2018年04月19日 17時40分 JST | 更新 2018年04月21日 22時45分 JST

#嫌われないメディア について徹底討論。「約束と課題」を共有すれば、媒体のブランド価値は上がる。

媒体社、広告会社、読者…それぞれの立場から、これからのメディアについて語った。

嫌われないメディアには、読者を裏切らない"信頼性"がある―――。

メディアのブランド価値と新しい指標について考え、新たに「嫌われない広告」を定義するイベント「#嫌われないメディア が持つ "ブランド価値" のつくりかたを徹底討論!」が、4月11日、東京・六本木で開催された。

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写真右より:popIn株式会社金谷氏、西舘氏、高橋氏、コンデナスト・ジャパン新井氏、株式会社電通小西氏、株式会社メディアジーン芹澤氏、ハフポスト日本版崎川

イベントには、メディア、広告主、代理店関係者など約150人が参加。

メディアの価値計測ツールを提供するpopIn株式会社の金谷氏、『VOGUE』『GQ』などを運営するコンデナスト・ジャパンの新井氏、『GIZMODO JAPAN』『DIGIDAY』などを運営する株式会社メディアジーンの芹澤氏、株式会社電通ソリューション開発室の小西氏が登壇。

メディアのブランド価値の定義から、マネタイズのポイント、嫌われない広告の作り方まで、それぞれの立場で語り合った。

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このメディアであれば『広告記事でも読みたい』と思わせる。それが #嫌われないメディア(popIn株式会社、金谷氏)

popInでは、読者がどのようにメディアを考えているか、202人を対象に調査しました。

昨今ウェブメディアが増えてきていることもあり、そのなかで「自分がいいと思った記事にしか目を止めない」と答えた人が73%いました。

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これらの結果を踏まえると、「このメディアであれば、広告記事であっても読みたい」と思わせるのが「嫌われないメディア」であり、それほど読者と深いエンゲージメントが担保されていることが「ブランド価値が高い状態である」と言えるのではないでしょうか。

popInは、今年で10年目。メディアの価値向上をずっと考えてきました。最近改めて感じているのは、メディアの成長プロセスとブランド構築への二極化が起こっているということです。

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popIn株式会社 執行役員 ブランド担当 金谷徹(かなや・てつ)氏

PVが安定してきたとき、メディアの"ブランド価値"が問われる

メディアにはフェーズがあります。立ち上げ期には、まずはPV獲得を目的とします。PVが上昇すると共に売上も連動し上がっていきます。安定期を迎えやがてPVが下がれば、通常は売上も減ります。ですが、いくつかのメディアでは、PVが下がっても売上は変わらない、もしくは上がる場合があります。この違いが「ブランド価値があるか・ないか」なのだと考えます。

メディアの安定性を維持するため、PVだけではない指標でいかにブランド価値を向上させるか。そのための手法として、popInでは「READ(読了率)」という読了値を計測するツールと、「レコメンドウィジェット」を提供しています。

メディアの方にとって本質的に大切なのは、独自の視点で書いた記事をしっかり読んでもらうことなのでは。だからこそ、どれだけ記事を読んでもらえたかを計測する「読了率」という指標が必要なのではないかと考えます。

また最近では、読了率をタイアップ(広告)記事の効果指標に使えないかと考えています。popInの読了率は記事の読まれ具合によって、「熟読層」「閲覧層」「流し見層」と分類し、デバイス別、流入元別でも測定しております。

熟読層は、流し見層に比べて広告主の商品を「よりよく理解している」という調査結果も出ており、理解促進における新たな指標のひとつとして有効なのではと考えます。

広告は、"マッチング"より"ディスカバリー"。機械的に当てられることで読者自らの"発見"の機会を失っているのでは(コンデナスト・ジャパン、新井氏)

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合同会社コンデナスト・ジャパン ビジネス担当副社長 新井 良(あらい・りょう)氏

嫌われない広告を考えた時、読者の興味にあっているということは大前提として、そのほかにも「発見がある」のが大切ではないでしょうか。昨今は機械的にマッチングさせていくことが多く、こうしたことで読者が意外な発見をする機会を失っているのではとも思います。

あとは、「Kindness(カインドネス)」。邪魔をしないで親切な知らせ方をしてくれることも当たり前のように大切です。例えば、スマホ上の全画面広告は広告主には非常に人気ですが、コンデナスト・ジャパンでは1月に終了しました。グーグルも全画面広告のサイトランクを下げるというアナウンスをしていることもあり、プラットフォーム側も「Kindness」を意識し、それを守れないパブリッシャーにはペナルティを加えるくらいにまでなっています。

