九州豪雨水害被災者支援:被災された方々の声を拾い続ける

避難所の高齢の女性「少しでも笑えることがあれば笑っていたい。でもまだ行方のわからない人がいる。笑っていても心の奥ではこういう思いがある」

7月5日に九州北部で発生した豪雨は、福岡、大分両県に甚大な被害をもたらしました。AAR Japan[難民を助ける会]は6日より被害状況の調査を開始、翌7日に緊急支援チーム3名を現地に派遣し、支援を開始しました。

これまでの国内災害時の緊急支援の経験から被災直後に必要とされる物資(水やスポーツドリンク、おむつや除菌ティッシュといった衛生用品など)を6日に佐賀事務所で調達し、支援チームが到着後直ちに特に被害の大きかった朝倉市内の避難所に配付。同時に、避難所で必要とされているものを聞き取り、下着や体拭き、歯ブラシなどを新たにお届けしました。

支援物資を受け取られた避難所の方々とAARの緊急支援チーム(右端から後列3人にかけて、三木将、大室和也、高木卓美、2017年7月7日)

取り残される人を出さないように行政・他団体と連携

災害時には高齢者や障がい者のもとに必要な支援が届きにくい傾向があります。AARは各避難所の状況を随時把握しつづけるとともに、朝倉市役所と協力して、被災地で避難所に行くことができず、支援から取り残されている人がいないか、また朝倉市近郊の高齢者・障がい者施設を訪問し、支援を受けられずにいる被災者がいないかを確認しました。

毎晩朝倉市役所の職員やほかの支援団体とで行う会議では、各避難所の課題について報告・共有し、各々ができる支援を調整しています。

「人生でこんな経験は初めてで、とてもショック」と話す女性。長引く避難生活の改善が必要とされています(2017年7月15日)

長引く避難生活に備え、福祉スペースを設置

避難所は初めのうちは新たに救出された方々が避難してきたり、新たに避難指示が出たために閉鎖された避難所から多くの人が移動してきたりと、混乱が続き、なかなか落ち着かない状況でした。着の身着のままで逃れて来た人が多く、靴も泥だらけで疲労の色が見えました。高齢の方の姿が目立ちましたが、板張りの床で寝るしかなく、マットがあっても身体に負担の大きい体育用のマットを敷いているというような光景も見られました。

避難所には高齢者や障がい者が快適に過ごせる場所が必要であるため、AARは市役所や他団体と調整し、比較的避難者の多い避難所の一つ「サンライズ杷木(はき)」に、段ボール製のベッドやポータブルトイレなどを配置した福祉スペースを整備しました。また、小さな不便が重なって大きな心労とならないよう、男性用更衣室や洗濯機前の踏み台なども提供しています。

サンライズ杷木に設置された福祉スペース(2017年7月17日)

ある避難所の高齢の女性は「少しでも笑えることがあったら笑っていたい。でも同じ地区でまだ行方のわからない人がいる。笑っていても心の奥ではずっとこういう思いがあるんです」と話してくださいました。泥や流木の除去が進んでも、長引く避難生活の中で被災者の方々はストレスを抱えて暮らしています。

これからもAARは避難生活を少しでも改善させるとともに、支援から取り残される人がいないよう活動していきます。継続的なご寄付、そして緊急支援の呼びかけに応えてくださった皆さまのおかげで、AARは迅速に支援をお届けすることができました。心より御礼申し上げます。

【報告者】

三木 将

2015年7月より東京事務局で広報・支援者サービスを担当。民間企業を経てケニアでボランティア活動に従事。帰国後AARへ。熊本県出身

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