私は生理用品が作れなかった。 #NoBagForMe

私が認識していたよりもずっと「女性の生理」を取り巻く現状は複雑で繊細でした。
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こんにちは、ハヤカワ五味です。

現在、私は生理用品をテーマにしたふたつのプロジェクトに携わっています。ひとつは、6月12日発表されたユニ・チャームさんとの共同プロジェクト 「#NoBagForMe」。もうひとつは、私が代表を務めているプロジェクト「illuminate(イルミネイト)」です。

なかでも「#NoBagForMe」に関しては、突然のプロジェクト告知に驚かれた方もいると思います。そして私自身も、焦りから強い言葉を使ってしまいました。本当に、申し訳ありませんでした。ポジティブな活動を世の中に周知していく立場にも関わらず、とても不甲斐なく思っています。

ただ、「#NoBagForMe」のプロジェクトを通してTwitterや掲示板などで多くの声をいただき、現在の複雑な状況や様々な思いを肌で感じることができました。まず、私が認識していたよりもずっと「女性の生理」を取り巻く現状は複雑で繊細でした。この状況を、SNSを通して知ることが出来たことに感謝しています。勇気を出して声を伝えてくださった方々、本当にありがとうございます。

それと同時に、今回の「#NoBagForMe」や「illuminate」というプロジェクトの意図をもっと丁寧に説明しなくてはいけないとも感じました。そこで今回は、なぜこのような生理にまつわるプロジェクトが立ち上げられたのか。その経緯をみなさまにご説明できたらなと思います。少し長くなりますが、よかったら読んでみてください。

▶︎生理用品が卒業制作

そもそも私が生理用品に関連して動き始めた発端は、同じ大学の同級生であるminaちゃんの卒業制作です。

minaちゃんの生理用品は、主張しすぎないナチュラルなデザインになっているので、月経のある人が心の性別に縛られず購入できるジェンダーレスさが特徴でした。

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minaさんがデザインしたパッケージ

多摩美在籍時、私とminaちゃんは面識がなかったのですが、共通の友人複数人から「minaちゃんって多摩美の同い歳の子が、ジェンダーレスな生理用品を卒業制作で作ったんだけど、製品化したいらしい」と連絡が来ました。その後、ライン上でやりとりしていく中で、確かに今までなんとなく違和感を覚えながらも派手な生理用品をこそこそとコンビニのレジに持って行っていたなと思い、ここには「消費者のペイン(悩みの種)があるなと思い何かしら取り組もうと思いました。

その後、周りのスタッフや友人にもヒアリングしたところ「生理用品を買おうとレジに向かう途中で、通りすがりのおじさんに卑猥だと罵声を浴びせられた」といった、到底理解しがたい辛い体験をした女性もいました。

そこで、ただ対処療法的に買いやすい生理用品を開発するだけでなく、より根本的な問題となる、ネガティブな価値観からの脱却に取り組む必要も感じました。そのような理不尽な辛い思いをすることを、私たちの代で終わらせたいのです。

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▶︎アパレルブランドを立ち上げた経験

なぜ私が友達の提案から実際にアクションを起こすに至ったのか。それは自分が2014年の大学在学中に立ち上げ、現在も継続しているシンデレラバスト向け下着ブランド”feast”が大きな要因だと思います。

この時の私は「まあ、生理用品もなんとか作れるっしょ」くらいに思っていました。18歳の時、1人で工場を周ってアパレルブランドを立ち上げた経験があったので。

feastは、自分自身も持っている「胸が小さいという悩み」をプロダクトやコンセプトでポジティブに変えるブランドでした。実際、シンデレラバストという単語を作ってから「シンデレラバストで良かったと思えるようになりました」とお客様から何度も言っていただきました。(※シンデレラバスト→胸が小さいことを指す、貧乳のポジティブな言い方でハヤカワ五味の造語)

それが成功体験としてあったので、生理用品でも同じように生理に関する悩みをポジティブに、そしてネガティブな過去の価値観からの脱却をしていけないかと考えたのです。

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ランジェリーブランド「feast」

▶︎生理用ナプキンのOEM生産を目指す

実際に動き始めたのが去年の夏過ぎくらい。アパレルブランドを立ち上げた時と同じように、オンライン上に載っている連絡先や、現在販売されている商品の製造元表記を元に片っ端から工場やブランドに連絡していきました。ただ、これがどこも門前払い。「いくらでも条件は飲めるので」「お金も前払いしますので」と交渉しても「うちは新規は一切受け付けていないので」「OEMは一切やっておりません」という返事しかありませんでした。

