はすべてなくなっていって、世界中のテレビが同じような番組になっていきますよね。そうなると、余計テレビがつまらなくなって、テレビ離れも進んでいくんじゃないですかね」

福徳「自分らがコントをやる上で、もし黒塗りのが、おもろいってなったら、普通に黒塗りをすると思います。プロデューサーさんが止めたらやめますけど、もし誰も止めへんのやったら、きっとやりますよ」

後藤「アメリカ人を笑かそうと思ってやるんやったら、しないかもしれない。それで笑ってくれないだろうとわかるから。でも、目の前にいる日本のお客さんを笑かす上で、黒塗りの方がおもしろいんやったら、した方がいいですよ。

批判が起きたとしても、『そっちに向けて作ったネタではない』って話なんです。それがもうテレビでは通用しない時代になるとしたら、ほんまに濃くておもしろいお笑いは、ネットとか舞台の方に流れていってしまいますよね」

お茶の間のテレビを見て育ったジャルジャルにとって、テレビは何よりも輝いている場所だ。自由さと、お客さんとの一体感を味わえる舞台を大切にしつつ、「食卓を囲みながら見てほしいし、見られる存在になりたいので、お茶の間にはこだわっていたい」と福徳は話す。

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福徳「僕らが発信したことが、切り取られていろんなところに波及して。誰かを傷つけてしまう機会は今後増えていくかもしれない。ただその辺は、正直言うと、もう思い切るしかない。

これを気にしだしたら、ほんまにネタ出来なくなるんで。さっきも言ったように、どのネタも基本的にやっぱり人を傷つけてる。だから、『それはしゃあない』という覚悟をやっぱり持たないといけないんです」

人種差別はアメリカだけでなく、日本を含めた世界のどこでも考えないといけない問題だ。「しゃあない」という言葉は飄々としていて、どこか冷たい。けれど、それがお茶の間で自分たちらしい笑いを見せ続けると決めたジャルジャル2人の気概なのだろう。


<コント「友達のこと信用してない奴」。公式YouTubeチャンネル【JARU JARU TOWER】より>

2018年は、ジャルジャルにとって勝負の年だ。

レギュラー番組のめちゃイケが終わり、M-1はラストイヤーを迎える。3月には公式サイトをリニューアルし、ネタのタネを含む8000本の持ちネタすべてを1日1本ずつ公開する「JARU JARU TOWER」を開設した。

福徳「今がすごく大事な時期やなと思いますね。けど、わくわくはしますけどね。たまにわくわくしすぎて、『あっドラゴンボールの孫悟空ってこういう気持ちやったんや』って思います。『オラ、わくわくすっぞ』って戦う前に言ってたから、これかと思って」

「誰も傷つけない笑い」でアンチをはね返しましたねと言うと、「なんやったら、今度はバリバリ人を傷つけたろって思ってるくらいです」と、福徳は笑う。

「すべてのネタは誰かを傷つけている」と、表現者としての責任感がなければ到底口には出来そうにないことを言いながら、これくらいの毒を吐く。優しいのか、そうじゃないのか、いまいちわからない。型にはまらない、斬新なネタを作り続けるジャルジャルは、やっぱりこんな人たちなのだ。

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