また、エンターテイメント性があり、"情報以上の楽しさ"があるということも、嫌われない広告の重要な要素です。

紙媒体で積み重ねた知見と経験を、Webでも展開する。"垣根のない"コンテンツづくり

紙メディアとWebメディアの違いや、双方におけるブランド価値の統一性については、よく社内で話しているテーマでもあります。

紙の優れている点として、まず、読者をリードするようなインサイトを持った切り口を提示ができることが挙げられます。あとは、紙の編集者はスタイリストやカメラマンなど、業界関係者とのネットワークが非常に強い。そして、インパクトのあるヴィジュアルを作るセンスも、紙の編集は優れているのではないかと思います。こうした良さをいかにWebに導入するか、日々、試行錯誤しています。

最近では、デジタルの編集も紙の編集も垣根がなくなりつつあります。紙の編集がデジタルを担当することもあり、紙の良さをデジタルでも活かせるように取り組んでいます。

読者に対して共感を超えた"場の提供"をすることも、これからのメディアの役割なのでは

また、ブランド価値を育て、広めるために必要なこととして、まずはコンテンツの力が大切であると日頃から言っています。SNSやサーチからの流入など、「広げる」ためのトラフィックへの対策も重要ですが、まずはコンテンツが優れていなければ成立しない。そのコンテンツも、質か量かという話がよく出ます。質が大事なのは大前提ですが、SNSなど流れの速いトラフィックに対応し、読者の接点の機会を増やすためにも、ある程度の量も重要となってきています。

そうしてファンを増やした次に重要なことは、彼らを「裏切らない」ということ。

そのためには「ここに行けば、これがわかる」という信頼が必要です。例えば『VOGUE』であれば「『VOGUE』を見れば、ファッションのトレンドのことがわかる」という信頼がきちんと成立している状態であることが大切。メディアが増え、情報が氾濫している環境下では、読者の期待を裏切らないということが重要であると思っています。

『VOGUE』であれば、ファッションについて興味関心の高い人たちが見ています。その人々が繋がる場、いわばコミュニティを創出、提供することもメディアの新たな役割かもしれません。

自分が顔すら知らない、友達ではない人とでも、ファッション好きという文脈で繋がれる。そこに、共感を通り越した新たなメディア価値が存在するのかもしれません。

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マネタイズの面で言うと、まず一つだけ言えるのは「バナーは死んできている」ということです。アメリカやヨーロッパを見ていても、バナーの売上が非常に厳しくなっています。

バナーの売上は粗利率が高いので、メディアにとっては厳しい部分があります。そこを補うためには、多収益モデルを作るしかない。何をすべきかは各メディアによって違うと思いますが、コンデナストの場合は「制作に長けている」「クオリティの高いコンテンツを作ってくれそう」という印象を持っていただいているので、そこをマネタイズに繋げるべく、4年前に受託制作部門を立ち上げました。現在も非常に力を入れて取り組んでいます。

「メディアの役割は"課題解決"。広告はメディアと読者に共通する課題を解決するべき(株式会社メディアジーン、芹澤氏)」

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株式会社メディアジーン 執行役員CSO 芹澤 樹(せりざわ・たつき)氏

私自身は現在、新規事業を作る担当をしています。重要視しているのは、新規事業立ち上げの際には"課題解決"を動機付けとすることです。

誰かの課題解決をすることで、新しいビジネスがうまれる。解決したい課題と、背景にある市場規模、手法があれば、新規事業は作れます。この中で「手法」に分類されるのが、メディアです。

パブリッシャーはもともと、課題解決をしていました。例えば新聞であれば、昨日起きた事件が次の日読者の手元に届き、読者がいち早く情報を知ること、それが課題解決でした。時代が流れ、今はその課題を、違うプラットフォームが解決しています。何か事件が起きたとき、ユーザーがツイッターに5秒の動画をあげるだけで、今起きた情報をユーザーは手に入れることができる。これによりパブリッシャーが今まで果たしてきた"課題"を"解決"してしまっています。

コンテンツの指標価値は「どれだけ課題を解決したか」「共感したか」が重要になってくる

では、手法としての"メディア"が何をしなければならないかというと、そのメディアが何の課題を解決しているか、何を大義として持っているか、ということを明確化することです。