ただ、これは想定内で、正面突破がダメなら知り合いヅテで行こう!と、とにかく身近な人の中で生理用品の取り扱いをしている方や、綿や製紙系と繋がりがありそうな人、顔が利きそうな人たちに何十回何百回と「どうして生理用品を作りたいのか」を説明し、そのうち何件かは生理用品工場の社長や会社の代表さんに直接繋げてもらえました。そこで再度「どうして生理用品を作りたいのか」を説明する、ここで生半可な素人だと思われないために何十冊も生理に関する本を読み、更にその会社にも行き何回も説明していきました。

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ここまでやったらどこか一箇所くらいはYESの返事があるだろうと思っていました。

でも、会社からの返事はすべて「NO」でした。

悲しかったです。でも諦めたくありませんでした。

▶︎生理用ナプキンが作れる工場を作る

諦めたくなかったので、めちゃくちゃ食い下がって「なぜうちと取り組めないのか」を生理用品製造の工場各社に聞き続けました。その結果わかったことが「現在、日本では生理用品をつくれる機械の数が限られていて、その生産ラインがもう既存企業でいっぱい」とのことでした。そこで、じゃあ生理用品工場自体を作ってしまおう!と思いました。

私はお金を沢山持っているわけではないけど、今まで会社経営をやってきた実績もあるので数千万~1億くらいなら借りれそうだなと思っていました。そのお金で工場を作ってしまおう。土地は恐らくなんとかなるだろう、と。そこで生理用品を製造する機械についてリサーチを始めたのですが、衝撃の情報が入ってきます。

「生理用ナプキンの機械を買うのにだいたい10億くらいかかるみたいね、昔は3-5億くらいだったんだけど、しかも1型で10億だから、もし3つのサイズ展開にするなら30億くらいかかると思う。」

30億~????!?!???!!!!

3000万とかくらいで買えるもんだと思っていたので、さすがに落ち込みました。

しかもこの値段となると、既存の工場が需要に応じて機械への設備投資を新規にするとは思えない。これから日本の女性人口は減っていくのだから、そこに10億を張るのはリスキーすぎるし新規もお断りするよねと思わされました。

でも、やっぱり諦めたくありませんでした。生理用品を買うときにコンビニ店員にニヤニヤされて辛いと話す友人のことを思い出したら、諦められませんでした

▶︎生理用品の輸入を目指す

もう国内がダメとなったら国外で生産して輸入するか、いい感じの既存商品を輸入してしまえ!と思いました。

ここで大きなハードルになってくるのが薬事。私は薬機法(旧薬事法)に詳しくないので、調べたり厚生労働省に電話をかけて聞いてみたりしました。そこでわかったのが、日本に生理用品を輸入し販売するには、薬事法に基づく医薬部外品製造販売業の許可、製造業の許可および品目ごとの承認が必要ということ。え、めっちゃむずいじゃん。

さらに調べたり話を聞いていると、どうやら認可を取ること自体は薬剤師がいれば可能だけれど、品目ごとの承認に結構時間がかかるとのこと。これはやれそうだけど、相当ロングスパンで見ないといけないので手続きを進めつつ様子を見ることにしました。

▶︎既存商品の個別販売を考える

もうこの際、ネット販売に特化して既存商品のバラ売りも検討しましたが、これも薬事的にNG。「日本の法律のもとで、生理用品をビジネスにするのはここまで難しいのか……」と頭をかかえましたが、法を侵さない方法で道を探しつつ、他を進めることにしました。

▶︎既存企業との協業を目指す

ここまで私1人で駆け回ってきましたが、この時点で相当な時間と労力をかけ、さらに遠方への交通費やリサーチでの商品購入なども含めてそこそこの出費もあり心が折れそうでした。

でもまだ、まだ自分が使っていないカードはある!と思い、SNSで大騒ぎしはじめたのがこの頃です。

うちの会社で、私が生理用品を作れないのであれば大企業の企画の一貫としてやらせてもらおう!と思い、既存企業へのアプローチを始めたのです。数日後、ここでまさかの生理用品最大手のユニ・チャームさんから連絡が入ります。私としてもまさかの展開すぎて流石にガッツポーズしました。

最初の打ち合わせの日、緊張しすぎて待ち合わせ時間の30分前には到着していました笑。

会議ではユニ・チャームの方が10人くらい。その前で1人で話すのは流石に声も震えました。でも、ここに至るまで何百回と話した内容だったので話したいことは口から勝手に出てくれました。

「前向きに考えます」というお返事をいただいた帰り道、電車の中で「私やminaちゃんのやりたいことは、会社を上手く経営することではなくて、生理用品の選択肢を増やすことなのだから、座組みにこだわらずこんな感じで色々な会社と協業できたら良いのかもしれない!」と思い、生理用品ブランドに執着せず、生理用品のセレクトショップという形からスタートすることに決めました。

