丸岡いずみさん うつを乗りこえてわかったオフラインの大切さ「休むことも生きること」

元ニュースキャスターの丸岡いずみさんが、著書『仕事休んでうつ地獄に行ってきた』(主婦と生活社)を9月20日に上梓した。今回は、警視庁捜査一課の担当記者やニュースキャスターなどを務め、ニュースの現場で多忙な日々を過ごしていた丸岡さんが、重度のうつにかかり回復する過程で学んだ「休むことも生きること」というメッセージに込められた思いや、闘病の日々、これからの人生について話を聞いた。
|
Open Image Modal
The Huffington Post

元ニュースキャスターの丸岡いずみさんが、著書『仕事休んでうつ地獄に行ってきた』(主婦と生活社)を9月20日に上梓した。丸岡さん自身のうつ病体験を綴った内容が反響を呼び、発売5日で5万部を突破。10月6日に開催された出版記念トークショーでは、うつ病を患った人や今うつ病を抱えている人たちから、「よく代弁してくれた」といった共感の声が寄せられたという。

今回は、警視庁捜査一課の担当記者やニュースキャスターなどを務め、ニュースの現場で多忙な日々を過ごしていた丸岡さんが、重度のうつにかかり回復する過程で学んだ「休むことも生きること」というメッセージに込められた思いや、闘病の日々、これからの人生について話を聞いた。

Open Image Modal

■記者やキャスターとして駆け抜けたニュースの現場

地方テレビの局アナ、フリーのアナウンサーを経て、29歳のときに報道記者として日テレの採用試験に合格した丸岡さん。そこからは、警視庁捜査一課の担当記者として、24時間休みなく、いつでも取材に出かけられるような忙しい日々を過ごす。

「捜査一課を担当していたときは、いつも、いつ眠るか、いつ食べるかという状態でした。でも、仕事にやりがいを感じていたので、疲れていることがストレスにはならなかったです。むしろ、どんどん現場にいきたいと思っていました」と丸岡さんは語る。

凶悪事件で特ダネをスクープとったときの達成感や、キャスターとなってからの海外取材や、早稲田大学大学院での研究など、やりがいのある毎日に充実感を感じていたという。

■東日本大震災の取材が原因で、うつ病にかかる

そして、夕方のニュース番組「news every.」のキャスターに抜擢され、現場で取材しつつ、夕方には番組の進行を務める日々を過ごしていたが、2011年の夏、丸岡さんの体調に変化が現れる。きっかけは、東日本大震災。震災翌日には陸前高田に入り取材を行う。その後も病気で休むまで、何度も被災地取材を続けていたという。

「『news every.』のキャスター時代は、記者のときと比較するとお休みはありました。といっても、土日に取材が入らなければ、ですけど。やはり、うつになったきっかけは震災の取材です。被災地の悲惨な状況をリポートしていくうちに心のバランスがとれなくなって、食べられなくなり、眠れなくなり……。それが2週間続いて、内科へ行きました」

内科では「自律神経失調症」と診断。ひどい下痢もつづいていたが、それでも、そのときは、ただの疲れすぎ、だましだまし働けば何とかなると思っていたという。しかし、体の不調は一線を越える。8月の終わり、「山」や「川」といった簡単な文字にもふりがなをふって、なんとか乗りきった生放送の後「休みがほしい」と上司に報告して、翌日故郷の徳島へ帰ったのだ。

「とにかく、東京から離れたい、そうしないとまずいだろうなと感じていました」と話す丸岡さん。当事者でありながら自分のことを俯瞰して見ていました、と当時を振り返る。今までにうつを取材した経験が生かされたという。そして、徳島の病院で「うつ病」の診断を受けた。

■実家での療養生活中にインターネットに流れた記事

相変わらず「眠れない」「食べられない」。

父のベルトを見たら、これで「首をつったらラクだろうな」と思ったり……。

一日一日、「なんとか今日も生き抜いた……」、そんな感じです――

本書には、丸岡さんが実際に体験した、地獄のようなうつの日々が書かれている。丸岡さんは「焦燥感にかられていて、所在ない感じで……。眠れない日々でした」と語る。一番苦しかったときに、丸岡さんを追いつめたのはインターネット上に流れた丸岡さんのうつ病に関する記事だった。それを見て心配した友人や知人から一斉にメールが届き、「私のことに構わないで。お願いだから、放っておいて!」とすっかり心を閉ざしてしまう。そこから体調は悪化の一途を辿っていく。

