2018年10月05日 11時00分 JST | 更新 2018年10月05日 11時00分 JST

なぜムンクは「叫び」を描いたのか?

コラボ広告で知った「静寂」という名の「贅沢」

Edvard Munch
エドヴァルド・ムンク作 テンペラ・油彩画の「叫び」(1910年?)

数ある名画の中でも、もっとも有名な作品のひとつがエドヴァルド・ムンクの「叫び」だ。日本でも知らない人はほとんどいないほど人気の高い「叫び」だが、この秋、ムンクの故郷であるノルウェーのオスロ市立ムンク美術館に所蔵されているテンペラ・油彩画の「叫び」が、待望の初来日となる。

東京・上野で開催される「ムンク展―共鳴する魂の叫び」(2018年10月27日~2019年1月20日)では、「叫び」をはじめとする約60点の油彩画に、版画などを加えた約100点の作品が展示される。

この人物は叫んでいない

人が叫んでいるように見えるこの絵だが、実は、叫んでいるのではなく、「自然を貫く果てしない叫び」に耳を塞いでいるのだという。

「友人ふたりと道を歩いていた。日が沈んだ。空がにわかに血の色に染まる――そして悲しみの息吹を感じた。僕は立ち止まった。塀にもたれた。なにをするのも億劫。フィヨルドの上にかかる雲から血が滴る。友人は歩き続けたが、僕は胸の傷口が開いたまま、震えながら立ち尽くした。凄まじく大きな叫び声が大地を貫くのを聴いた」

(2007年・みすず書房発行「ムンク伝」より)

なぜ、ムンクはこのような絵を描いたのだろう。

ムンクが「叫び」を描いた背景

「叫び」の第一作目は、1893年、ムンクが30歳のときに制作された。ムンクは、幼少期に母親を亡くした。体が弱く病気がちだったムンクは、自身の子ども時代を「まくらの時代」と呼び、病人の目にうつる狭い世界を絵に描いた。そして、14歳のときに姉を亡くした。

ムンクの代表作である「叫び」は、人間の不安が極限に達した一瞬を描いた作品である。

若くして病気や死に直面してきたムンクは、自分の中にある「不安」な感情をテーマに作品を残してきた。

なぜなら、不安に駆られて眠れないとき、その情景を描き残せば、「それはもう済んだことである」と感じられぐっすり眠ることができたからだ。彼にとって、絵を描くことこそが、明日を向いて生きるための大切な行為だったのかもしれない。

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エドヴァルド・ムンク

ムンクは、人間性や死に対して多大な関心を持っていた芸術家で、特に「叫び」を書いた時期は、彼の人生の中でも精神が不安定な時期だったと言われている。

ポップカルチャーへの影響

ムンクの人生がこんなに壮絶だったなんて知りもせず、子どもの頃によくこの絵の真似をしたことを思い出す。

映画「ホーム・アローン」シリーズでマコーレー・カルキンが叫ぶお馴染みのシーンも、「ムンク」の叫びをベースとしている。2016年には、ロックバンド「ピンク・フロイド」の楽曲とコラボしたアニメーション動画も話題になった。ムンクの「叫び」が、ポップカルチャーに影響を与えた例を挙げればきりがない。

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私たちが普段使っているこちらのemoji(絵文字)も、ムンクの「叫び」にインスパイアされたもののひとつだ。100年前に生まれた芸術作品が、「作品」の域を越え、私たちの日常生活にコミュニケーション手段である「文字」として親しまれている。

ムンクの「叫び」がソニーのノイキャンヘッドホンと異色のコラボ

そんな中、10月27日から開催されるムンク展を盛り上げようと、ソニーがスポンサードしたこんな広告が公開された。

ムンクの「叫び」とコラボしたこの広告には、業界最高クラス*のノイズキャンセリング性能を備えたヘッドホン「WH-1000XM3」を装着して音楽に浸っている人物が描かれている。「叫び」の人物とは対照的に、穏やかで優しい表情が印象的だ。

実は、この広告に登場する絵は、原作を加工処理したものではない。今回のムンク展協賛企画のために、ノルウェーのムンク美術館の承諾を得て、コラボレーション作品「浸り」として、新たに描き起こされた油彩画だ。この「浸り」は、全国ソニーストアで10月19日から全国5拠点のソニーストアを巡回することが予定されている。ムンクの「叫び」との細部の違いを楽しんでみるのもいいかもしれない。

静寂は贅沢なひととき。最新のノイキャンを体験してみた

「私も穏やかな表情で音楽に浸れるひとときを体験してみたい」

本記事を書きながら、そう思った私は、今回、ソニーマーケティング協力のもと、発売前(*記事作成時点)のノイキャン・ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM3」を使わせてもらった。

結論から言ってしまえば、自分がいかにノイジーな環境の中で、日々を過ごしているのかに、初めて気づかされた。

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ハフポストのオフィスは、日々のニュースの動きをネットやテレビでチェックしたり、トレンド情報をスタッフ間で交換したりと、いつも賑やかな空間だ。私だけかもしれないが、そんな楽しいオフィスでは、気が散って仕方がない。

締め切りが近いから、今日こそ集中して原稿を仕上げたい......。そんなときは、カフェでリモートワークをすることもある。この日は、「WH-1000XM3」を装着してお気に入りのジャズを再生してみた。スイングするベース音と同時に、私のスイッチもオンになる。カフェが自分だけの空間になった瞬間だ。

いつものカフェといつもの作業用BGM。大げさかもしれないが、不思議といつもの5倍くらい集中して仕事ができたような気がする。

電車での移動中は、音楽を聴ける貴重な時間だ。いつもなら、スマホを見ながら音楽を聴くことも多いが、「WH-1000XM3」を使うと、電車内の騒音がフッと消え、まるでコンサートホールで生演奏を聴いているかのような没入感を味わえる。思わず、手にしていたスマホをカバンにしまい、音楽に浸ってしまった。

電車の中で、このシリーズのヘッドホンを何度か見かけたことがある。こんなに没入感が味わえることを、もう少し早く知っていれば......という気持ちになった。

家に帰って、食事や片付けを済ませたら23時。ようやく一息ついた。

まだ片づけたい仕事は残っているが、もうパソコンを開く気分にはなれない。普段家の中ではヘッドホンを使わない私だが、あえて「WH-1000XM3」をつけて、ノイズキャンセリング機能をオンにしてみた。

すると、これまで経験したことがないような静寂に包まれた。そのまま目を閉じてしばらく好きな音楽に浸る。まるで今日一日の疲れから解放されていくような、そんな感覚を味わった。

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外を走る車やバイクの音、エアコンや換気扇の音、誰かがマンションの扉を閉める音――静かだと感じていた場面でも、実は、私たちは知らず知らずのうちに騒音の中で暮らしている。普段私たちの耳に入る音の多くは、生活に利便性を求める私たち自身が生み出しているものだからこそ、消すことはできない。

そんな日々の暮らしの中で味わえる「静寂」は、実に「贅沢」な時間なのだと気づいた。

エドヴァルド・ムンクが、「叫び」に耳を塞ぐ人物を描いて100年。騒音と共に慌ただしく生きる私たちこそ、時には耳を塞ぎ、静寂の中の音楽に浸れる時間が必要なのかもしれない。

今回私が体験したノイキャン・ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM3」なら、きっとそんな時間を叶えてくれるだろう。

*ヘッドバンド型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2018年8月30日時点、ソニー調べ、電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る

文献:スー・プリドー 木下哲夫訳(2007年)『ムンク伝』みすず書房