8年で9回再発、「余命半年」宣告から5年…どや!この春もやるぜ! がん患者らが集う「ドヤフェス」、新宿で4月末に開催へ

「"AYA世代"にかけて"DOYA世代"と言い始めたんです」

 がんになっても夢を見るのを諦めない、前向きに生きているがん患者らが「どや!」と得意顔をし、ともに歌い、笑う。そんな音楽やトークを交えたイベント「ドヤフェス」。実行委員会代表の松崎匡(48)さんは、「余命半年」と宣告されたことがある、がん患者だ。4月29日に東京都新宿区で開催する第5回ドヤフェスに向けての資金調達のため、3月30日までクラウドファンディングを実施している。

第5回ドヤフェスのポスター
第5回ドヤフェスのポスター
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 松崎さんは2009年12月、39歳の時に人間ドックでがんの可能性が分かり、肝臓がんと診断された。翌2010年3月に腹腔鏡手術を受ける。早期だったため比較的早く社会復帰できたが、約1年後に再発。その後も入退院を繰り返し、43歳の時には余命半年と宣告された。

「8年で9回再発して、病院にいる方が長かったんです。余命半年と言われてから5年経つんですけど、病院をなかなか出られなくて、"こんな状況でも何かできるのではないか?""何かやらなければ、やろうとしなければ生きていても意味がないんじゃないか?"と思うようになりまして」

松崎匡さん
松崎匡さん
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 若い頃から音楽が好きだった松崎さん。ロックミュージシャン・忌野清志郎さん(2009年5月、がん性リンパ管症のため58歳で死去)に憧れ、高校の後輩になりたくて同じ都立日野高校に進学した。

 退院後は忌野さんにゆかりのある人々を飛び込みで訪ね歩き、イベントの趣旨を説明してまわった。忌野さんと一緒に活動していた山川のりをさんには出演を快諾してもらう。会場となったライブハウスも、忌野さんとゆかりのある方に格安で提供してもらうことになった。さらにクラウドファンディングで資金を募るなどし、2016年11月に第1回ドヤフェスを開催した。

第1回ドヤフェス
第1回ドヤフェス
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 これまでに開催してきた4回とも満員御礼が続いた。

「しんみりしたお涙ちょうだいなイベントではなく、がん患者もサバイバー(がん経験者)も、そうでない人も一緒に楽しく過ごせるイベントにしたい、そんな思いでスタートしました。関心のない人に関心を持ってほしいっていうのが、きっかけだったんですね。僕が余命半年からここまで生き延びたのを、何かの役に立てることができるかなって思った時に、"早めに検診行けよ"って訴えることならできる。これからがんになるかもしれない人には、こんなふうに生きてるやつがいるよっていうことを頭の隅に置いておいてほしい」

ドヤフェスの舞台に立つ松崎さん
ドヤフェスの舞台に立つ松崎さん
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「例えば検診でひっかかった時、ドヤフェスのことを思い出したら、僕にアクセスしてもらえれば支援活動してる人を紹介することもできるし。がんの人も、悲しみに暮れてても1日終わっちゃうんだから、どうせだったら、仕事で稼ぐっていう価値観の世界には戻れないほど体力はないけど、違う価値観に価値転換しちゃえば楽しく生きられるよ、みたいなことも伝えたい。今、一番働いてた頃に比べれば稼ぎは全然ですけど、その中でひねくり出してドヤフェスの資金を投入するのが生きがいになってるんで。それは家の中のベッドで、枕を涙で濡らしても絶対見つからないことです」

 第5回ドヤフェスのテーマは「AYA TO DOYA~世代を超えて~」。十代から三十代という若い世代でがんを発症した患者「AYA世代」と、四十代以降にがんを発症した世代との融合をはかりたいと松崎さんは話す。

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「"AYA世代"にかけて"DOYA世代"と言い始めたんです。世代やがんの種別でカテゴライズするのって、本当はあんまり好きじゃなくて。"胃がんは治癒率がすごく高くなって生き延びた"とか言われますけど、治癒率の低いがんの人たちは、いくら頑張っても1人欠け、2人欠け、ってなっていく。僕は障害者の施設に勤めたことがあるんですけど、障害の種別で分けていくと、どんどん人数が少なくなって、社会が変わっていかない。まぁ、あんまり真面目に語ってもしょうがないんで(笑)、若いやつを引っ張り出して、"やっとるでー"みたいなところなんですけど」

 今回は山川のりをさん、サルサガムテープ、JILLEさん、ザ・カチューシャーズ、高柳照彦さん、麻美ゆまさんらが出演を予定している。麻美ゆまさんも、境界性悪性卵巣腫瘍を経験している。司会はお笑い芸人のなかざわゆうきさんと松崎さんが務める。

「面白いのが、集まってくださるお客さん、がん患者の人・がん経験者の人と、そうじゃない人と、ぴったり半々なんですね。本当に2人に1人ががんになる時代です。来てみるとみんなびっくりするんです。イメージと違って明るくて。いつも赤字ギリギリですが、絶対にずっと続けていきます!」

 クラウドファンディングでは第5回の会場費・運営費などを募っている。支援の受付は3月30日まで。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/doyafes5/。(小川誠志)

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