スマホやタブレットで小さい子供が遊ぶときに親が知っておくべき4つのこと

生まれた時から、パソコンやタブレット、スマートフォンが身近にある現代の子供たち。子供を持つ親にとっては、いったい何歳から与えていいのか。有用な使い方もできる一方、小さな子供の発育、発達にはどんな影響があるのかなど、心配なことも多い。そこで、乳幼児期から小学校低学年までの子供の、デジタルメディアとの接し方について親が心得ておくべきことを、相模女子大学子ども教育学科・専任講師で、情報メディア社会と子供の成長について研究を行っている七海陽さんに伺った。
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生まれた時から、パソコンやタブレット、スマートフォンが身近にある現代の子供たち。子供を持つ親にとっては、いったい何歳から与えていいのか。有用な使い方もできる一方、小さな子供の発育、発達にはどんな影響があるのかなど、心配なことも多い。

そこで、乳幼児期から小学校低学年までの子供の、デジタルメディアとの接し方について親が心得ておくべきことを、相模女子大学子ども教育学科・専任講師で、情報メディア社会と子供の成長について研究を行っている七海陽(ななみよう)さん(写真)に伺った。

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【1】0〜2歳 乳幼児は、生きていく土台となる感覚、知覚、運動機能、愛着・共感関係を育むことが大事

テレビやDVDは、一方的な情報の受信が子供にはよくないとされている一方で、スマートフォンやタブレットなどでは、タッチパネルに触れるだけで簡単に子供だけで双方向のコミュニケーションを取ることができる。しかし、プラスの面ばかりでは無いようだ。

「乳幼児期の子供たちは、自分の認識が正しいのかそうでないのか、自分の体の感覚、保護者の表情、言葉がけ、反応を手がかりにして確かめながら、人として生きていくために不可欠な力を主体的に学んでいる真っ最中です。目、耳、鼻、舌、皮膚などの感覚器官をフルに使って、まわりの世界そのものを認識しています。同時に、発達に応じた運動能力を駆使し、周りの環境を探索します。そのためこの時期に、人工的なメディアでバーチャルな世界を“過度に”体験させることは、もともと備わっている発達のしくみを混乱させることになりかねないのではないかと、私は考えています」

デジタルメディアと子供の発達との関連性は、まだ研究が進んでおらず、実際どのように影響するのかわからない部分が多いとか。今の段階では、例えば、テレビや電話などのように、子供を取り巻く環境のひとつとしてとらえ、もし使わせるとしても、親が触っているものを一緒に触らせる程度にとどめておくほうが良いという。

【2】3〜5歳 親が一緒に使いながら、正しい使い方を教えていく

3歳くらいになると、アプリを使って内容を理解しながら遊べるようにもなってくるが、その時には、与えたままにするのではなく、必ず親が一緒に使うことが条件だとか。

「一緒に使いながら、メディアとの接し方や情報の選別のしかたを、生活習慣のひとつとして教えていってほしいと思います。例えば、『タブレットで遊ぶのは1回15分にしようね』とか、『ママと話しながらスマートフォンを触っていたらママ悲しくなるよ』とか、『このゲームは子供がやってはいけないよ』など、デジタルメディアに対しての言わば“しつけ”をしていく。それを続けることで、将来的には情報の選別ができるようになったり、ネット社会でのマナーを身につけて、トラブルに巻き込まれることを防いでくれます」

小学生にもなると、親の目の届かない範囲も広くなる。その時に自分で判断できる力を身につけさせるために、良いこと、悪いことを幼い頃からしっかりと教えておくことが大切なのだ。

【3】子供向けゲームアプリは、メーカーの思想や思いが見えるものを選ぶ

最近では子供向けの知育・教育アプリも充実しているが、いったいどれを与えるのがいいのかも迷うところ。子供向けならどれでも良いというわけではない。では、どんな基準で選べばいいのか?

