7月28日土曜日、台風12号が関東に直撃した日は、私にとってリモートワークデビューの日となった。
「超絶夜型」で朝が苦手の私が、千代田区にオフィスを構えるハフポストで、学生エディターとして働き始めてはや10ヶ月。
9時から5時までフルタイムで働く私(たち)の仕事は、デスクワークである。
ハフポストで働く前は、大手アパレルの接客でバイトをしていたが、「労働力」に対する考え方は大きく異なることを身をもって実感した。
アパレルや飲食などの接客業では、「時間通りに店頭に立っていること」が一番に求められる。でなければ人手が足りなくなり、全体の仕事が回らないからだ。
しかし現在働いているハフポストは、時間通りに机の前に座ったところで、ちゃんと記事が掲載されなきゃ意味がない。ある意味「成果」が求められていると思う(とはいえ、転載するニュースやブログ記事、自分で書く原稿の最終確認は社員の方が担当するので「完全ソロプレー」というわけでもなく、だからこそ勤務時間が決まっているわけである)。
そんなわけで「超絶夜型」の私でも、朝9時出社が求められるのだ。
上述の通り、私は朝が大嫌いだ。全人類が夜型生活になればいいとさえ思っている。
会社の人は皆びっくりするほど優しいし、仕事もとっても楽しい。出社してしまえばどうにかなるのだが、朝早く起きるというプレッシャーだけで、前日の夜から鬱屈とした気持ちになる。
ギャルなので、せめてもの抵抗でモチベーションを上げるために、フルメイクにハイヒールで気合いをいれて出勤するが、その身支度に1時間はゆうにかかる。
加えて、現在は関東郊外の実家暮らしのため、出勤にかかる時間は1時間半。満員電車に押し込まれてスーツ姿の会社員に挟まれて突っ立てるだけで、朝から肉体も精神も疲労困憊する。あぁベッドが恋しい。
そんなある日、舞い込んできた先輩からのslack
「明日台風来そうだし、電車止まったら困るからリモートワークやってみない?」
日頃の通勤で3−4時間を空虚に捨てている私からしてみれば、天にも昇るような誘いだった。
「あぁ、明日6時に起きなきゃ...」という気持ちでどよんとしていた心が晴れ、その日の夜は、遠足前夜の小学生のごとくワクワクして眠れなかった。
7月28日、その日シフトが入っていた私が起きたのは8時59分。
枕元にある、数時間前までYoutubeを観ていたPCを立ち上げ、枕にもたれかかりながらslackを開き文字を打ち込む。
「浅田着席しました。おはようございます」
この日は土曜だったので出勤するのは私含め3人。
私はいつも通りslackでピックアップされたワイヤーを編集し、社員のお2方は記事作成をする。ワイヤーの編集が終わるとslackで@を使って呼びかけ、校閲をお願いする。
いつもと何も変わらない。
違うのは、私は前日風呂に入ってないし、歯を磨いてないし、小学生から変わらないボロボロのパジャマから着替えてないという点だけ。
この日は台風が上陸していたので、主に天気予報や交通情報など台風系のワイヤーやブログをメインでガンガン掲載していく。
一通りピックアップした記事を入稿し時計を見ると12時40分。普段オフィスで作業していても、12〜12時半頃にお昼休憩に入るのであまり変わらない。強いて言えば口頭でやりとりしている部分をslackでテキストで伝えるので少しだけ手が疲れるところだろうか。しかし、これも通話やビデオ機能を使えば解消するだろう。
「もっち(社員の方の息子くん)がお腹すいたって絶叫してるからお昼にしよう!」
「ごめんねもっち〜〜〜」
「じゃあ1時間後にslackで〜」
と一時解散。12時45分。私はめちゃくちゃ眠かったので昼食後ちょっと昼寝した。
午後1時44分に起き、45分にslackへ復帰すると、午後の作業が始まった。
ベッドにもたれかかる姿勢が辛くなり、机に移動する。
記事を数本、掲載したところで、3時になる。窓の向こうを見ると、どんよりとした雲がゴロゴロ鳴っている。
3時からりゅうちぇるさんの記事を一本書き、校閲してもらって掲載。退勤したのは5時15分。
勤務時間から見ても、入稿した本数で見てもいつもより効率がいい。もちろん台風関連の記事が多かったのもあるが、家で仕事するなんて作業能率が落ちる!という偏見をミクロ単位で払拭できたのではないだろうか。
一方で、少し寂しいな、という気持ちもある。面と向かってのコミュニケーションは文面以上にニュアンスが伝わるという長所がある。また、例えば大きなニュースが入り、速報をチームで取り組む場合に、slackのみでやり取りするのは手間だけでなくリスクも伴うだろう。
とはいえ、猛暑や花粉症の季節のほか、台風などで交通機関に乱れが生じる可能性がある場合や、個人的に精神的・肉体的負傷をした時など、通勤の過程で、仕事のパフォーマンスに必要な気力が損なわれる可能性がある場合は、リモートワークはどんどん認められていけばいいと思う。連日猛暑の中、何時間も電車に揺られてピンピンしてる方が不思議だ。
リモートワークは選択肢だ。その選択肢が、もっと多くの人に開かれた社会になれば、きっと一人ひとりの幸福度やパフォーマンスは上がるのではないだろうか。
苦しさを押し付け合うのはもうやめよう。
ちなみにこの日、頑張って働いた私は5時半に記憶が途切れ、目覚めたのは次の日の朝8時でしたとさ。
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