▶︎illuminate(イルミネイト)

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illuminateは私が代表を務める生理用品のセレクトショップを中心としたプロジェクトでありブランドです。

illuminateという単語にはいくつかの意味があります。

illuminate
⑴…を照らす、明るくする
⑵<問題に>光を投じる、解明する
⑶…を啓蒙する

そう、ただ明るくするというだけでなく、宗教などの歴史背景ゆえにタブー視されてきた”生理”について、光を投じ、付随する様々な課題について考えるきっかけにしていく、新しい価値観に光を当てるという思いを込めてこのブランド名になっています。

メンバーみんなで大事にしているのが「選択肢」。メンバーの中でも、生理が重い子や軽い子、既存のパッケージが好きな子や苦手意識のある子など様々な人がいます。月経カップを使っている子もいれば、怖いからナプキンだけにしているという子もいます。それでいいのです。もっと納得したアイテムを使いたい、もっと自分の身体について知りたいと思った子が、すぐ情報やアイテムにアクセスできるような場所になったらいいなと思い、まずはセレクトショップの形態を取ることにしました。

そしてセレクトショップの後には、様々なプロジェクトが控えています。例えば、価値観を形成する根っこになる「教育」の変革など。道のりは長いので時間はかかってしまうとおもいますが、間違いなく取り組みたい分野です。

そんなilluminateですが、大急ぎで準備を進めてポップアップショップを開催することになりました。6月20日から7月29日まで青山ブックセンターにて、7月29日から大丸梅田でオープンします。ぜひ、お時間あれば色々なアイテムを手に取りに来てください。

▶︎#NoBagForMe プロジェクト

illuminateと平行して、ユニ・チャームとのミーティングも複数回に渡り行われました。その中で、まずは生理用品の中でもタンポンのパッケージであればやれそうだということで、ユニ・チャームさんが主宰となってプロジェクトが始動することになりました。よくilluminateのプロジェクトと混同されてしまうのですが、#NoBagForMeに関してはあくまでプロジェクトの一員、illuminate代表のハヤカワ五味として参加させていただいております。

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このプロジェクトは私だけの独断にはしたくなかったし、老若男女問わず多くの人を巻き込みつつやりたかった。そこでコアメンバーには、生理のある当事者に入ってもらおうという話になりました。そして参加してくれたのが現在のメンバーです。

今回の写真やリリースひとつで終わりというわけではなく、この5人がコアとなりつつ、男女問わず様々な立場や肩書きの人たちと話し、そして勉強していく中でプロジェクトを進めていく計画になっています。

先ほどの薬事の話とも関わって来ますが、パッケージひとつ変えるにも国の認可が必要なのでサクッと数ヶ月でできるものではありません。現状で具体的にこれが発売されるよという提案がなく申し訳ないですが、様々な方の意見を取り入れつつ考えていけたらと思っているので、もうしばらくお待ちください。

▶︎私は生理用品を作れなかった、でも”私たち”なら作れる

長文になってしまいましたが、結論としては私に生理用品は作ることができませんでした。ただ、それが、私とilluminate、フォロワーのみなさん、ユニ・チャームさんのような企業さんとであれば実現できそうです。

ここまで半年以上の時間をかけたし、個人のお金もたくさん使ってきました。そのなかで協力してくれる人が現れ、ようやく「#NoBagForMe」と「illuminate(イルミネイト)」のふたつが立ち上がりました。今まで生理用品にチャレンジしようとしてきて、様々なハードルから断念せざるを得なかった多くの起業家からのアドバイスや期待も背負っています。

それが、一番の当事者である女性の悩みを深刻化させてしまったり、「紙袋は必要か必要でないか」という議論で終わってしまったら不甲斐なさすぎます。せっかくなら、これからの女性や生理を取り巻く価値観について、いろいろな側面から話すきっかけにしたい。ここまで苦労し、大切に、大切に進めて来たプロジェクトなのでなんとか良い形で世の中に送り出していきたいです。

私もまだまだ不勉強な部分や、拙い部分があると思います。ご指摘いただいてもすぐに全てを変えることはできないかもしれません。でも様々な意見に目を通して、私なりに少しずつ、そして確実に自分の中に消化していきたいと思っています。

illuminate your choice.
少しでもポジティブな選択肢が世の中に増えることを目指しilluminateとしても頑張っていくので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

illuminate 代表
ハヤカワ五味

(note「私は生理用品が作れなかった。 #NoBagForMe」を転載しました)