3.11ポストパブリック:スペクトラムなネットワーク社会--「仮設住宅」を舞台とした高齢者たちのチャレンジ(3)

ホームエレクトロニクス・カフェのプラットフォームは「地域」と「ネットワーク」です。地域のコミュニティーとしてだけはなく、行政区分や伝統的地理境界を超えたネットワーク社会の地理学やJeff Jarvisの提唱するパブリックネスの概念を包括しています。
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ホームエレクトロニクス・カフェのプラットフォームは「地域」と「ネットワーク」です。

地域のコミュニティーとしてだけはなく、行政区分や伝統的地理境界を超えたネットワーク社会の地理学やJeff Jarvisの提唱するパブリックネスの概念を包括しています。

◎pub・lic・ness〈パブリックネス〉

【1】情報・思考・行動をシェアする行為、またはそれらをシェアしている状態。

【2】人を集めること、または人・アイデア・大義・ニーズの周りに集まること。

【3】周囲とコラボレーションするために、プロセスをオープンにすること。

【4】オープンであることの倫理。

ホームエレクトロニクス・カフェのオープンは実に簡単です。ドアノブにプレートを吊るすだけで「自宅」は近隣住民や友人が集う社交場に早変わりします。誰しもが「自宅」というもっともプライベートな空間を、「パブリック」の場にすることには、少なからずとも抵抗があるのは確かです。しかし、「パブリック」と「プライベート」は対極にあるのではなく、「完全」、「不完全」と同様に、スペクトラムな同一線上にあります。「プライベート」の定義や受け止め方は個人でも、国や文化によっても異なります。「プライベート」が「パブリック」にされた時に感じるのは、社会が自分をどのように評価するのか、恐れにも似た感覚があります。「プライベート」が大きければ大きい程、その恐怖やストレスは比例します。特に日本人の特質として「本音」と「建前」の二重構造があり、現代社会はその構造を維持するために、多大なコストとストレスを強いられ、日本社会を覆う閉塞感の大きな要因にもなっています。

「パブリック」のメリットとしては"自然体でいられる"、"つながりが築かれる"、"他人が他人でなくなる"、"コラボレーションが生まれる"、"完全神話が払拭される"、"安心感が得られる"などが上げられます。

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「朝夕の食事はうまからずともほめて食うべし。元来、客の身なれば好き嫌いは申されまじ。」ー伊達政宗

本来、「店」と「客」との関係はお互いに正直に謙虚で、相手に対する気遣いのできる関係であるべきですが、日本では「お客様は神様である」。という言葉が一人歩きし、客はお金を払うのだから、「客は偉いものであるという」風潮が強いといえます。最近は日本の"OMOTENASHI"を、クールジャパンとともに、海外に売り込もうという戦略があるみたいですが、確かにそのホスピタリティ・マインドの思想自体はたいへん尊く、事実、日本においては古くから様々な業種業態において、日常的に「おもてなし」の精神が実践されてきました。しかし、最近はその奥にある精神を踏まえずに、マニュアル化した表層のカタチや言葉だけが飛び交う、過剰なおもてなしという場合の方が多いのではないでしょうか。一般コモディティのサービス業に対し、広範囲にマニュアル化した、無理な「おもてなし」のサービス基準を導入することによって、働く側のメンタルなストレスが顕著化し、高齢者や障がい者の雇用を閉め出し、さらに若者ですら、このような不況下の求人状況でもサービス業に人が集まらないという、雇用のミスマッチも生み出しています。確かに一見細やかな心配りというのは素晴らしいが、その反面細部への行き過ぎたこだわりが、過剰にモノの命を無駄にしている場合も多いの事実です。

ホームエレクトロニクス・カフェのスタートアップはドアにプレートを吊るすだけです。 しかし、その「最初の一歩」には、大きな勇気がいります。その一歩は、社会を揺さぶるイノベーションの「大きな一歩」でもあるからです。それを支えるためには、ここでは「最初の観客」が重要な役割を担っています。「最初の観客」はみんなにどのように利用すればいいか示す役割があります。「最初の観客」にも大きな勇気が必要です。「最初の観客」はこの物語を共に発展させていく重要なパートナーであり、「最初の観客」の存在が「高齢者」に勇気を与え、やがて本物の起業家や経営者へと変えていく「インキュベーター」の役割を果たしていきます。

空き家を生かした生涯現役の場づくりとして、元気をもらい気軽に助け合える実家。ここには、人に会え、人と話ができ、人と一緒に食事ができ、そして笑いがある。

新潟県内に2,000か所以上あるといわれている「地域の茶の間」は、新潟市在住の河田珪子さんが始めた有償の助け合い活動の事務所が、自然発生的に、子供からお年寄りまでの居場所となったことから始まった。

