サイボウズ式:「夫婦がうまくいっていれば、すべてがうまくいく」─2人の時間は、一番お手入れが必要なもの

忙しくても「夫婦デート」の時間をつくる努力は忘れない。
サイボウズ式

「夫婦デートの時間」はもちろん義務ではありません。だからこそ、意識的に時間をつくり大切にする――。 子育てや仕事は頑張って当たり前、そんな風潮の中、あえて仕事や子育ての時間を削ってでも「夫婦デートの時間」を優先するフランス人夫婦のソフィーさんとジョアンさん。

夫婦が共働きであることが普通になっているフランスでは、日本と同様に育児と仕事に追われている女性がたくさんいます。もちろんフランスでも、すべてを両立させるのは大変なこと。それでも「夫婦の仲が良ければすべてがうまくいく」と信じ、マニュアルや他人の意見に流されず優先順位をつけて、うまく時間をコントロールする。

そんなソフィーさんに、夫婦のありかた、家庭と仕事のバランスについて、インタビューしてみました。なぜ「夫婦の時間」を大切にするのか。仕事と家庭の両立、メリハリを大切にするパリジェンヌの言葉には、夫婦が協力して幸せに暮らすためのヒントが溢れていました。

忙しくても「夫婦デート」の時間をつくる努力は忘れない

井田:おふたりは「夫婦デート」をどれくらい実施しているのですか?

ソフィー:週一回は夫婦で夜出かけるようにしています。

井田:必ず、ですか?

ソフィー:はい。二人目が生まれてからは、さらに平日に有休を取って、夫婦二人だけでデートする日を二ヶ月に一度は持つようにもしました。

井田: 定期的に期日を決めて、協力して『夫婦の時間』を作っているのですね。

公共機関に勤務するソフィーさん(36歳:写真右)とメーカーで輸出関連業務をしているジョアンさん(35歳)はフランス人の夫婦。7ヶ月と3歳半の2人の子育てをしながら、共にフルタイムで働いている。産後3ヶ月で仕事に復帰したソフィーさんは、「生活にメリハリを持つこと」と「夫婦の時間を意識的に持つこと」の大切さに気づき、育児をしながらも夫婦デートの時間を優先して捻出することを自らの生活で実践している。
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公共機関に勤務するソフィーさん(36歳:写真右)とメーカーで輸出関連業務をしているジョアンさん(35歳)はフランス人の夫婦。7ヶ月と3歳半の2人の子育てをしながら、共にフルタイムで働いている。産後3ヶ月で仕事に復帰したソフィーさんは、「生活にメリハリを持つこと」と「夫婦の時間を意識的に持つこと」の大切さに気づき、育児をしながらも夫婦デートの時間を優先して捻出することを自らの生活で実践している。

ソフィー: 当然ベビーシッターを雇ったり、両親に預けたりするので、お金や時間がかかりますが、この努力を忘れてはいけないと思っています。

井田: どうしてそこまで「夫婦デートの時間」を、大切にするのでしょうか?

ソフィー:仕事や子育ては、どうしても義務感があるので、頑張ってやりますし、時間も割いていますよね。その点、夫婦間というのは、意識しないと時間が見つけられない。だから、デートの時間を定期的につくることを大切にしています。

井田: たしかに、子育てをしていると夫婦の時間は意識しないとなかなか持つことが難しいですよね。

ソフィー: そうなんです。私は、極端に言うと「夫婦がうまくいっていれば、すべてがうまくいく」と思っているんです!

離婚率が高いフランスだからこそ気づくこと

井田: 愛の国フランスといいますが、離婚率は世界的にみても高いですよね?

ソフィー: そうですね......。私たちの周りにも離婚したカップルはたくさんいます。

井田: どのような原因が多いのでしょうか?

