「僕の絵本!」と子どもは言った。マンガ家・古泉智浩さんが描いた特別養子縁組

2年間の里親経験を経て特別養子縁組した、古泉智浩さんに話を聞いた。
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「今年に入ってから、僕らが行っていた里親会に来ていた人たちがバタバタと里親になってるんです。特別養子縁組が実現できたわが家も含めて、やっぱり法律が変わったからでしょうね」

およそ1年前、血のつながらない男の子と特別養子縁組したマンガ家の古泉智浩さんは、里親になりたい人たちの「現場」の実感をこう語る。

「里親」とは、子どもを決まった期間預り、産みの親の代わりに自宅で育てること。「特別養子縁組」は、6歳未満の子どもと迎え入れる家庭が、法律・戸籍上の「親子」になること。実の親子と同じ権利・義務が与えられ、親権も移る。

児童福祉法が2016年に改正され、厚生労働省は「養子縁組を5年間で倍増させ、年間1000件の成立を目指す」という目標を掲げた。

特別養子縁組は、これからの「家族のかたち」の選択肢になるのか。2年間の里親経験を経て、特別養子縁組を実現させた古泉さんに話を聞いた。

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Satoko Yasuda

――2年間の里親を経て、子どもと特別養子縁組した小泉さん。両方を体験して、制度のこの部分が変わるといいのに、と感じたところはありますか。

もっとシンプルになればいいのに、とは思いますね。日本の法律って実の親の権利、親権がものすごく強いんですよ。それが里親になるときにも、特別養子縁組をするときにも、一番の高いハードルになっている。

子育てを全然していないような実親でも、その実親が「ダメだ」と言ったら他の人が子どもを引き取ることはできない。そこから変えていくのが一番いい気がします。

ただ、(前作の)『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』でも描きましたが、最初のうちは僕らも完全に「子どもがほしい」という自分たちのエゴしかなかったんです。それで児童相談所に行って話を聞いたら、「里親制度は子どものためのシステムである」と言われて、「ああ」って思ったんですよ。痛いところ突かれた、って。

——親のためではなく、子どものための制度だと。

でもそんなことを思いながらも養護施設の研修行ったら、とにかくその子たちがみんな、人懐っこくてかわいらしくて。そういう子どもたちにとっては施設にずっといるよりも、家庭的養護、家庭で特定の人と接して育つほうがいいんだという話を聞いて、確かにそうかもしれない、と納得する部分もあったんですね。

だから、最初のきっかけはエゴでもいいんじゃないでしょうか。どんな気持ちであれ、とりあえず児童相談所に電話をしてみたらいいと思います。全国各地にあるので。そこで話を聞いたり研修を受けたりすることで、気持ちはどんどん変わってきますから。

もし今、不妊治療をしている人でも、並行して里親研修に行くといいことをおすすめします。不妊治療は長く続けると心がボロボロになるので、その前にこういう選択肢もあるんだな、と知っておくのはいいんじゃないでしょうか。

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Satoko Yasuda

――児童相談所は急増する児童虐待への対応が多いため、特別養子縁組まで手が回らないとも聞きます。古泉さんもそんな印象はありましたか?

僕も児童相談所がどういうシステムになっているのかわからなかったんですけど、前に里親の集いに出席したときに、僕の住んでいる自治体では「児童相談所の職員は何人くらいいるんですか?」「50人くらいです」「里親制度の担当は何人ですか?」「2人です」という話は聞いたことはあります。いろんな業務を兼任しながら回しているらしくて、大変みたいですね。

――最近では民間のあっせん団体も増えています。公的な窓口ではなく、民間の団体を通じての養子縁組は考えませんでしたか。

実は最初は民間のあっせん団体を考えてたんですよ。それでその業者のサイトを見たら、「住んでる地域で里親登録してる方が条件です」とあったので、じゃあ児童相談所で里親研修を受けてからそこに申し込もうと思っていた。行政なんて人手不足だろうから絶対に後回しにされるだろう、と思いこんでいたんです。

でも実際に児童相談所を訪れてみたら印象がまったく違って、すごく手厚くしていただいて、びっくりしました。「勝手に信用できないと思ってなんか失礼しました」と謝りたいです。

——里親同士のつながりはありますか?

僕らが住んでいる新潟の児童相談所では「里親の広場」っていう集まりが定期的にあるので参加していますね。里親になる前に、先輩の話を聞けたのは良かったです。里親の先輩がたは明るい人が多くて、毎回元気付けていただいております。

今は、皆さんが子育ての不安や不満を話している中で、特に思春期のお子さんは大変そうですが、うちはかわいい自慢しかできなくて。なんか申し訳ないなあ、って思ってます。

――『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』では、血がつながった親子ではないことを3歳のうーちゃんに告げる「真実告知」もさらりと行われていますね。

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『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』本文より

そうですね。でも、まだ本人はちゃんと理解できていないので、これからもちょっとずつ、という感じですね。年に2回、うーちゃんがお世話になったNICU(新生児集中治療室)に挨拶に行っているので、その度にぽろっと言ってみようかなと思います。

でもそれ以上に、新刊の見本が届いたときに、表紙を見て「うーちゃんの本だ!」「僕の絵本」ってわかってましたからね。字が読めるようになったら、タイトルでもう真実がわかっちゃうわけじゃないですか。

――この本の存在そのものが真実告知になってしまいますね。

そう。読んでもらえれば全部わかるという。でもそのことに気づいた妻が、「うーちゃんが大人になってこれを読んだときに、自分は本当に本当に愛されていたんだ、ということをもっとしっかり伝えないと」と言い出して、僕のあとがきも書き直しを命じられました。

――今回は「妻のあとがき」も収録されていますね。うーちゃんへの溢れるほどの愛情と、里親制度に関心を持つ人へのエールが文面からしっかり伝わってきました。

そうなんです。すごい長文が校了直前にできあがって、担当編集さんが収めるのに苦労してました(笑)。僕としてはうーちゃんへの愛は日々、絵に込めて描いているつもりなので、そんなに取り立てて文章で書くことがないんですけどね。

――ではこれから先、どんな風に子育てをしていきたいですか。

うーちゃんには空手を習わせようと思っているんですよ。3歳になってすぐに空手道場に連れて行ったんですよ。いじめに負けない子になってほしいから。でも全然ダメでしたね。「ほら、アンパンチだよ!」ってミットを打たせても、「......ポコンッ」って(笑)。

あとは、僕は暗算が苦手で繰り上げ算とかすると頭がモヤモヤってなっちゃうので、そこはちゃんとできる子にさせてあげたい。

それから、もう少し落ち着いたら、うーちゃんにきょうだいを作ってあげたいとも思っています。「もうひとり里子を預かって家族として育てたいね」と夫婦で話しています。

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Satoko Yasuda

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『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』は漫画配信サイト「Vコミ」で連載中 『漫画うちの子になりなよ』

(取材・文 阿部花恵 編集:笹川かおり)

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