誰かに会いたい、誰かと話したい、誰かと一緒にお茶のみしたい、行くところがほしいという人々の願いに応えた毎日型の地域の茶の間。子どもからお年寄り、障がいの有無にかかわらず、誰でもいつ来てもいつ帰ってもOK。16畳程度の和室でおしゃべり、縫い物、囲碁、昼寝など思い思いの時間を過ごす。昼食時にはみんながおかずをまわしたり、箸が行き渡っているかを確認したりと一段と活気が出てくる。「いただきます」の号令をすることなく自分のペースで食べはじめ、おしゃべりも続く。みんなが主役の居場所。

平成15(2003)年には、常設型の「地域の茶の間」である「うちの実家」(新潟市)も開設された。ここに行けば、いつでも人に会い、話しができ、人と一緒に食事をとることができる。車椅子の人、認知症の人、目や耳が不自由な人、小さい子からお年寄りまで、お互いに助け合いながら、それぞれ好きなことをして過ごしている。

常設型地域の茶の間「うちの実家」

ドアノブにプレートを吊るしたら、FACEBOOKなどのSNSのネットワーク上でもオープンしてみましょう。ネットワーク上では世界中の「観客」があなたの「自宅」に訪れます。そして、「観客」との関係は一方的なものではなく、お互いの活動についてのコミュニケーションを図ることができます。「パブリック」と「プライベート」という概念は、フェイスブックなどのソーシャルネットワークの以前と以後では大きく変容しています。ホームエレクトロニクス・カフェはオープンな「フェスティバル」です。毎日のメニューやそのレシピ、イベントや活動の紹介だけでなく、「自宅」や「観客」についても、「パブリックにしてよいプライベート」という「第三の空間」と言えます。「自宅」も「ネットワーク」もどちらも重要な「社交場」であり、何らかの発信をすれば、普段出会えないような人々との、予期せぬ収穫がいっぱいあります。そして、この「フェスティバル」は日本だけにとどまることなく、世界中の国や地域で増殖していきます。東北の「被災地」だけではなく、日本全国や世界の「疲弊地区」や「紛争地区」などで暮らす人々や、「高齢者」・「障がい者」・「女性」などのチャレンジドたちが、地球上で起こっているHECP(人権・環境経済・コミュニティ・パブリック)の諸問題に対して連帯して取り組んでいくことで、本当の意味での「絆」やお互いのつながりの実感を得ることができます。

この「フェスティバル」には、様々な人々が集まり、様々なドラマがあります。それは「復興に立ち塞がる苦難」ばかりではなく、「観客との出会い」、「仲間との友情」などのエンターテインメントなエピソードが満載です。そして、この「オムニバスの物語」は、、ショートストーリーとして作品化され、YouTubeなどの動画配信をはじめ、FACEBOOKやTED、THE HUFFINGTON POSTなどの、ソーシャル・ネットワーキング・メディアや、映像ジャーナリストやフォトグラファーたちとの恊働により、「ひとつ、空の下。」世界中の人々に発信されていきます。

(2014年3月4日「re-CONSCIOUS」より転載)

