僕たち、フツーの家族。香川県の男性カップルが結婚できなくて困ること

同性婚訴訟の原告になるふたり。「困っている同性カップルは他にもたくさんいる」と話します。
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2007年、ふたりはクリスマスパーティーで出会った。その時はあまり話せなかったけれど、一週間後に友人を交えてライブに行くことになった。

趣味の話などするうちに、共通点がたくさんあることがわかった。好きなアマチュアバンドのライブに同じ日に行っていた、共通の友人がいた――。

その年、大晦日を一緒に過ごし、年明けには付き合い始めた。

それから12年。家族公認のカップルとして生活をともにする。朝食を食べ、出勤し、犬の散歩をする。どこにでもいるようなカップルと変わらない日々を過ごす。2013年には中古の家を購入した。一生を過ごす場所として、リノベーションの真っ最中だ。

ただふたりは、あることで悩んでいる。それは、結婚できないために大切な家の相続権が発生しないこと。

それが、香川県に住む田中 昭全(たなか あきよし)さんと川田 有希(かわた ゆうき)さん。男性同士のカップルだ。

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田中さん、川田さん提供
川田さん(左)と田中さん。ふたりにとって子供のような存在の愛犬と一緒に

■ ふたりが抱える問題:家を相手に残せるのか

家は田中さんの名義で買った。今はまだふたりとも健康だからいいが、将来自分に何かあった場合が心配だと田中さんは話す。

「一緒に住んでいても、戸籍上は全くの他人です。僕は今41歳で、彼が33歳。もし僕が先に死んだ場合、僕の名義になっている家を、彼は相続できません。それが一番の問題です」

遺言をつくって、川田さんを相続人にすることはできる。それでも、万が一親族と争いになった場合、きちんと川田さんに家を残せるのか不安は残る。

「僕たちは、両方の親が公認の上で付き合っているので、親族と争いになることはほとんどないと思います。でも戸籍上は赤の他人のままだと、心配は消えません」

遺言書の作成にしても、多額の費用がかかる。結婚している人なら払わなくていい費用を支払わなければいけないことにも、不平等を感じる。さらに、配偶者へ相続する場合は税金の優遇があるのに、第三者に遺贈する場合にはない。

■ 僕たちはまだいい。他にもたくさん困っている人がいる

それでも、「僕たちはまだいい方だ」と、田中さんと川田さんは話す。困っている同性カップルは他にもたくさんいるという。

結婚できないために外国籍のパートナーがオーバーステイとなり、強制退去を求められた人たちもいる。もしこれが異性カップルであれば、事実婚の状態でも在留特別許可が得られることが多い。しかし同性のふたりは結婚できず、在留特別許可もおりなかった。

他にも、子供がいるレズビアンのカップルが、パートナーの片方が親権を持てず、子供が入院するときにサインできないという問題もある。外国では結婚して夫婦と認められているのに、日本では配偶者ビザがおりず、外国で暮らすしかないという国際同性カップルもいる。

田中さんと川田さんのように相続の問題を抱えるカップルの中には、養子縁組して"親子"という形で家族になった人たちもいる。しかし田中さんと川田さんはそれは嫌だと話す。「自分たちの対等なパートナーであり、親子になりたいわけではありませんから」

日本でも、行政が同性カップルを公に認める「パートナーシップ制度」が広がりつつある。それはそれで良いことなのだが、パートナーシップ制度には法的な効力はなく、相続権や親権などの問題の解決にはならない。

この問題を解決する一番の近道は婚姻の平等化だ、とふたりは訴える。男女のカップルに認められている婚姻制度を、同性のカップルも使えるようにすれば、今すぐにでも問題は解消する。

「公正証書などの書類を作らずとも、普通に相続できるようにしてほしい。それが婚姻を求める大きな理由です」と田中さんは語る。

■ 未知のものはこわい

ふたりの関係やセクシュアリティを、家族や友人にオープンにしている田中さんと川田さん。ただ、自分たちのようなケースは地方ではレアだと話す。

田中さんは23歳の時から、「プラウド香川」というLGBT当事者団体で活動している。そこで出会った人たちの中には、完全にクローゼット(セクシュアリティをオープンにしない)の人たちも多かった。人に言えない生きづらさを感じている人は、地方には多いのかもしれない、と田中さんは話す。

「都会なら、少し探したらLGBTの方と行き当たるのかもしれませんが、地方は人口が少ない分、当事者の数も限られていてなかなか会えない。保守的なところもあり、LGBTに寛容ではない空気があります。オープンにして生きている人は少ないですね」

田中さん自身も、家族にカミングアウトしたのは、川田さんと付き合ってからだった。田中さんの部屋に住み始めた川田さんのことを「あの子は誰?」と問いただされるまで、親には言えなかったそうだ。

オープンにできない空気について「未知なるものへの恐怖があるのでは」と、川田さんは感じている。

川田さんが通っていた大学には、被差別部落出身の人や障がいのある人を対象にした推薦枠があった。そこで、差別を受けてきた人たちと出会い、彼らが感じている苦しみに共感したという。

「普通の人間なのに『えたひにん』と呼ばれて、わけのわからない物のような扱いを受けている人たちが、いまだにいるんです。いい歳をした先輩が、差別を受けて泣いている。彼らと喋っていると、なんだか同じような気持ちになるんですよね」

「レッテルを貼られて不当に追い込まれている人、たくさんいるよね」と田中さんもうなずく。

■ 僕たちは、フツーの家族。結婚制度が使えないのはおかしい

「未知のもの」扱いされて、家族となる権利を与えられていない現状を変えたい。すベての人が平等に結婚できる社会を求め、田中さんと川田さんは2月14日に国を提訴する。他の12組の同性カップルが一緒だ。

ふたりがアクションを起こすのは、今回が初めてではない。2015年にスタートした「同性婚人権救済申立て」の申立人でもある。同申立てでは、450人以上の申立人がいる。

人権救済申し立ては、始まってから3年半経つがまだ答えが出ない。答えを待ちつつ、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告となり、直接的に司法に訴えていく。

「早く答えを出して欲しい気持ちはあります。その答えを待ちつつ、次のステップにいく感じです」と田中さんは話す。

「僕たちの家族は、男女が結婚して家庭を作るのと大差ありません。朝起きて、ご飯食べて、出勤して、洗濯して。そんな毎日の生活がある」

「家は、僕たちにとって帰る場所。ふたりが最後まで一緒に過ごす場所です。愛犬がいて、友達を呼んで...。ゲイカップルの家庭が変わっているかというと、別に普通です。なんら変わりがない」

だからこそ、そこに婚姻が認められていないことに納得がいかない。

婚姻制度を使える人が、性別や性的指向によって限られている現状を変えるため、田中さんと川田さんは訴訟という一歩を踏み出す。

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