会社には「0から1を生むタイプ」と「1を10にするタイプ」がいる。 理想的な組織のバランスを考えてみた

【連載】マザーハウス・山口絵理子が歩む"ThirdWay”(第6話)
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イラスト山口絵理子:吉森太郎

「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という目標を掲げて、途上国で生産したバッグやジュエリーを世界各国で販売する「マザーハウス」。代表取締役兼チーフデザイナーの山口絵理子さんは、組織が成長する過程において、3つのキャラクターの人材が必要だと考えています。

「0から1を生み出せる人」

「1を10にできる人」

「10を100に広げられる人」

組織にはこの3つのカテゴリーの人たちがどれくらいの比率で必要なのだろうか?自らが「0から1を生み出す人」である、山口さんが語りました。

ハフポストブックスから刊行された『ThirdWay 第3の道のつくり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊) の内容を再編集しながら、山口さんの生き方・働き方「ThirdWay」の極意を伝える全13回連載の第6回。山口絵理子流・組織論をお届けします。

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マザーハウス提供
マザーハウス提供

組織の調和をデザインする

今年から、マザーハウスは「代表取締役2人組体制」になった。

私と一緒に船の舵取りをする山崎は、慶應義塾大学のゼミの先輩で、会社の形になっていない頃から私の夢を「おもしろい」と聞いてくれて、背中を押し続けてくれたビジネスパートナー。

ゴールドマン・サックス証券エコノミストという輝かしい肩書きを捨てて、マザーハウスに参画してきたという、勇気ある人だ。

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山崎大祐さん
KAORI SAWAKI

私が〝つくる人〟ならば、彼は〝売る人〟

思い先行で、バングラデシュの事業を始めてしまった私に、「ビジネスとはね」と骨格を教えてくれたのも山崎だったし、入社してからは販売サイドの指揮役になってくれたのも彼だ。

私が〝つくる人〟ならば、彼は〝売る人〟。

「早く商品を供給してくれよ。なんでそんなに遅いのか理解できない」「工場の現場を知らないくせに!」というケンカをどれだけ繰り返しただろう。

ぶつかり合って、議論がなかなか噛み合わない。理解し合うのに5年かかった。だからこそ、今はお互いの立場のバランスをとりながら相談し合える同志になれた。

山崎いわく、私と彼はいい意味で正反対のポジションをとっているらしい。

「山口は0から1をつくるのが得意。僕は、0から1を生み出す力はないけれど、山口が生んだ1を5や10、100に広げることができる」。そんなふうに2人のことを表現する。

たしかにそうかもしれない。

私はスタートの思いは強くて、「こうなりたい。ここまで行きたい」とゴールも明確。ただし、その間のプランはうまく立てられない。

スタートとゴールの間を埋めるプロセスをどうつくるのがいちばん合理的で効率的か、ゴールまでのステップを考えてくれるのが山崎。

彼は以前、周りにこんなことも言っていたらしい。

「山口ほど結果にこだわる人はいない。サッカー経験のある僕は多少結果がダメでも『プロセスさえよければ、よい試合だったと讃え合おうよ』とチームワーク重視のとらえ方をするけれど、柔道に打ち込んできた山口は『負けは負け。勝たないと意味がないよね』とバッサリ斬る」

たしかにそうだよね、と思わず笑ってしまった(私は高校時代に柔道全日本ジュニアオリンピック7位に入賞している)。

私が結果にこだわるのは、たぶん、〝つくる人〟だから。せっかくつくったのに誰にも使われなかったら、「なんでつくったの?」と消化できない気持ちが残る。

一方で、日本のオフィスを守っている時間が私よりも圧倒的に長い彼は、重視したくなるものが違うんだろうな、と想像する。

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山崎大祐さん
KAORI SAWAKI

私がエモーショナルになりすぎると…

販売サイドを見ている山崎は数字を管理するのが得意だから、私がエモーショナルになりすぎていると、絶妙なタイミングで声をかけて引き戻してくれる。

これが日常と思われがちだけれど、実は、立場が逆転することも割と多い。

情深いところがある彼は、社員の前で話しながらよく泣く。隣で聞いていて「あ、今日はずいぶん感情に引っ張られているな」と感じたら、私はデータの話を淡々としたり、意図的に対極にいようとしている。

山崎もそれをよくわかっていて、最近はほぼ反射的に役割分担ができるようになってきた。

スポーツのディフェンスとオフェンスがゲームごとに入れ替わるように、役割を交換できるパートナーがいる。

強みが異なり、それを尊重し合えるパートナーを得たことは、なんて幸運なことだろう。

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創業当初の山口絵理子さん
マザーハウス提供

 0‐1の人、1‐10の人、10‐100の人

私と山崎のケースはあまりにもラッキーな組み合わせかもしれない。つくる人と育てる人が、密度濃くやりとりできることは、非常に強固なチームをつくる。

つくる人と育てる人という二つの軸は、言葉を換えると「0を1にする人」と「1を10にする人」とも言える。私たちの会社では「0‐1の人」「1‐10の人」「10‐100の人」という分類をする。