震災復興 画像集
東日本大震災・手を合わせる女性 (01 of23)
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東日本大震災から2年半を迎え、多数の犠牲者が出た宮城県南三陸町の防災庁舎前で手を合わせる女性=11日午後 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
気仙沼に秋の味覚(02 of23)
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東日本大震災から2年半の11日、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港で今季初のサンマが水揚げされた。北海道沖で捕れた約80トンを水揚げしたのは第六安洋丸(同県石巻市)。同港に係留中、津波で陸に打ち上げられたが、修理して出漁している。漁労長は「今年は群れが薄くて苦労したが、大きいものが捕れてほっとしている」と話した。 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・第十八共徳丸とコスモス(03 of23)
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朝日に照らされる「第十八共徳丸」とコスモス=11日午前、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/09/11 (credit:時事通信社)
東日本大震災・2年半ぶりに灯った明かり (04 of23)
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宮城県石巻市の長面(ながつら)、尾崎(おのさき)地区に25日、東日本大震災以来約2年半ぶりに電気が届いた。同地区は居住が認められない「災害危険区域」だが、仕事などで日中滞在する住民らにとっては待望のライフライン。東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域を除いた被災地では最後の復旧となった。水産業に従事する小川英樹さん(32歳、中央)は「電気がきたことによって、できる作業の幅が広がる。これが復興の第一歩」と作業場に灯った明かりを見上げた。 \n\n撮影日: 2013/08/25 (credit:時事通信社)
大熊町のJR大野駅構内 (05 of23)
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立ち入りが規制されている福島第1原発がある福島県大熊町のJR常磐線大野駅構内。 \n\n撮影日: 2013/08/15 (credit:時事通信社)
漁業の復興・生イカの水揚げ (06 of23)
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日本有数の漁獲量を誇る八戸漁港の市場に水揚げされる生鮮スルメイカ。東日本大震災の被害から復興が進むものの、円安による原油価格の高騰が漁業関係者の痛手となっている=1日午後、青森県八戸市 \n\n撮影日: 2013/08/01 (credit:時事通信社)
仙台七夕まつり (07 of23)
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商店街に鮮やかな吹き流しが飾られた「仙台七夕まつり」。今年のテーマは、東日本大震災の復興への思いと、全国の支援者の気持ちをつなげていくとの意味を込めた「つなぐ」=6日夜、宮城県仙台市内 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
jlp15031626(08 of23)
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(credit:時事通信社)
スイカ割りで祝う3年ぶり海開き (09 of23)
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東日本大震災以来3年ぶりの海開きで行われたスイカ割り大会=7月28日、茨城県北茨城市の磯原二ツ島海水浴場 \n\n撮影日: 2013/07/28 (credit:時事通信社)
被災地つなぐ1000キロリレー (10 of23)
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東日本大震災の被災地をランニングと自転車で駆け抜ける「未来(あした)への道1000キロ縦断リレー」が行われている。25日に青森県八戸市を出発し、約700人のランナーが東京(8月7日)までたすきをつなぐ。30日はバルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子さんらが津波の爪痕が残る宮城県南三陸町の防災庁舎前を通過した(写真)。コースは東京五輪が実現した場合の聖火リレーのルートを想定している。 \n\n撮影日: 2013/07/30 (credit:時事通信社)
日本酒を購入する安倍首相 (11 of23)
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「南三陸さんさん商店街」で日本酒を購入する安倍晋三首相=29日午後、宮城県南三陸町[代表撮影] \n\n撮影日: 2013/07/29 (credit:時事通信社)
3年ぶりに復活したトコヤッサイ (12 of23)
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東日本大震災で開催が途切れ、3年ぶりに復活した創作踊り「トコヤッサイ」のコンテスト=27日午後、宮城県南三陸町 \n\n撮影日: 2013/07/27 (credit:時事通信社)
成長する松の苗木 (13 of23)
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高田松原の松ぼっくりから採れた種から育った松の苗木=3日、岩手県陸前高田市 \n\n撮影日: 2013/07/03 (credit:時事通信社)
福島の海水浴場 (14 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。東京電力福島第1原発事故による放射能汚染水漏れの風評被害で訪れる海水浴客もまばら=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
福島県いわき市で3年ぶりの海開き (15 of23)
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東日本大震災のがれき撤去が終わり、3年ぶりに海開きした四倉海水浴場。打ち寄せる波に子どもたちが歓声を上げていた=15日午前、福島県いわき市 \n\n撮影日: 2013/07/15 (credit:時事通信社)
プロ野球球宴・黙とうする全セマスコットキャラクター (16 of23)
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試合前、東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげる全セのマスコットキャラクター=22日、福島・いわきグリーンスタジアム \n\n撮影日: 2013/07/22 (credit:時事通信社)
漁業の復興・サメの水揚げ (17 of23)
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東日本大震災の津波で被災した気仙沼港に水揚げされたモウカザメ。高級食材のフカヒレが切り取られ、身は加工食品などの原料となる=5月23日午前、宮城県気仙沼市の気仙沼漁港 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)
「千年希望の丘」が完成 (18 of23)
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東日本大震災の津波で生じたがれきを使い造成された「千年希望の丘」。津波の勢いを弱めるための防災拠点、震災の教訓を後世に伝える公園の役割も持たせる=9日午前、宮城県岩沼市 \n\n撮影日: 2013/06/09 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (19 of23)
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「東北六魂祭」で、上空に白いスモークでハートマークを描く航空自衛隊の「ブルーインパルス」=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
飛行するブルーインパルス (20 of23)
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東北六魂祭パレードが行われる国道4号の上空を飛行するブルーインパルス=1日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/01 (credit:時事通信社)
パレードの青森ねぶた (21 of23)
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福島市で2日間にわたり行われた「東北六魂祭」が2日、閉幕した。福島わらじまつりや青森ねぶた祭など東北6県の夏祭りが勢ぞろいし、東日本大震災の鎮魂と復興を祈った。来場者数は計25万人に上った。写真は2日目のパレードに登場した青森ねぶた=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
六魂祭の山形花笠まつり (22 of23)
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東北六魂祭2日目のパレードで、練り歩く山形花笠まつりの踊り子=2日午後、福島市 \n\n撮影日: 2013/06/02 (credit:時事通信社)
被災地の仮設商店街 (23 of23)
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東日本大震災の被災地で営業する仮設商店街=5月23日、宮城県気仙沼市 \n\n撮影日: 2013/05/23 (credit:時事通信社)