アジアの「美容先進国」として成長を続ける韓国。一方、日本では美容整形が否定的に捉えられることがあるのも事実です。美容外科の背景にある日本と韓国の違いとは。
韓国が「美容整形大国」といわれ始めたのも15年ほど前に、冬ソナなどのドラマ放送がきっかけで起きた「韓流ブーム」到来の時期と重なるのではないかと思います。美容整形のイメージとしては、治療を受ける人や治療行為自体に関してやや否定的に考える人がいるのも事実です。そのため「美容整形大国」という表現も、揶揄(やゆ)する意味合いが強かったでしょう。
しかし、韓国の美容医療はその後も国民の関心の高さと国内需要を基盤に、形成外科(韓国では成形外科)専門医を中心として発展を続け、症例数だけでなく技術面でも、アジアの「美容先進国」として成長しています。
アジアにおける美容外科の歴史は1940年代から日本を中心に始まりました。1966年に開業医を中心とした日本美容整形外科学会が発足し、その後10年以上遅れて形成外科医を中心とした日本整容形成外科研究会が設立されました。しかし、その後も日本の形成外科医は、美容外科に積極的に取り組むことはなく、むしろ一般の人以上に否定的な捉え方をしてきた面があります。
私が東大の形成外科に入局した25年程前でも、美容医療に関心を持つことは御法度のような雰囲気がありました。いずれは美容外科を専攻したいと考えていた私も、表向きは他の医局員の前では公言できない状況でした。その後、徐々に形成外科医の中でも美容外科に対する意識が高まり、今では多くの病院で形成外科と美容外科を併記して標榜しているところが多くなりました。
一方韓国では、形成外科を専攻する医師の大部分が、初めから美容医療の道を志します。もちろん、専門医を取るまでは、総合病院や大学病院で外傷や再建術などの形成外科を修練しますが、その後は真っ先に美容の研修を目指すわけです。
その点、日本では形成外科医の専門医を取得しても、美容外科を己の専攻として選択する医師は、決して多くはありません。正確な統計があるわけではありませんが、日本で美容外科クリニックや美容外科医といっても、形成外科医の比率はまだ少数派でしょう。韓国の形成外科医の大多数が美容外科医となることから比べると、その差は大きいかも知れません。
韓国が美容外科分野で発展してきた背景には、形成外科医の意識も関係していますが、根底に国民の美容に対する関心の高さがあることは言うまでもありません。その需要に対応しようと、形成外科医だけではなく、皮膚科医、眼科医、内科医、外科医、婦人科医さらにはそれ以外の分野の医師まで美容医療に参入し、過当競争が生まれ、形成外科医に関しても飽和状態に近づいているという現状もあるようです。
患者にとっては、リーズナブルで質の高い医療を受けられる可能性がある反面、過剰な競争からくる患者の奪い合い、しいては不必要な治療行為や、安易なカウンセリングによって効果への不満などのトラブルの増加も聞かれます。
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