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2018年08月22日 17時00分 JST | 更新 2018年08月22日 17時00分 JST

フィンランドでは、女性上司から男性記者へのセクハラが多かった。彼らが声をあげられない理由とは?

日本政府の「女性活躍」のずっと先にいるフィンランドでいま、起きていること。

フィンランド外務省の主催で、世界16カ国の若手ジャーナリストがこの国をあらゆる視点から学ぶプログラムに参加している。

8月21日は、「フィンランドジャーナリスト労働組合」(UJF)を訪ねた。UJFは、国内のジャーナリストたちの権利を守るために1921年に創設された。出版社、テレビ局、新聞社、雑誌、ラジオ局などで働くジャーナリストの約9割にあたる、約1万5000人が加入している。組合員の58%は女性だ。2015年1月、ハンネ・アホさんが、女性として初めて組合の代表に選ばれた。雑誌のグラフィックデザイナーとして働いてきた経歴を持つ。

日本では、財務省の福田淳一・元事務次官によるテレビ朝日社員へのセクハラがきっかけとなり、メディア業界でのセクハラが問われている。フィンランドでは、同じ問題はは、どう扱われているのだろう。アホさんに聞いた。

arisa ido

ーー日本では、取材先と夜に会食することがあります。オフレコで話を聞くことで関係が深まり、より深い話が聞け、特ダネがとれるかもしれないからです。一方、こうした場でセクハラを受けることもあります。フィンランドでは、どうですか。

晩御飯を食べながら取材?それはあまりないですね。せいぜいランチかな。同行取材の際、晩御飯までついていくこともありますが、日々のニュースを追いかけている記者は忙しくて時間がなかなかとれません。

フィンランドでの外食は高いですよ。ランチならまだしも、夕食は1人100ユーロ(約12700円)は超えるでしょう。取材先とそんな額の金銭が介在する関係になることもありえません。

食事をとらないと深い取材ができない訳ではありません。

取材されたらなるべくオープンに話すことがよしとされています。なので、取材を申し込まれたら情報を隠そうとするより、記者に対して誠実に向き合っていると思います。

それでも1990年代までは、会食することもありました。でも、そういう時代ではなくなっています。背景の一つに、記者が多忙になったことがあります。

2008年と比べ、記者の数は25%減って、1人が担当する領域が増えました。また、昔はただ記事を書いていればよかった記者も、ポッドキャストの音声番組に出たり、あらゆるSNSで発信したり、「書く」以外の仕事が増えています。家族や自分の時間は犠牲にできないので、必然的に忙しくなり、取材先との交流も減りました。

ーーフィンランドでは、取材対象者とのセクハラ問題はないのでしょうか。

労働組合でも、昨年から続く#MeToo ムーブメントもあり、メディア業界のセクハラについてアンケートを実施、2018年2月に公表しました。1197人の記者から回答が寄せられました。16%が直近の1年間でセクハラを経験したと訴えました。13%は言葉でのセクハラ、7%は身体的なセクハラを受けていました。

取材対象者からセクハラを受けた人は、セクハラを受けた16%のうち25%でした。大半は社内でのセクハラになります。

さっきも話しましたが、記者として働ける時間はどんどん奪われているので、取材対象者とじっくり時間を過ごすことが近年減っています。その影響もあって、取材対象者にセクハラを受ける機会が減ったのでしょう。

ーー調査を通して、気づいたことはなんですか?

セクハラを受けたと回答した人の10%以上は、上司からのセクハラを受けていたと答えました。性別で見ると、女性上司から男性部下へのセクハラが、男性上司から女性部下へのセクハラよりも多いということが分かりました。

ーーえ!それは、フィンランドで女性上司が多いからでしょうか?

私もびっくりしました。フィンランドの大手メディアの管理職はまだまだ男性ばかりです。フィンランドで一番大きい新聞社「ヘルシンギン・サノマット」も女性編集長は一度も誕生したことがありません。しかし、大手のメディア以外は女性管理職の割合が多い職場も増えてきています。おおむね管理職の4~6割が女性だと思います。

では、なぜ女性上司のセクハラが多いのか。

きっと女性の方がセクハラを訴えやすい状況になっているからだと思います。女性社員からセクハラを訴えられた男性上司は、すぐにクビにされるか、飛ばされてしまいます。そのため、男性上司は女性の部下にはかなり気を遣わなければいけません。

しかし、その反対に女性上司がセクハラをしても、男性社員はなかなか声をあげづらいと言われています。「女性に好かれていいじゃないか、自慢しているのか」とまともに受けてもらえないからです。訴え自体も「男性っぽくない」とみられてしまいます。

男性はセクハラなどにとらわれない、強さがないといけないという偏ったジェンダー観が根強くあるという現状が覗えます。

ーーセクハラが訴えられたら、UJFはどう対応するのでしょうか?

私たちのところには、誰もセクハラを訴えてきたことはありません。なぜかというと、大半の人は、直接会社に相談するものだからです。フリーランスの記者も、契約している会社の機関に相談します。上司に直接相談できなくても、相談部門の設置は法律で求められています。

そのため、労組も「ガイドライン」を作り、どのシチュエーションで、どの人に相談すれば良いのかを、詳しく書いています。出来る限りの事はするようにしています。

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2017年、フィンランドは世界経済フォーラムの男女格差指数で、世界で3番目という高さだった。もっとも「男女平等」がすすんでいる国の一つといっていい。

政府が進めようとしている「女性活躍」の先にいるフィンランドでは、男性の部下が、女性の上司からセクハラを受けているという問題が顕在化していた。

性別問わず、誰もが活躍できるような支援のあり方を考える時、そのバランスの取り方は難しい。そう思った。

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2018年8月、フィンランド外務省が主催する「若手ジャーナリストプログラム」に選ばれ、16カ国から集まった若い記者たちと約3週間、この国を知るプログラムに参加します。

2018年、世界一「幸せ」な国として選ばれたこの場所で、人々はどんな景色を見ているのか。出会った人々、思わず驚いてしまった習慣、ふっと笑えるようなエピソードなどをブログや記事で、紹介します。

#幸せの国のそのさき で皆様からの質問や意見も募ります。

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