「今では毎日のニュースも見ていますし、自分について何を書かれていても気になりませんが、うつのときは物事をネガティブに考えてしまうので、当時は何も書かれたくない……、と気にしていました。携帯電話の電源も切って、メールもほとんどしませんでしたね」

その後、適切な治療や、薬の服用、信頼できる家族や現在のご主人のサポートもあり、快方に向かう。退院直後に開いたメールボックスには、数えきれないほどのメールが届いていたが、そのときは、返事はできずノーリアクションで通した。そこまで気を配れるほどの回復は出来ていなかったと話す。

■うつを経験して学んだ「休むことも生きること」

病状が好転したのは、ちゃんと薬を飲み始めたことがきっかけだ。うつ病は「心の病気」といわれるが、そうではない。「実際は脳の病気だと思います。胃潰瘍といった他の病気と同じように、適切な治療が必要です」と丸岡さんは話す。

「うつの薬ってしばらく飲み続けないと、効果がないんです。胃薬のように飲んですぐ効くというわけではない。うつの人は、自分をうつと認めたくない。薬を飲まなかったりすることもあります。私も飲まずに治そうと無理をして病状を悪化させました。でも入院して飲まなくてはいけない状況になって、初めて薬を飲みました」

30代でニュースの現場を駆け抜けた丸岡さんは今、「主婦ときどきテレビ出演」というスタンスで、のんびりした毎日を過ごすように心がけているという。

「ニュースについては、記者としてさまざまな現場を取材し、それこそ海外のニュース現場にも立ち会えたりと、貴重な経験をたくさんさせていただきましたので、やりきったという思いです。今は、主婦として家事をしたり、ガ―デニングでお花やグリーンを育てたり、あまりオーバーワークにならないように心がけています」

■気軽にうつ病のことを話せるような時代に

本を執筆するきっかけは、ご主人の「うつの人は多いけれど、うつの人自身が体験談を書いている本はすごく少ないので、書いたらいいんじゃないか」という一言だったという。

本のタイトル『仕事休んでうつ地獄に行ってきた』には、みんながもっと気軽に「うつになっちゃって」と言えるようになればという思いが込められているという。現代は10人にひとりがうつ病になると言われている。しかし、その偏見はまだまだ根強く、病気のことを表だって話せる状況ではないのが実情だ。「この間、パリに行ってきた」というのと同じように、うつ病のことを話せるような時代になればいいというコンセプトだ。丸岡さんも今は「私、うつだったの」と普通に話すことができていると話す。

本書で「うつは私の個性のひとつ。新しい人生がはじまった!」と書いたように、執筆を通じて過去や思いを整理し「デトックスできた」と、これからの人生を見つめる丸岡さん。今後は、要望があれば、うつの理解を深める仕事や、新しいテーマで本の執筆などにも取り組んでいけたら、と語る。

■丸岡さんからのメッセージ

最後に、ご自身の経験をふまえて、丸岡さんはうつに苦しんでいる人にメッセージを送る。

「うつの最中は、もう治らないんじゃないか、一生このままじゃないかと思いがちです。でも、信頼できる先生に出会って、きちんとした処方をしてもらって、休養をとれば、必ずよくなる。長くかかったとしても、今の状態よりも、必ずよくなると信じて治療してほしいと思います」

今まさに日々忙しく過ごしている人にも「全力で走っているときはそれ自体が見えにくいと思うんですが、ときどきは立ち止まって自分の全体像を見る事も必要だと思います」と、アドバイスする。

丸岡さんが経験したように、本当の休息には、スマートフォンなどに触れず、静かに過ごすオフラインの時間が必要だ。うつでなくとも、病気のときや「ちょっと疲れたな」と感じるときは、携帯やメールの電源を切って自分を休めるひとときを持つといいだろう。ガーデニングで土や花と触れ合ったり、たまには自然豊かな故郷に帰ったりして、五感を通じて自分をリフレッシュさせることも「立ち止まる」大切な時間だ。

ニュースの現場を駆け抜け、思いがけずうつ病を患った丸岡さん。今のリラックスした表情から「休むことも生きること」に込められた思いが伝わってきた。

※初出時、丸岡さんの名前を誤って表記しておりました。お詫びして、訂正いたします。(2013/10/16 15:53)

