日本人ではない私が日本人の名前で小説を書いた理由 【これでいいの20代?】

なぜ今、ここでアイデンティティを明かすのか。

私の本当の名前は鈴木綾ではありません。

そして、私は実は日本人でもありません。

去年の8月からハフポストにペンネームで連載小説を掲載してもらっています。

小説で書いた話は、すべて私の経験に基づいています。

なぜ日本人のペンネームで書いたのか。

それは、読者が共感しやすい文章を書きたかったからです。

最初から「私は日本人じゃないよー」、と明かして書いていたら、みんながそこばかりに注目して、自分と関係のない外国人の体験、って読まれてしまうのかな、と心配でした。

私は、同じ時代を生きている女性として、同じような体験をしている20代のみんなとの共通点を主張したかったのです。

じゃ、なぜ今、ここでアイデンティティを明かすのか。

最初、この連載のタイトルを「自分が死ねない理由」にしようと思っていました。

死ねない理由、って、ちょっと変かもしれませんけど、本当にそう思っていました。

日本に来て、日本で社会人になって、いろんな辛いことがありました。

プライベートでも仕事でもたくさん失敗しました。

大好きな家族が両親の離婚で離ればなれになりました。

そして、女性の生き苦しさを毎日のように感じさせられました。

この社会って、女性に優しくない。

平気でセクハラを許しちゃう、女性を守らない社会なんだな、と正直思いました。

いろんなことがあって、本当に死にたくなるようなことがたくさんありました。

でも、死ねなかったんです。

何でだったんだろう、と考えました。

様々な辛い思いをする中で、自分のなか、とても深いところに「硬い石」があることに気づきました。

ダイヤモンドってあるでしょう?

ダイヤモンドは地下ですごい圧力を受けてできますよね。

ダイヤモンドができる過程と同じように、人に潰されれば潰されるほど、自分のなかの石がさらに小さく、そして固くなってダイヤモンドみたいになりました。

自分の中の硬い石。それは、「自分には人間として価値があるんだ」という自信でした。

子供のときから私を応援してくれた両親、先生たち、友だちたち。

みんなからもらった、私の中の、揺るぎない自信。

その自信を持っていたからこそ、私が女だからって不当に扱われて辛かったときも、自分を諦めませんでした。

自分が大失敗をしたときも、自分を諦めませんでした。

だから私は死ねなかったんです。「自分の中の自分」が、それを許さなかったんだと思います。

この連載を書いて、自分が経験したたくさんのことをもう一度思い返して、自分の気持ちを整理することができました。

私は、今はもう日本にいません。

20代の大半を過ごし、私にいろいろな経験をさせてくれたこの国のこと、私は大好きです。

でも今は、日本よりも女性に優しい国、いろいろな価値観を持っている人が一緒に暮らせる国、私の可能性を試すことができる国を探して、そこで人生の次のステージに挑戦してみたいと思っています。

連載はあともう一回だけです!がんばります。

長い間読んでくれた読者の皆さん、本当にありがとうございます。

みんなも自分の中の自分、「死ねない理由」を見つけて、しなやかに生きてください。

【この原稿を読み上げている私の声です】