メディアはユーザーにコンテンツを提供することで、メディアが生まれた"理由=課題"を解決します。そして、それがコンテンツ価値になります。

すると、コンテンツの指標価値はPV/UUではなくて「どれだけ課題を解決したか」「共感したか」が重要になってくる。その上で、嫌われないメディアとは何なのかと考えると、メディアとユーザーの間にある課題解決に対する「約束事」がブレないメディアとなります。

その約束を理解した広告主が、メディアと読者の共通課題に対して広告を提供すれば、それは、嫌われない広告になります。

私が思う嫌われない広告はLINEのスタンプです。ユーザーと広告とメディア(LINE)が、コミュニケーションツールのスタンプを介して同じ約束を守っています。ユーザーに広告とすら思われていないのは、素晴らしいことです。

メディアの方々は一度、自問自答してみてください。そのメディアが何のために生まれたのか、何を解決しているのか。その課題が明確になれば、それがコンテンツの指標価値になり、そこに沿った広告を作ることが大切になってくると思います。

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コミュニティ形成と課題解決を同時に行う『DIGIDAY』の場合

弊社が発行している『DIGIDAY』が中心に置いている課題とは「デジタルマーケティング地位の向上」です。マスマーケティングに比べて、デジタルのマーケティングは単価が低い現状などもあり、個人的にはまだ地位が低いのではないかと思っています。『DIGIDAY』はブランド(広告主)、パブリッシャー(媒体社)、エージェンシー(広告会社)、プラットフォーマーに対してコンテンツを提供し「こうしたら業界全体が良くなるのではないか」ということを、テキスト、SNS、イベントなど、あらゆる手法で伝えています。

マネタイズについては、共通課題を持ったユーザーが集まることでコミュニティとなり、それをサブスクリプション(購読モデル)で課金する事で収益化を行なっています。それ以外にも、パブリッシャーが集まって共通課題を再認識するためのイベントや、ブランドとパブリッシャーをつないで業界の発展について考えるイベントを開催し、マネタイズにつなげています。

今後更にコミュニティが活性化したら、今度は「ブランドサイドに行ってデジタルマーケティングを正したい」とか「パブリッシャーサイドに行って正しい情報を伝えたい」などのニーズが出るかもしれない。そうなれば、コミュニティ活性の先には、専門性の高い転職斡旋ビジネスなどの可能性もあるのではないかと考えています。

「メディアは、プラットフォームにできない独自価値でブランド力を高めていくべき」株式会社 電通 小西氏

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株式会社電通 ソリューション開発室 ソリューション・ディレクター 小西圭介(こにし・けいすけ)氏

最近はマス広告も含め、ブランドサイドが、いかに「嫌われない」かということを意識しています。せっかくお金を出したのに「炎上」のようなマイナスの効果が出てしまうこともあり、制作サイドも苦労しています。

炎上の原因として考えられるのは様々あります。世代による価値観の分断化であったり、社会的な寛容性が低下していたりする点もありますが、メディアがPVを意識するあまり、過剰な表現をとったり、注目喚起を重視してしまった結果であったりもします。では、炎上を回避し、より前向きな姿勢で広告メディアのブランド価値を高めるにはどうすればいいのか。

メディアが氾濫し淘汰されている中で、最近は、より「ブランド力」が必要とされてきています。同時に、生活者自身も情報の発信源となっていています。かつて「シェア・オブ・ボイス」とは広告の露出のシェアを指していましたが、今はユーザーの声やコメントなどが、ブランドの「シェア・オブ・ボイス」となっています。なので、読者にもっと参加してもらい、一緒に作っていくような場所を作らねばなりません。

「情報の信頼性」や「オーディエンスの質」には、PVで計算できない価値がある

また、デジタルによってコンテンツが流動化したり、分散化したり、生活者との接点も変化してきています。電車の中で新聞や雑誌を読んでいる人はほとんどいなくなりました。情報接触の在り方が大きく変化してきているなかで、媒体枠や手段を超えていく必要性もあります。

KEISUKE KONISHI

KEISUKE KONISHI

メディアのブランド価値を高めるためには、「情報伝達や媒介力」、「コンテンツの開発力や提案力、発信力」など、メディア本来の特性を活かすことも重要です。

そして最近特に重要視されているのは、「オーディエンス(コミュニティ)の量と質」です。単純に記事を見て終わるだけではなく、実際に共感して動いてくれる人、エンゲージメントの高いオーディエンスが、大きな価値となります。

単に認知をとるだけでなく、広告主が望む特定のターゲットにリーチできるメディアは、ブランドのターゲットへの関連性(Relevancy)を高められるという観点で評価されるべきです。さらに、メディアのブランド自体が企業の広告やコンテンツの知覚品質を高めたり、情報の信頼性を高めたりすることが実際にあります。そこには、単純にPVでは計算できない価値があるわけです。