子供とコンピューター
March 2013: Teens and Technology(01 of22)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨:「10代の95%以上は常にオンライン上に存在する(2006年以降一貫して)。ただし、その間、10代のインターネット利用は劇的に変化した。彼らはPCやノートPCを持ってるのと同じぐらい、スマートフォンを持つようになった。そして、今後益々スマートフォンは利用されていくだろう。場合によっては、インターネットへのアクセスはスマートフォンからの利用がメインになるだろう。」\n (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Huffington Post (to read the actual study, visit Pediatrics -- subscription required)\n要旨: 「Christakis博士は新たな発見をした。それは子どもたちが何をどれだけ観るかではなく、どんなものを観るかを改善することに時間と力を注げば成長によい影響を与えるということ。たとえ3歳児であったとしてもそれは有効だ。」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Common Sense Media\n要旨:「メディアによる暴力、長期的な研究はその「因果関係」についての議論を可能にした。しかしその一方でもっと有意義なのは、それが暴力の「原因」というよりもむしろ「危険因子」であると考えることであろうーー子どもたちの暴力的な行為を誘発する要素の一つとしての。」 (credit:Alamy)
January 2013: Screen Time Not Linked To Kids' Physical Activity(04 of22)
Open Image Modal
Source: Reuters (to read the actual study, visit JAMA Pediatrics -- log-in required)\n要旨: 「研究者たちは言う。テレビやPCの前で過ごす「スクリーンタイム」の長さと運動不足の問題は子どもの親と学校が個別に対応すべき問題とは分けて議論されるべきであると。」 (credit:Alamy)
December 2012: How Families Interact on Facebook (05 of22)
Open Image Modal
Source: Facebook\n要旨:「私たちはフェイスブック上で親子だろうと思われる記事(匿名で自動的に投稿されたもの)やコメントを調査した。それらが友人たちとの会話の仕方とどのように違うのかを確かめるために。」 (credit:Alamy)
November 2012: Parents, Teens, and Online Privacy (06 of22)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨: 「大多数の13歳以上の子供の親は、自分の子供たちがオンラインで行っていることや、行った行動が他者にどのようにモニターされているかについて心配している。子供のオンラインの履歴を監視・点検したり、議論するために対策を講じ始めた親もいる」\n\n (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: C.S. Mott Children\'s Hospital National Poll on Children\'s Health\n要旨: 「この世論調査では、成人のほぼ3人中2人がCOPPA(チルドレンズ・オンライン・プライバシー・プロテクション)の最新の提言を支持している。これには、子供を対象としたアプリにユーザーが13歳以上であることを確認させること、13歳未満のユーザーの個人情報収集禁止などが含まれている」 (credit:Alamy)
November 2012: The Online Generation Gap(08 of22)
Open Image Modal
Source: Family Online Safety Institute\n要旨: 「子供のオンライン上での自らの安全性への懸念は、親が考えている以上に親の懸念に近いものであり、多くの子供は自分の個人情報保護に対策を講じていることがこれらの調査に示されている。それにもかかわらず、親は子供のオンライン上での行動について自分で考えているほどには理解しておらず、中には見知らぬ他人に個人情報を提供するリスクを冒している子供もいる、ということが示されている」 (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Common Sense Media\n要旨: 「米国の教師(キャリアの長いベテラン/ハイテクに通じた若い教師、経済的に豊かな人向の学校/低所得者の学校、公立/私立、小学校/高校等の違いにかかわらず)は比較的一致した懸念を表明している。学生は集中力の持続時間、文書作成、直接のコミュニケーションに問題がある。経験の長い教師は、子供たちのメディア利用がこの問題の原因となっているとしている。肯定的な面では、若者はメディア利用能力に長けることで情報を早く見つけることができ、より効率的に複数の作業を行える、としている」 (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨: 「AP(アドバンスト・プレースメント)とNWP(ナショナル・ライティング・プロジェクト)の3/4の教師は、インターネットや電子的検索ツールは学生の調査の習慣に対して、『大抵は有益な』影響を与えているとしている。