「実際に親が自分で使ってみて検討するのはもちろん、メーカーのウェブサイトなどを確認して、監修の有無や、どんな思いで作ったアプリなのか、どう使ってほしいのかなど考え方がわかるもの、それに共感できるものを選ぶといいでしょう。無数のアプリが発売されていますが、きちんと子どものことを考えて作られたものかどうかが大切です。選ぶ基準はなかなか難しいのですが、それをひとつの目安としてもいいのではないでしょうか」

【4】小学生 自由に使えるが、判断力はまだ未熟な年齢

コミュニケーション能力が身に付き、自分で文字も書くことができる小学生になると、より自由に使える範囲が広くなる。SNSなど社会とつながるようになるにつれて、トラブルに巻き込まれる可能性も増える。

「特に、SNSや掲示板への書き込みからいじめやトラブルに発展する例もよく聞かれます。これは、自分が書き込んだことが、ネットの先にいる見えない受け手にどう捉えられるかを理解できていなかったり、ネット上での表現スキルが未熟であるがゆえに起こることが多いです。これからはもっと学校教育の中で教えていってほしいことなのですが、これを教えることができる先生がまだ少なかったり、教える体制が整っていないのが実情です。たとえば、学校のグループ単位でアカウントを発行し、子ども同士の交流を大人がサポートしている小学生向けSNS『ぐーぱ』があります。このような、管理が行きとどいた安全なSNSを活用して、小さな失敗を繰り返しながら学んでいってほしいですね」

乳幼児期から、メディアとの接し方を親が繰り返し教えることで、批判的な目を持って自分で情報を選ぶ力を身につけさせ、ある程度成長してからは、安全な場で表現・発信する力やスキルを養う経験をつみ、失敗をもとに学ぶ。そのような方法で、メディアに振り回されることなく、使いこなせるスキルを大人になるまでにしっかり身につけさせることが必要だと七海さんは語る。

「人を思いやる気持ちや、自分で考えて選択する思考力といった“土台”を作ることは、メディア社会で生きて行くうえでも欠かせないということを、親御さんには忘れてほしくないですね」

大前提として、基本的な生活習慣や情緒、思考力の発達を大切にして、人としての土台を育むことが、子供にとって最も重要であることを忘れてはならない。その基本を大切に、子供にスマホやタブレットの使い方を教えていくのがいいだろう。

(相馬由子)

