元DJが、チャリティー専門のアパレルブランドを立ち上げた理由「社会を変えるって、実は身近なこと」

なんだかファンキーな人々が、とっても素敵なことをしているのがうかがえる。
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アピアランスケアって言って、どれだけの人がピンとくるだろう?

私も自分の子供が白血病にならなかったら、知りもしなかった言葉だ。

アピアランスケアとは、簡単にいうと直接的な治療とは少し違った手法を用いて外見上の変化を補い、がん患者の苦痛を軽くするケアを指す。主に成人分野を対象としていて、あまり小児分野にはその概念が広がっていない。

実際、私もアピアランスケアに関する講演会に出席してみたけれど、子供に関する話はほとんどなくて、ここにいてもいいのか?なんだか不安にすらなった記憶がある。

そんなことがあったので、小児分野にもアピアランスケアってあったらいいのにと考え、どうせなら病児も障害児もみんなが明るくなれる「チャーミングケア」を浸透させたいなとチャーミングケアラボを立ち上げた。

ファッションでできるケアってどんなもの?

外見上の明るさを考えた場合、ぱっと思いつくのはファッションだ。

ファッション分野で、私の考える「チャーミングケア」をしているところはないものかちょっと探してみた。

すると、ヒットしたものがあった。京都に所在地をおくJAMMINという会社だ。

JAMMINは、チャリティTシャツを販売し、独自の方法で対象団体に寄付をする仕組みを取り社会貢献活動につなげているユニークな会社だ。早速、話を聞いてみることにした。

ファッション×社会貢献 JAMMIN 起業秘話

JAMMINの代表、西田さんはなんと、元DJ!なんでそんな人が社会貢献なんて考え付いたのだろうか?

少しお話を伺った。

西田さん:学生時代、研究のために訪れたスリランカでの経験が、JAMMINの原点です。

理工学部で土木・環境を専攻しており、配属先の研究室では、卒業のためには途上国での調査が必須でした。

あまりノリ気ではなかったのですが、渡航先のスリランカで、衝撃を受けました。不衛生な環境の中で水を汲み、それを飲み水や料理に使っている現地の人たち。

当時、学生として自分が持っていた知識を活かし、自分がアクションを起こすことで水の衛生状況を良くできるということ、彼らの生活を改善できるのではないかという体験をしました。

「社会を変えることって、実は身近なことなんじゃないか」。そこで得た直観が、やがて信念に変わり、 JAMMINの原点となっています。

ファッションで人は救えるのか?

チャーミングケアラボとしては、ファッションは子ども達にとって有効なケアの手段であるのか否か?を研究したいところ。

ファッションで人は救えるのか?ちょっと深く調査した。

西田さん:ごくごくふつうの感覚で、ソーシャルに意識がなくても、たのしいこと、オシャレなことだったら、たくさん人が集まってくれるのではないかと思うんです。

そして、スリランカで感じた直観「社会を変えることって、実はもっと身近なことなんじゃないか」という体験を、ファッションであれば、よりたくさんの人に感じてもらえるのではないか、と考えたことから、完全ド素人のところからブランドをスタートさせました。

当初、業界にこだわりなく、ただ、「興味がない人たちや、若者を巻き込んでいきたい」という思いが前提としてあり、ファッションならばできるのでは、というところで、アパレル業に決めました。

「チャリティーを、もっと身近に!」という合言葉のもと、「デザインがかわいくて手にとったら、実はチャリティーだった」というアイテムを目指し、デザインはもちろん、Tシャツを始めとするアイテムのクオリティーにもこだわって物作りをしています。

なんだかファンキーな人々が、とっても素敵なことをしているのがうかがえる。そして、そのJAMMINで制作されたTシャツを色々拝見したのだが、私がデザイン的に気に入ったのがこれ。

これは公益財団法人日本ダウン症協会の過去のチャリティTシャツで、自転車のモチーフがとても可愛いと感じた。

お気づきになっただろうか?たくさんの自転車の中に1つだけ三輪車が混じっているのだ。

これはダウン症の染色体をイメージして、染色体は通常2本、1つだけ3本である、ということを表していてダウン症のことをお話しできるきっかけになるのだそう。

早速、公益財団法人日本ダウン症協会の水戸川さんに少しお話をうかがった。

水戸川さん:JAMMINさんのTシャツはとっても可愛くて、毎年デザインにこだわって制作していただいています。

この自転車はJAMMINさんとの打ち合わせの時、2と3のキーワードを話していて、浮かんだものです。

とっても好評で、その次の年にどうしようか悩んだほど。

「2だけど3!」そんなコンセプトで結局今年はお家に窓、のデザインになったんだけど、そういうことを考えながら作っていくのがまた楽しいですよね。

水戸川さんはとても明るく素敵な笑顔で答えてくれた。

JAMMINは、公益財団法人日本ダウン症協会以外にも、過去には病児のきょうだい支援をしているNPO法人しぶたねのTシャツも手掛けており、風に揺られてかたちを変えるモビールのように、心の中には、いつもいろんな感情が渦巻く様子、きょうだいへの思いをデザインで表現すると同時に、もし誰か一人が弱っていたら、モビールのように周囲の人たちがバランスをとってその人を支えよう、そんな仲間をたくさん作っていこう、というしぶたねの思いがこもってるとのこと。

そしてまさに現在(5月21日より1週間)は、大阪に拠点を置く一般社団法人mina family(ミナファミリー)のTシャツチャリティーを行なっている。

様々なかたちのいすに混ざって、子ども用の車いすも並んでいるデザイン。小児用の介助型車いすは、外見がベビーカーに似ているため、車いすとしての取り扱いをされないことが多い。皆それぞれ個性があり、違っているのは当然で、皆それぞれに晴らしいところがあるんだよ、というメッセージを表現し、"It's good to be different"、「(他と)違うことは、良いことだ」という言葉を添えているとのこと。

ターゲットは当事者以外 そこを動かしていきたい

JAMMINの西田さんの話に戻ろう。

西田さん:コラボを通じてその団体の活動が広がるようなシーンに携わらせていただくと、とてもうれしいです。

日本ダウン症協会さん、しぶたねさん、mina familyさんもそうですが、デザインを見て、アイテムを「いいな」と手にとってくださり、そこからその団体のことを知って「そんな問題があるなんて知らなかった」「応援したいな」などと興味を持ってもらえるきっかけができれば、うれしいなと思います。

そのための苦労というほどではないですが、私たちとしては、できるだけ「フラットな感覚」を持つようにしています。

社会課題やチャリティーは、そこに対して意識が高い方が取り組んでいることが、日本ではまだまだ多いです。

ただ、それでは裾野は広がっていかない。

だからこそ、私たちは「ファッション」を通じて、「チャリティーや社会課題に全然興味がない人」に向けて、発信したいと思っています。

これからも心動かされる瞬間が伝わるような、エキサイティングな企画・デザインで、たのしく、かっこよく!一人でも多くの人を巻き込んでいきたいと思っています。

なんて、熱い会社が京都にあるんだと感じた。

ファッションで全てが解決するわけではないけれど、そこには確かに、携わってる人と人との繋がりや思いがあった。

ファッションで人は救えるんじゃないか?まだ研究しなければいけない題材ではあるが、一つ言えるのは、いつかチャーミングケアラボでも、JAMMINコラボのびっくりするほどイケてるTシャツを作って、是非とも実際に検証してみたいと、お話をうかがってとても強く感じた。

(2018年5月23日「みんなのチャーミングケアラボラトリー」より転載)