しかし87%の教師は、これらのテクノロジーは『注意力持続時間の短い、気が散りやすい世代』を作り出している、としており、64%の教師は、デジタルテクノロジーは学生を学問的に援助する以上に気を散らせる働きをしている、としている」\n (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Common Sense Media\n要旨: 「13歳以上の子供の4人中3人は自分のソーシャルネットワーキングサイトを所有しており、2人に1人は毎日自分のサイトを訪れている。しかし、我々のソーシャルメディアへの懸念にもかかわらず、非常に多くの場合、これらのメディアは子供の生活に大きな混乱を与えてはいない」 (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨: 「子供が扱う携帯メールの量は、携帯メールを利用する十代の子供の中央値で、2009年の1日50メールから60メールに増加している。携帯電話と固定電話での友達とのおしゃべりの頻度は減少している。しかし最も多く友達とメールをする子供は、同時に最も多く友達と電話でおしゃべりをする子供だ」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pediatrics\n要旨:「一般的にまたは常に、活動的なテレビゲームで遊ぶ子供は活動的でないテレビゲームで遊ぶ子供より活動的であるという根拠はない」\n (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨:「米国において13歳以上の子供の生活にソーシャルメディアが浸透する中で、新たな調査の結果は、ソーシャルネットワークサイトを利用する子供の69%はサイトの中で友達はお互いに思いやりのある行動をとる、としている。だがこれらの子供のうち、サイトの中で他人に対して意地悪・残酷な態度を取る人を見たことがある子供が88%、意地悪・残酷な行動の標的になった経験のある子供が15%いるとしている」 (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: Pediatrics\n要旨: 「育児環境が自宅の子供のうちの70%、施設の子供の36%が毎日テレビを見ていることが明らかとなった。より重要なことに、幼児および小児がテレビを見る時間は、育児が自宅の子供は2~3時間、施設の子供は~1.5時間だ」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pediatrics\n要旨:「今回の最新の方針は、メディア(見ているもの、見ていないものの両者)は2歳未満の子供に対して潜在的に負の効果を持ちはっきりした有益な効果はない、という更なる根拠を示している。このため、AAP(米国小児科学会)はこの年代の子供にメディア利用を控えさせる推奨を再確認している。この声明は小さな子供が部屋にいる際には、大人のためにテレビをつけておくことも控えるように推奨している」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Common Sense Media\n要旨: 「生後9ヵ月の子供がテレビまたはDVDを見る時間は1日約1時間、5歳の子供は親のiPhoneで遊びたいとねだり、7歳の子供はゲーム、宿題、またはお気に入りのバーチャル世界での自分のアバターの様子を確認するために1週間に数回コンピューターを利用している。テレビは依然人気があるが、読書の傾向は下降し始めている可能性がある。子供の生活におけるメディアの役割を正確に理解することは、子供が健康的に発達することに関心を寄せる以下のような全ての人たちにとって不可欠なことだ。親、教育者、小児科医、公衆衛生の推奨者、政治家等、枚挙に暇がない」 (credit:Shutterstock)
Open Image Modal
Source: The Huffington Post\n要旨: 「小児や十代の子供における携帯電話の電磁波と脳の悪性腫瘍との因果関係を評価する最初の研究に用いられた方法と結論について、専門家は深刻な懸念を抱いている。彼らが述べるところによると、この研究は欠陥があるだけでなく、携帯電話業界より資金援助を受けていた」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pediatrics\n要旨: 「性別、年齢、家庭の収入、思春期、客観的に測定された身体活動や活動しない時間にかかわらず、テレビやコンピューターに多くの時間を費やすことは、より多くの精神的障害に関連していることがこの研究により明らかになった」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pediatrics\n要旨:「テレビを見ることとテレビゲームで遊ぶことは、その後の子供時代における注意力障害の増加に関連している。テレビ、テレビゲーム、注意力障害に関する同様の関連は、後期青年期および初期成人期にも存在するようだ」 (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Pew Research Center\n要旨: 「携帯メールをする13歳以上の子供の2/3もが、友人と話すよりもメールをするために携帯電話を使用することが多いようだと言っている」\n (credit:Alamy)
Open Image Modal
Source: Kaiser Family Foundation\n要旨: 「現在、8~18歳の子供は普段1日平均7時間38分(1週間に53時間以上)娯楽メディアを利用している。また、その時間の多くを『メディアのマルチタスキング:複数のメディアの同時使用』を行っているため、実際は7時間半の中に10時間45分に相当するメディアコンテンツを詰め込んでいる」 (credit:Shutterstock)