© Michael von Bergen
エルサルバドルの裁判所は5月20日、流産をしたために4年間投獄されていた女性の釈放を決定した。
2011年、マリア・テレサ・リヴェラさんは、トイレで多量に出血し倒れているところを義母に発見され、病院に担ぎ込まれた。流産だった。ところが病院の職員は、患者が中絶したと警察に告げ、テレサさんは逮捕されてしまう。
病院や警察は、証拠もないのにわざと流産したと主張した。マリアさんは自分の妊娠にまったく気づいていなかったが、裁判では職場の上司が「知っていた」と証言した。だが上司が知っていたと言う時期に妊娠していたら、流産は妊娠11カ月目に起きたことになる。こんな理不尽な証言が、有罪の証拠として採用された。
そして2012年、加重殺人で40年の実刑判決を言い渡された。
■ 厳しい法律が生む悲劇
エルサルバドルは世界でも特に厳格な中絶禁止法を定めている。以前は母体が危険にさらされている場合は許されていた。しかし1989年に刑法が改正され、どんな場合でも禁止されるようになった。妊娠が健康や生命を脅かす時でも、強かんによる場合でも。
流産を中絶だと言われて刑務所に入れられた女性は、マリアさんだけではない。死産でも中絶にされて捕まった人もいる。中絶禁止法は根拠のない疑心暗鬼を生み、流産や死産に苦しむ女性を殺人の罪で牢獄へと追いやっているのだ。とりわけ貧しい人たちを。
強かんによる妊娠でも中絶は許されないということは、強かん犯人の子どもを産み、子どもの一生を背負わなければならなくなる、ということだ。そのため危険を承知で、怪しげな中絶手術を隠れて受ける人、時には自殺を選ぶ人もいる。
アムネスティは、女性の命や尊厳を軽視したこの中絶禁止法の廃止と、中絶や死産で投獄された女性の釈放を求めてきた。
今回、控訴審は、容疑不十分だとしてテレサさんの釈放を命じた。この釈放が、これまでの政策に終止符を打つきっかけとなるよう、アムネスティはこれからも同国政府に要請を続ける。
(アムネスティ・インターナショナル日本)
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アルゼンチンでもマリアさん同様、流産で懲役8年の有罪判決を受け、苦しんでいる女性がいます。アムネスティは、流産をしてしまった女性が刑事罰に処せられないよう、アルゼンチンの保健省と検察庁に求める署名活動を行っています。ぜひ、この署名にご協力ください。
▽ 流産で懲役8年!? 獄中のアルゼンチン女性を救え!
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