かつてFacebookの顧問弁護士を務めていたフリオ・アバロス氏が選んだのは、GitHubのCBOというキャリアだった。「法律」という枠を越え、ビジネス全般における問題解決を担う。なぜ、法律家だった彼はGitHubの役員という道を選択したのか?
GitHub役員、フリオ・アバロス氏に直撃取材!
GitHubには「チーフビジネスオフィサー(以下、CBO)」という役職がある。文字どおり、会社が行うビジネス全般を統括する存在だ。
日本では馴染みない職名だが、実際はどのようなことをしているのか。
「CBOは主に、ビジネスの戦略や会社の将来について考えます。具体的には、法務、人事、採用、PR、社内コミュニケーション、マーケティングなど、その領域は多岐にわたります」
そう話してくれたのはGitHubでCBOの役割を担っているフリオ・アバロス氏。彼はかつて、FacebookをはじめとするIT企業の顧問弁護士を務める法律家だった。
まだ若いIT企業が直面する"前例のない問題解決"を行うにつれ、新しいチャレンジの楽しさを知る。そしていつしか、法律以外の領域の問題解決も積極的に行なうようになったという。
伝統や慣例にとらわれず、画期的なキャリアを築いてきたアバロスさんは、自身の仕事や生き方に、どんな考えを持っているのだろうか。
創業して間もないFacebook、顧問弁護士からスタートしたキャリア
― 創業まもないFacebookで顧問弁護士を担っていたと伺いました。まずはじめに、弁護士になった経緯から伺ってもよろしいでしょうか。
両親は中米からアメリカにきた移民でした。私は移民の子として生まれたのです。両親は、私に質の高い教育を受けさせ、将来は医者や弁護士になってほしいと願っていたそうです。
大学卒業後の進路を決めるころ、私自身は哲学の博士号を取って学者になりたいと思っていたのですが、両親の願いを叶えるために法科大学院に進学しました。そしてニューヨークで2年間学んだ後、サンフランシスコに移り法律事務所で弁護士として働き始めたのです。
そこでFacebookの顧問弁護士になりました。仕事で就いたはじめてのIT企業がFacebookでした。当時はまだ無名で小さな企業で、はじめは「不思議な名前の会社だな」くらいにしか思っていなかったのですが、予想以上のスピードで急速に成長していったんです。
― 急成長するIT企業の顧問弁護士を務めて、戸惑うことや困難なことはなかったですか?
なかったですね。むしろとても楽しいと感じました。ITの世界では、常に新しいテクノロジーが生まれています。だから対処すべき問題も前例がないものばかりです。誰も直面したことがない問題に、論理的な解決策を提示していくことが、とてもおもしろかった。
― そのまま弁護士という道を極めていく選択肢もあったかと思います。ビジネスサイドへと移った理由とは?
Facebookの顧問弁護士をやっているうちに、起こった問題に対処するのではなく、あらかじめ問題が起こらないようにできないかと考え始めました。そのためには、外部の顧問弁護士という立場ではなく、社内に入り込んでよりビジネス領域に近い部分から改革を進めなければなりません。そこで出会ったのがYelpでした。法律家の私にも、ビジネス領域の仕事を任せてくれたんです。
― その後GitHubに入社するまで、どんな経緯があったんですか?
2012年ごろ、GitHubは事業をスケールしていくにあたり、外部の資本を取り入れることにしました。すると、法的にクリアしなければならない問題がたくさん出てきます。専門家の力が必要だということで、私に声がかかりました。
創業者たちに会ったとき、GitHubのサービスやカルチャーに強く惹きつけられたのです。そして、自分がこの自由な会社にどんな変革をもたらせるのだろうかと想像すると、とてもわくわくしました。そうして、GitHubへの入社を決意したのです。
(つづく)
▼後編はコチラ
GitHubに入社したアバロス氏は、「元弁護士」という特徴をいかに価値にしていったのか。活躍していったのか。アバロス氏が考える問題解決の本質に迫る。
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