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Source: Pew Research Center\n要旨: 「大多数の13歳以上の子供の親は、自分の子供たちがオンラインで行っていることや、行った行動が他者にどのようにモニターされているかについて心配している。子供のオンラインの履歴を監視・点検したり、議論するために対策を講じ始めた親もいる」\n\n (credit:Shutterstock)
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Source: C.S. Mott Children\'s Hospital National Poll on Children\'s Health\n要旨: 「この世論調査では、成人のほぼ3人中2人がCOPPA(チルドレンズ・オンライン・プライバシー・プロテクション)の最新の提言を支持している。これには、子供を対象としたアプリにユーザーが13歳以上であることを確認させること、13歳未満のユーザーの個人情報収集禁止などが含まれている」 (credit:Alamy)
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Source: Family Online Safety Institute\n要旨: 「子供のオンライン上での自らの安全性への懸念は、親が考えている以上に親の懸念に近いものであり、多くの子供は自分の個人情報保護に対策を講じていることがこれらの調査に示されている。それにもかかわらず、親は子供のオンライン上での行動について自分で考えているほどには理解しておらず、中には見知らぬ他人に個人情報を提供するリスクを冒している子供もいる、ということが示されている」 (credit:Shutterstock)
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Source: Common Sense Media\n要旨: 「米国の教師(キャリアの長いベテラン/ハイテクに通じた若い教師、経済的に豊かな人向の学校/低所得者の学校、公立/私立、小学校/高校等の違いにかかわらず)は比較的一致した懸念を表明している。学生は集中力の持続時間、文書作成、直接のコミュニケーションに問題がある。経験の長い教師は、子供たちのメディア利用がこの問題の原因となっているとしている。肯定的な面では、若者はメディア利用能力に長けることで情報を早く見つけることができ、より効率的に複数の作業を行える、としている」 (credit:Shutterstock)
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Source: Pew Research Center\n要旨: 「AP(アドバンスト・プレースメント)とNWP(ナショナル・ライティング・プロジェクト)の3/4の教師は、インターネットや電子的検索ツールは学生の調査の習慣に対して、『大抵は有益な』影響を与えているとしている。しかし87%の教師は、これらのテクノロジーは『注意力持続時間の短い、気が散りやすい世代』を作り出している、としており、64%の教師は、デジタルテクノロジーは学生を学問的に援助する以上に気を散らせる働きをしている、としている」\n (credit:Shutterstock)
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Source: Common Sense Media\n要旨: 「13歳以上の子供の4人中3人は自分のソーシャルネットワーキングサイトを所有しており、2人に1人は毎日自分のサイトを訪れている。しかし、我々のソーシャルメディアへの懸念にもかかわらず、非常に多くの場合、これらのメディアは子供の生活に大きな混乱を与えてはいない」 (credit:Shutterstock)
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Source: Pew Research Center\n要旨: 「子供が扱う携帯メールの量は、携帯メールを利用する十代の子供の中央値で、2009年の1日50メールから60メールに増加している。携帯電話と固定電話での友達とのおしゃべりの頻度は減少している。しかし最も多く友達とメールをする子供は、同時に最も多く友達と電話でおしゃべりをする子供だ」 (credit:Alamy)
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Source: Pew Research Center\n要旨:「米国において13歳以上の子供の生活にソーシャルメディアが浸透する中で、新たな調査の結果は、ソーシャルネットワークサイトを利用する子供の69%はサイトの中で友達はお互いに思いやりのある行動をとる、としている。だがこれらの子供のうち、サイトの中で他人に対して意地悪・残酷な態度を取る人を見たことがある子供が88%、意地悪・残酷な行動の標的になった経験のある子供が15%いるとしている」 (credit:Shutterstock)
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Source: Pediatrics\n要旨: 「育児環境が自宅の子供のうちの70%、施設の子供の36%が毎日テレビを見ていることが明らかとなった。より重要なことに、幼児および小児がテレビを見る時間は、育児が自宅の子供は2~3時間、施設の子供は~1.5時間だ」 (credit:Alamy)
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Source: Pediatrics\n要旨:「今回の最新の方針は、メディア(見ているもの、見ていないものの両者)は2歳未満の子供に対して潜在的に負の効果を持ちはっきりした有益な効果はない、という更なる根拠を示している。このため、AAP(米国小児科学会)はこの年代の子供にメディア利用を控えさせる推奨を再確認している。この声明は小さな子供が部屋にいる際には、大人のためにテレビをつけておくことも控えるように推奨している」 (credit:Alamy)
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Source: Common Sense Media\n要旨: 「生後9ヵ月の子供がテレビまたはDVDを見る時間は1日約1時間、5歳の子供は親のiPhoneで遊びたいとねだり、7歳の子供はゲーム、宿題、またはお気に入りのバーチャル世界での自分のアバターの様子を確認するために1週間に数回コンピューターを利用している。テレビは依然人気があるが、読書の傾向は下降し始めている可能性がある。子供の生活におけるメディアの役割を正確に理解することは、子供が健康的に発達することに関心を寄せる以下のような全ての人たちにとって不可欠なことだ。親、教育者、小児科医、公衆衛生の推奨者、政治家等、枚挙に暇がない」 (credit:Shutterstock)
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Source: The Huffington Post\n要旨: 「小児や十代の子供における携帯電話の電磁波と脳の悪性腫瘍との因果関係を評価する最初の研究に用いられた方法と結論について、専門家は深刻な懸念を抱いている。彼らが述べるところによると、この研究は欠陥があるだけでなく、携帯電話業界より資金援助を受けていた」 (credit:Alamy)
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Source: Pediatrics\n要旨: 「性別、年齢、家庭の収入、思春期、客観的に測定された身体活動や活動しない時間にかかわらず、テレビやコンピューターに多くの時間を費やすことは、より多くの精神的障害に関連していることがこの研究により明らかになった」 (credit:Alamy)
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Source: Pediatrics\n要旨:「テレビを見ることとテレビゲームで遊ぶことは、その後の子供時代における注意力障害の増加に関連している。テレビ、テレビゲーム、注意力障害に関する同様の関連は、後期青年期および初期成人期にも存在するようだ」 (credit:Alamy)
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Source: Pew Research Center\n要旨: 「携帯メールをする13歳以上の子供の2/3もが、友人と話すよりもメールをするために携帯電話を使用することが多いようだと言っている」\n (credit:Alamy)
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Source: Kaiser Family Foundation\n要旨: 「現在、8~18歳の子供は普段1日平均7時間38分(1週間に53時間以上)娯楽メディアを利用している。また、その時間の多くを『メディアのマルチタスキング:複数のメディアの同時使用』を行っているため、実際は7時間半の中に10時間45分に相当するメディアコンテンツを詰め込んでいる」 (credit:Shutterstock)