「0‐1の人」とは私のような人。山崎はよく「落下傘部隊」だと笑う。何もない未開拓な地や、新天地に突撃し、種をまいたり、平地に道をつくったり、仲間を見つけたりする。

「1を10にする人」は、できた道を道として機能するように整える人。まだまだデコボコで穴があったりもする道を、人が歩けるように仕上げ、適切な道幅を設け、自分たち以外の人にも解放する。

「10を100にする人」は人が歩ける道をさらに長く、そして必要に応じて信号を設け、標識を設け、歩道と車道を分けて、さらにはまわりに街までも形成していく人たち。

あなた自身はどのカテゴリーに属するだろうか?

また、あなたの組織にはこの3つのカテゴリーの人たちがどれくらいの比率でいるだろうか?

私の経験上、この比率が組織のキャラクターを決定する。 

「10を100」にする人たちが99%の場合、組織は安定しているが、新しいチャレンジは生まれず、未来を切り開く息吹に乏しいかもしれない。

一方で、「0を1にする人」ばかりしかいないとき、組織は崩壊してしまう。私みたいな人たちばかりの組織だったら、どんな経営者も辞めたくなるだろう。

大事なのは3つの素敵なバランスを見つけて、それぞれが「尊敬」し合う関係性をつくることだと思う。

「あなたにはあなたにしかできないことがある」

私は誰に対してもそう思っているが、その根底にあるのは、

私自身が「1を10にしてくれる人」に出会い、

「10を100にしてくれる」人たちに夢を形にしてもらっている

からだ。

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Hand arranging wood block stacking as step stair with arrow up. Ladder career path concept for business growth success process
marchmeena29 via Getty Images

3つのバランスとステージ

そして、この3つのバランスが組織のステージによって変化していくことがまた重要であると学んだ。

創業当時のベンチャーだった頃、「10を100にする」人なんて必要なかった。

はじめに集まった5人は5人とも勇敢なる戦士だった。みんなが0を1にする必要があった。みんなが特攻隊長で、誰もチームメイトはいなかった。

だからこそ、熱量はものすごくて徹夜なんて当たり前!みたいなノリも今考えればブラック企業を通り越して、何もかも吸い込んでしまう正体不明のブラックホールだった。

しかし2、3年経つと、ブラックホールの中で生まれたたくさんの「1」を育てる必要が出てくる。「アイディアを形にしよう。ちゃんとした形にしよう」と思ってくる。あるいは「応用、展開、再現」ということが必要になってくる。

「あのお店の成功例を、このお店でも応用してみよう」。そう思うと「ルール」や「基準」が必要になってくるのだ。

「0‐1」の人たちがワイワイ集まっても、新規のアイディアが生まれるばかりで、まったく収束しない。「1‐10」の人の出番だ。

「最低限必要なルールを設けよう。朝礼でこれだけは共有しよう。品質基準はこうしよう」。少しずつ会社らしくなってきて、大事につくった1が2に、3、4になっていく。

10まで育ったものをさらに大きく周辺にぐぐっと広げて「ビジネス」をつくれそうな段階になると、「10を100にする」人たちの出番だ。世界中の工場に掲げられているトヨタの「KAIZEN」方式は、まさに10を100にするための手法だと思う。

「0から1を生み出せる人」

「1を10にできる人」

「10を100に広げられる人」

 いまに自分たちにいる組織には、どういうタイプの人がどのぐらいいるのか。会社の成長ステージに合っているのか。こうしたことを考えることはとても大切なことだな、と思う。

(編集協力:宮本恵理子・竹下隆一郎/ 編集:大竹朝子)

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山口絵理子さんの著書名「Thirdway(第3の道)」というメッセージは、ハフポスト日本版が大切にしてきた理念と大変よく似ています。

これまで私たちは様々な人、企業、団体、世の中の出来事を取材してきました。多くの場合、そこには「対立」や「迷い」がありました。両方の立場や、いくつかの可能性を取材しつつ、どちらかに偏るわけでもなく、中途半端に妥協するわけでもなく、本気になって「新しい答え(道)」を探す。時には取材先の方と一緒に考えてきました。

ハフポストは「#私のThirdWay」という企画で、第3の道を歩もうとしている人や企業を取材します。ときどき本の抜粋を紹介したり、読者から寄せられた感想を掲載したりします。