いまはヨーロッパに渡っている旧日本軍の「九五式軽戦車」を、日本に里帰りさせる計画が進んでいる。日本とイギリスのマニアたちが協力して修理し、再び日本で展示できる日を待っている。
里帰り活動に取り組んでいるのは、静岡県御殿場市のNPO法人防衛技術博物館を創る会。日本では、個人で戦車を輸入することができないため、博物館を建てて戦車を展示する予定だ。
会の代表・小林雅彦さん(47)は、戦車の購入資金として1億円を目標に寄付を募っている。
九五式軽戦車ってなに?
九五式軽戦車は、かつて太平洋戦争で旧日本軍が使っていたもの。トラックと同じくらいの時速40㎞程度で走ることができ、旧日本軍の主力戦車として量産されていた。
最近では、戦車を使用した武道「戦車道」が、華道や茶道と並んで乙女の嗜みであるとされている世界を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー」劇場版でも登場している。
今回買取を予定している戦車は、南洋のミクロネシア連邦ポンペイ島へ送られ、終戦を迎えてそのまま放置されていたもの。
だが、1981年に京都嵐山美術館の館長が私費で日本に輸送。美術館で展示し、91年の閉館とともに和歌山県白浜町の私設博物館に移ったが、こちらも2002年に閉鎖された。
戦車はイギリスへ。交渉するも「売る気はない」と断られ
その際に、戦車マニアのイギリス人男性が買取に名乗りをあげ、2004年に渡欧した。タッチの差で戦車を手に入れそびれた小林さんは、2011年に会を立ち上げ、この所有者に連絡を取ったものの、当初は「売る気はない」と断られ続けていた。
所有者は買い取った九五式軽戦車を、走行可能な状態にするために大金を投じ、イギリスにある世界有数の戦車博物館「ボービントン戦車博物館」で毎年6月に開催される「タンクフェスタ」で、九五式軽戦車のデモ走行を夢見ていたのだ。
そんななか、防衛技術博物館を創る会の賛助会員だった東京都の男性が、所有者と知り合いになり、里帰りの橋渡しをした。だが、すぐに譲るというわけではなく、戦車を走れる状態に直し、タンクフェスタでお披露目するという目標をかなえられてから、という条件が付いた。
あとは「燃料ポンプ」のみ。どうしても手に入らない......
大金を投じて修理をしてきたものの、直せていないのがディーゼルエンジンの部品である「燃料噴射ポンプ」。
当時のものがあればパーツとして復元したり修理したりして使えるが、世界中を探しても見つからない。
戦争時に兵士が記念にパーツを持ち帰ることもあるので、どこかで保存されているのではと情報を集めている。
小林さんらはパーツを手に入れて、来年6月のタンクフェスタでの走行を目指している。
小林さんは「日本は技術立国とか、モノづくり大国とか言われているのに、すぐに新しいものが出てきて古い機械を展示したり後世に残したりということがほとんどない」と語っていた。
この戦車を買い取るための1億円は、一口10万円で1000口を募集している。購入ができなかった場合などに返金できる制度も設けている。燃料ポンプの情報提供と合わせ、詳細はNPO法人防衛技術博物館を創る会事務局( 電話: 0550-82-2854 / メール: m.koba@k-m-d.co.jp )へ。