ソフィー: もちろん一概には言えませんが......、仕事も子どももアパートもみんな素敵なのに、夫婦仲が悪くなって離婚してしまうカップルをたくさん見てきました。

井田: そうなんですね。

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ソフィー: そうなると子どもの精神状態にも影響するかもしれませんし、仕事にだって気持ち良く行けないかもしれません。だから私個人としては、一番気をつけて、お手入れしてあげなければいけないのが、夫婦の時間だと考えているんです。

井田: 夫婦仲は家庭の要(かなめ)ということなのですね。

ソフィー: はい。なので、私たちは子どもとの時間と同じくらい、夫婦の時間を大切にしています!

夫婦円満の秘訣「視野を広げる行為は、一緒にする」

井田: では、もし夫婦デートの時間を持たなかったら、どうなると思いますか?

ソフィー: きっと、日常に忙殺されるでしょうね。私は性格的に、仕事と子育てだけでは切り替えがしにくくなって、視野が狭くなってしまうと思います。

井田: 私も子育てをしているので、その気持ち、わかる気がします。

ソフィー: そうなれば、きっと、ナーバスになることもあるし、マイナス面ばかりが気になってしまうかもしれません......。だから、生活にメリハリをつけて、効率よく時間を使った方が、気分転換になると考えています!

井田: 具体的に、二人の時間はどんな風に過ごしているのですか?

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ソフィー: 外食をしたり、映画を観に行ったり、スポーツしたりです。デートという名の文化活動だと思っていて、夫婦で一緒にすることによって、外的刺激を一緒に受けて、お互いにリフレッシュできるんです。

井田: そうした体験は、楽しい話として子どもに聞かせてあげることもできますね。

ソフィー: そうなんです。だから私は『視野を広げる行為は、夫婦一緒にすること』を大切にしています。 どちらか一人が新しい世界を見てしまうと、ズレを生じるようになったりするきっかけになるかもしれませんから......。

子どもを預けることで、バラエティに富んだ教育ができる

井田: 子どもが二人いて、デートに出るということは、子どもを預けるということですよね。経済的には負担になりませんか?

ソフィー: もちろん、多かれ少なかれお金がかかります。フランスは8〜10ユーロくらいがシッターさんの相場ですから、ちょっとした出費なのも事実です。 でも、ここを節約してしまって、夫婦仲が悪くなっては、本末転倒じゃないですか?!

フランスのベビーシッター代は1時間8~10ユーロで、日本円換算では約1,100~1,400円くらいとなる。
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フランスのベビーシッター代は1時間8~10ユーロで、日本円換算では約1,100~1,400円くらいとなる。

ソフィー: それなら、高級レストランやファッションなどにはお金をかけなくても、子育てにお金をかけたほうがいいと思うんです。

私たちは子育てのプロでもないし、子育て本を熟読しているわけでもない。なら、時間を区切って、プロに任せてもいいんじゃないかなと。

井田: 実際、保育園や親と離れている時間で子どもが学ぶことは、とてもたくさんありますよね。

ソフィー: はい。シッターさんが保育士さんではなくても、毎回テーマを決めて子どもと遊んでもらうだけでも、十分バラエティに富んだ教育になると思います。

井田: フランスでは、お友達家族と子どもを預かりあうことも多いですよね。

ソフィー: もちろん、お友達の家族にお願いしたり、親に頼むこともあります。それならお金はかかりませんしね。

井田: 子どもたちにとってもおじいちゃんおばあちゃんやお友達と過ごせるのは、楽しい時間ですもんね!

ソフィー: それと、最近私達がチャレンジしているのは、もっと簡単で「Baby phone」というアプリを使う方法です。子どもが寝静まってから、近くに飲みに行ったりしています。

井田: スマートフォンのアプリですか?!

ソフィー: はい。これは、賛否両論ですけどね。ただ、私たちは家から近くて、子どもが目を覚ましても1〜2分で戻れる距離なら、ちょっと田舎の大きな家の子供部屋とリビングくらいの距離ですから問題ないと考えているんです。

井田: 驚きました......!でも、パリは家の隣りにカフェやレストランがあるので、そういう時間の作り方も可能かもしれませんね。

価値観はそれぞれだからこそ、自分のやり方を見つけたい

井田: お二人は夫婦の時間を上手く作っているように感じますが、苦労していることもありますか?

