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2018年04月25日 16時04分 JST | 更新 2018年04月25日 16時05分 JST

「ロボネコヤマト」って何? 無人で荷物をどこにでもお届けへ

自動運転車両で実証実験

Engadget 日本版

 神奈川県藤沢市の辻堂や鵠沼の一部の地区で昨年2017年4月から行なわれていました、ディー・エヌ・エーとヤマト運輸の共同プロジェクト「ロボネコヤマト」。ドライバーが荷物の受け取りに関与せず自動化想定オペレーションのサービスを1年かけて検証してきましたが、課題はあるものの満足の行く結果に終わり、最後に自動運転車両によるロボネコヤマトの実証実験を行いました。

 2018年3月31日までの約1年間検証してきたロボネコヤマトは、専任ドライバーによる有人運転を行ってきましたが、ドライバーは荷物の受け渡しに関与せず、利用者自身が到着した車両でスマホを使った認証後、ボックスから取り出すというサービスを展開してきました。サービスには、宅急便の荷物を受け取る「ロボネコデリバリー」と、地域の商店の商品をまとめて受け取る「ロボネコストア」の2つがありました。それぞれ10分単位で受け取り時間を指定し、注文から最短で40分でお届け。自宅に限らず好きな場所で受け取りの指示ができました。

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▲有人による運転で配送したロボネコヤマトの車両

宅配の問題点は不在率の高さです。ロボネコヤマトは、狭い地域限定のサービスでしたが、配送件数は、1日およそ20から30件、最高でも50件ほど。数は少ないものの、不在率は0.53%だったそうで、通常の20%前後に比べると、かなりの効果が発揮されています。

利用者のアンケートによると、今後も利用したい理由として(複数回答あり)、「10分単位で好きな時間に受け取れる点」の評価がもっとも高く、98.4%にものぼりました。従来の時間指定では、数時間の幅があるため、いつ届くのかという「待つストレス」がありましたが、これを解消してくれる結果となっています。

また、面白いのが誰とも合わずに受け取れるという点と答えたのが11.3%もいたこと。道路で受け取るため自宅を知られず、顔も見られないという安心感もあるのと同時に、最近は集合住宅に住んでいても隣近所との付き合いがないといった、人との接触を避ける傾向の高い現代社会ならではの結果と言えるかもしれません。

荷物が到着する3分前には、スマホへ通知が届き、受け取り場所には10分間は停まっているシステム。それでも取りに来ない場合は、運転手が電話で連絡していたそうです。通常の宅急便とは違い、玄関先へ届くのではなく、クルマまで取りに行かなければならない点を理解していない利用者もいたそうで、0.58%の不在率のなかにはそういう人も含まれているそうです。

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▲ロボネコヤマトの車内。ロッカーが並び、スマホで認証したボックスだけが開くシステム

セールスドライバーは、重い荷物を運ぶだけでなく、コミュニケーション能力も必要です。もちろん、大きな車をマニュアル車で運転する技術力も必要で、配送ルートもこれまでの経験を踏まえてドライバーが考えなければなりませんでした。

その点、ロボネコヤマトの場合は、基本的に運転するだけ。使用したクルマも日産の電気自動車「e-NV200」とそれほど大きくもなく、ルートはAIで考えられた最適なルートが指示されるため、通常は男性ドライバーのみなのですが、ロボネコヤマトでは女性ドライバーも半数いたとのことです。このように限られた人材から裾野が広がり、今後予想れされる人手不足の解消にもつながるとディー・エヌ・エーもヤマト運輸も考えているようです。

 そして、今回は自動運転車両の実験を行いました。自動運転車が導入されれば、運転する人も必要なくなるため、そのぶんの人手をほかに回せます。また、過疎地など働く人がいない地域においては、有効な手段でしょう。

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▲自動運転車両による配送が実現すれば、より人手不足の解消にもつながる