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今日、グローバルなデジタル広告の成長の半分を Facebookとグーグルが獲得しているように、メディアは読者のボリュームやターゲティングの精度ではプラットフォームにはなかなか勝てないというのが実情かと思います。そこでメディアはこれから、読者へのRelevance(「自分に合う」「適合性」)を作っていく必要があります。オーディエンスの大きさだけでなく、いろんな価値観にアプローチしていく力を持ち、読者の価値観や嗜好と、広告主との"適合"関係を高めるための役割が必要とされます。また、昨今ブランドセーフティや広告詐欺など改めてプラットフォームをめぐる課題が顕在化する中、改めてメディアの持つ「信頼性」をどう価値にしていくかが問われています。

では、メディアのブランド価値を高めるにはどうすれば良いのか。ここではいくつかヒントを述べたいと思います。

①まず、「メディアの持つ社会性を活かして、企業ブランドメッセージを"社会化"すること」。これは信頼性を持つメディアならではの価値です。

②また、「従来のメディアの枠を超え、顧客の時間の中にブランドの居場所をつくること」がより重要になってくるでしょう。

③そして、「企業ブランドとの継続的な取り組みで、ストックを形成すること」。単発の広告発想ではなく、ブランドは持続的なコミュニケーションによって蓄積されていきます。

④そして、「コミュニティの場と絆をつくり、影響力を可視化すること」。企業ブランドとインフルエンサーが参加・共有できるリアルな場づくりは、メディアのブランド価値を高める上でますます重要になってくるでしょう。

⑤最後に、メディアが情報ではなく、「行動のプラットフォーム」になることです。社会課題の解決など、メディアならではのリーダーシップで、企業ブランドが社会価値の創造に参加できる機会を提供することは、大きな機会があるはずです。

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イベント後半では、登壇者らによるパネルディスカッションが開かれた。

そこでは、メディアのブランドを作るために必要な"人材"について、興味深い意見が出た。

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新井氏によれば「自分の記事を読んでもらうために分析する人」が、メディアのブランド価値向上に寄与する可能性が高いという。

「自分の記事を読んでもらいたいという意欲のある人は、どう読まれているかを分析し、それを参考により良い記事を書こうとします。さらには、SNSなどを利用して、読者にどうエンゲージすべきかを考えます。日本人はシャイな人が多いので難しい部分もあるのですが、昨今はそういう人材を育てようと思っています」

同じくpopIn西舘(にしだて)氏は「編集者にこそ、計測値を見てもらいたい」と述べた。

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popIn株式会社 執行役員 メディア担当 西舘 亜希子 (にしだて・あきこ)氏

「popInは、メディアの価値向上/証明を一番に考えたいということから出発しているので、コンテンツがいかにしっかり読まれたかという指標を大事にしています。そういう意味では、営業の方だけでなく、編集の方にもデータを見てもらい、"読まれている記事"を知っていただき、書くためのモチベーションにつなげてもらえればと思います」

イベント総評として、ハフポスト日本版顧問の平井敬がコメント。

「テクノロジー依存となったインターネット広告の世界において、プライバシーの侵害や、情報悪用への警鐘が鳴らされています。同時に、改めて我々メディア側の信頼性も問われています。

会員情報の不正流出問題に揺れるFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが公聴会に呼ばれ、時代の転換点になったこの日に、こうしたイベントが開催されたのは意義あることでした。

読者からの信頼を得て、数値化できないブランド価値をどう作り上げていくか。ハフポストではこれからも、メディアと広告を巡る今後の課題に取り組んでいきたいと思います」

最後に、本イベントへ参加された方々へpopIn高橋副社長から謝辞が述べられた。

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popIn株式会社 副社長 高橋大介(たかはし・だいすけ)氏

「本日ご登壇いただいた方々は、ご来場者様も含め、3年後、5年後のメディア広告の未来を一緒に作っていくメンバーなのだと実感しております。

popInは今年の7月で10周年を迎えます。創業当初からメディア価値向上に貢献すべく邁進してまいりました。今後はアジア各地の支社とも連携しながら、業界全体をアジアレベルでボーダーレスに押し上げていきたいと思います」

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ハフポスト日本版はこれからも、 #嫌われない広告 #嫌われないメディア について向き合い、議論し、新たなメディアのブランド価値をつくるためのアイディアを提案して参ります。