ソフィー: もちろん、こうした子育ての方法は厳しい批判をもらうこともあります。

井田: それは、どんな時でしょうか?

ソフィー: 例えば、さっきお話したアプリを使って、うちから50mのカフェで食事をしていた時のことです。

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井田: なにがあったのでしょうか?

ソフィー: アプリを使って子供たちを置いてきていると気づいた隣のテーブルのマダムに、ひどく説教されました。「こどもに何かあったら、どうする気?」って。

井田: フランスであっても、誰にでも受け入れられるというわけではないんですね。

ソフィー: 私は、静かな家で深く眠っているほうが、レストランに連れて行かれるより子供にとっても幸せだと思っています。私たちも自由で、特に問題ないと思うんですけど、彼女には理解してもらえなかったんですね......。

井田: そのマダムの気持ちも、わからなくはないですもんね。

ソフィー: そうですね。価値観は、みんな違うし、フランスでも母親世代はまだ休みなく育児していましたから、驚くのも無理はないと思います。

井田: ソフィーさんの母親世代の方の考え方が、もしかすると今の日本には近いかもしれません。

ソフィー: そうなんですか。価値観はそれぞれだからこそ、私は、正解ではなく私は自分のやり方を見つけられればいいと考えています。

井田: 長期のバカンスの時などは、どうしているのですか?

ソフィー: 今回のクリスマスのバカンスは、実家に子どもを預けて1週間、カリブ海の島まで旅行に行く予定を立てました。母には、冗談まじりとはいえ、「子育てしないなら、産む意味ないわね〜」なんて、言われちゃいましたけどね。(笑)

井田: 思い切った決断ですね。

ソフィー: ただ、預けっぱなしというわけでもなくて、週に3回3時間は、実家にベビーシッターが来るように依頼もしています。妹夫婦が、いとこたちを連れて遊びにくる日も調整済みです。

井田: 任せるだけではなく、できる範囲で工夫をするということですね。

ソフィー: はい。それでも、母の時代はこんなことできなかったから、ちょっと羨ましいのかもしれないですね。

壁は二人で乗り越える。周囲の説得は旦那さんの役目

井田: 批判されたり、小言を言われた時は、どのように対処しているのですか?

ソフィー: そんな時はジョアンが周囲を説得してくれることが多くあります。批判を受けることもありますが、デート時間を大切にできるのは、やっぱりジョアンのお陰だと思っています。

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井田: 素敵な夫婦関係ですね。

ソフィー: 実は夫婦デートに積極的なのも、ジョアンの方なんです。

井田: 2人で決めたこと、そのための努力は惜しまないという、旦那さんの存在が大きな支えになっているんですね。

ソフィー: 自分の方が体力があるのがわかっているからでしょうね、同じように仕事を終えて帰って来たら、ドンドン料理や子どもの世話をやってくれるんです。

井田: 日頃から2人で協力して子育てや家事をやっているんですね。

ソフィー: はい。子育てを自分の手でしている実感があるからこそ、子どもを預ける時間をとっても後ろめたさがないのかなと思ってます。

井田: なるほど。最後に、あらためて夫婦間が上手くいく秘訣はなんだと思いますか?

ソフィー: うちは、一人外出などの日で、パートナーに子どもを任せる時にも、相手のやり方に口を出さないルールにしているんです。「相手を信頼する」それだけです。

井田: ありがとうございました。家族になり、一緒にいるのが当たり前だからこそ、「夫婦のデート時間」を大切にし、「メリハリある生活」を心がけることが重要であると、改めて感じることができました!

執筆・撮影 井田純代/企画・編集 永井友里奈

」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2018年1月16日のサイボウズ式掲載記事
より転載しました。