次なる北欧デザインとは?80年代の教訓

ドガで今年で第二回目の開催を迎える北欧デザインフェア。そのテーマは「80年代」。北欧といえば60~70年代が注目されやすいが、なぜこの時代を選んだのだろうか?
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オスロで開催された北欧ヴィンテージ展 Photo:Asaki Abumi

「今のスカンジナヴィア出身の若手デザイナーに欠けているのは、新しい破壊性。美しいだけのデザインだけではなく、もっと色々と挑戦して、野生的でクレイジーなことをしてほしい」。

北欧の若い作り手に向けて、背中を後押しするのは、ノルウェーの首都オスロにあるデザイン&建築センターDogA(ドガ)で、キュレーターとして勤務する北欧デザインのエキスパート、ベネディクテ・スンデ氏だ。

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可愛い北欧柄の食器やテキスタイルが魅力的なRetrorosa社のスタンド Photo: Asaki Abumi

5月30・31日、ドガでは今年で第二回目の開催を迎える北欧デザインフェアがおこなわれた。オスロで人気のあるショップが集まり、1930~90年代のヴィンテージデザインを展示・販売。自宅に迎え入れる新しい家具探しに夢中になる地元民で会場は盛り上がった。

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東京に支店もあるカフェ「フグレン」もヴィンテージ家具を出展 Photo: Asaki Abumi

今年の訪問者数は、2日間で5000人と、前年度の3000人という記録を大幅に塗り替えた。爆発的なレトロ人気の理由に、スンデ氏は「30~40年間の時を経て、子ども時代に慣れ親しんだスタイルを、再び懐かしく思う大人たちが増加している」と分析する。「サステイナブルやリサイクルというキーワードが、ここ数年で流行となっていることも関係しているでしょう」。

なぜ80年代のヴィンテージに着目?

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花が咲いたような、丸いフォルムが特徴的なチェア、ペーテル・オプスヴィク(Peter Opsvik)作「Garden」(1985)Photo: Asaki Abumi

今回のイベントの大きなテーマは「80年代」。北欧といえば60~70年代が注目されやすいが、なぜこの時代を選んだのだろうか?

「デザインも建築も、ひどかったじゃないか」というのが、今まではよくある反応だったとスンデ氏も語る。反対に、その時代をよく知らずに育った若手デザイナーが、興味を持ち始めているという。

「80年代のデザイン史、文化的な背景や考え方は、現代だからこそ新しいメッセージを伝えてくれますよ」。

当時のデザイン史の代表としてピックアップされたのが、イタリアを中心として活躍した国際的デザイナー集団メンフィス(Memphis)だ。メンフィスとノルウェー人デザイナーとの関係性は、これまでデザイン史として大きく着目されることがなかった。

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メンフィスのデザイン展がノルウェーで開催された当時のポスターと、同時期のデザイン Photo:Asaki Abumi

今、北欧デザインに必要な80年代のムーブメント

これまでの常識を打ち破るような、刺激的なデザインを発表し続けたメンフィスのデザイン展が、ノルウェーで初めて開催されたのは1984年だった。F15というギャラリーで、ノルウェーのグラフィックデザイン集団「Art Aid」が手がけたポップな3種類の宣伝ポスターは、そのままミラノ国際家具見本市でも使用された。

当時、ノルウェーのデザイナーは、メンフィスから影響を受けることなく、同じデザイン哲学をすでに持ち始めていた。メンフィスと異なるノルウェーらしい特徴といえば、人間工学に基づいたデザインが目立ったという。

これまでのデザインの「当たり前」を派手に打ち破り、前進していく必要性を感じたデザイナーたちが、各国で続々と現れ始めたのだ。

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イスのフォルムの常識を覆したスヴェイン・グスル(Svein Gusrud)作「Stand In」(1982)とスンデ氏 Photo: Asaki Abumi

基本的に、シンプルで、機能的。「お利口」路線に向きつつある北欧デザイン?

今、80年代に起きたムーブメントが北欧デザイン界で必要とされていると、スンデ氏は語る。

「シンプル」や「ミニマリズム」のイメージが定着しつつある現代の北欧デザイン。それは、確かに「機能的で、長く使える」北欧らしい素晴らしさなのだが、その傾向に同氏は物足りなさを感じている。

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ミッドセンチュリー家具を豊富に展示したGodagers社 Photo: Asaki Abumi

「メンフィスのような共通点を感じさせるノルウェーの若手といえば、ベルゲン出身の2人の女性組Vera & Kyteでしょうか。彼女達は素材と遊んでいます」と語るスンデ氏。だが、そのようなデザイナーは、北欧ではまだまだ少ないという。

メンフィスのような新しい表現力と破壊力をもつことは、今後の北欧の若手デザイナーの課題となるのかもしれない。

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Text: Asaki Abumi

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