今回の実証実験の目的は、実際に自動運転を導入した場合の課題は、走らせてみないとわからないため行ったもの。公道6kmを「ハンズオフ」(運転席に人は座っているがハンドルに手をかけていない状態)で走行と、封鎖地帯で「ドライバーレス」(運転席に誰も座っていない状態)での走行、携帯電話網を利用した信号機の情報をクルマが取得するという3つの実験が含まれています。そのうち実際に報道陣に公開されたのは、封鎖地帯でのドライバーレス走行でした。

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▲封鎖地帯によるドライバーレスでの配送実験の模様

ハンズオフの状態では、公道の制限速度で走るとのことですが、ドライバーレスの場合は、5~10km/hとかなり低速。自動運転に利用されたトヨタの「エスティマハイブリッド」には、天井に360度回転しながらレーザー照射し、周囲の物体を検出する「ライダー(LIDAR)」が搭載され、カメラによる画像処理と詳細な地図データを基に走行します。

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▲今回、日本信号の協力のもと、信号制御機にリアルタイムに信号情報を4GLTE経由で配信できる装置を取り付け、車両側で信号の状態を認識して、進むか停止するか判断する実験も行っている。通常はカメラによる画像認識だが、これが実現したらより正確に信号を通過できることになる

受け取り場所へ到着すると、自動的に扉が開き、従来のロボネコヤマトと同様スマホを使って認証後、ボックスの扉が空いて荷物を受け取ります。受け渡しが終了すると扉を締め、再び走行していきます。今回は、ドライバーレスでも万が一のために助手席には人が乗っていましたが、将来的には無人での運転を目指しています。

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▲今回の自動運転車に設置されたボックスは簡易版のため、これまでのサービスで使っていたものとは異なる

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▲筆者は公道を走る自動運転車をはじめて見ましたが、思ったよりもゴツくなく、ライダーがなければ普通の車と違和感があまりありませんでした。

 ディー・エヌ・エーとヤマト運輸は、今回の自動運転車両による実証実験も含めて検証し、来月末には今後の展開を決めるという。1年間やってきた中での課題として、ディー・エヌ・エーのオートモーティブ事業部 ロボットロジスティクスグループリーダー 田中慎也氏は、

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▲ディー・エヌ・エー 田中慎也氏

「10分間待機していなければならないときに、ほかのクルマとの交通事情で、停まっていられる場所とそうでない場所があるため、10分間待つというのは結構難しいのではと思いました。また、今回の場合はほとんどお客さまが待っていたため、10分間待つことはなかったのですが、逆に余った時間をどうすればいいのか。リアルタイムにムダな時間をなくしていくことがやりきれていないので、そういった時間を無くしていくことで、より効率よく配送することが可能になると思っています。これは有人でも無人でも変わらないと思うので、停まる場所の指示も含めて今後解決していかなければならないと思います」

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▲ヤマト運輸 畠山和生氏

ヤマト運輸の設備管理部長 畠山和生氏は「かなりのニーズがあることがわかったので、ほかの地域にも取り入れていきたいのですが、安全性については、かなり苦労しました。指定する道路や通る道路をまる1年かけてずっとアップデートしていきましたが、この点はほかの地域に行っても同様に苦労すると感じました。ただドライバーの負担は間違いなく減りますので、どういうふうに応用していくかは、今回のオペレーションがいちばんだとは思っていないので、いいところは活かしつつ、お客さまとなじまない部分は改善して、模索していければと思います」

 今回のロボネコヤマトのサービスについては、かなりの手応えを感じているようなので、今後も地域を限定してさまざまな実験を続けていきそうな気がします。クルマに搭載されているボックスのサイズの関係で、届けられる荷物は限られたり、クルマのサイズから、狭い路地だとかなり難しいなど、すべてが万能なサービスではありませんが、10分単位で届ける時間を指定できるのは非常にありがたいですね。

藤沢市は、今回発表会を行なったFujisawa SSTのように住宅街として区画整理された地域が多く、そういった場所だと道幅が狭いこともなく、クルマ通りも多くないのでこういう自動運転車両による配送にはピッタリでしょう。有人と無人を使い分けて、より便利なサービスを展開してほしいですね。

(2018年4月25日Engadget日本版「無人で荷物をどこにでもお届け。自動運転車両による「ロボネコヤマト」の配送実証実験レポ」より転載)

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