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2018年03月22日 16時51分 JST | 更新 2018年03月22日 17時02分 JST

たった一人の孤独な挑戦が、いずれ周囲を巻き込んだ熱狂を創りだす

「新しい挑戦なんて、最初は社員にはバカにされるんじゃないかと思って…(笑)。みんなが帰ってから作業することもありました」

ウェブを通じて不特定多数の人たちから資金を調達するクラウドファンディングの活用は、数年前に比較すると格段に実施件数が増加し、中には1億円以上を越える資金を調達したプロジェクトもあります。

また、お祭りなどのイベント事、建築物の再建など様々なプロジェクトが立ち上がるようになりました。近年は特に地方の中小企業で目立ってきているように感じます。小さな企業の大きな変化が、クラウドファンディングを通じて起きているのです。

「Makuake」にある数多くの事例の中でも、一人の挑戦が周りの人間を巻き込み、社内の空気を変え、さらにはその地域全体にまでその熱を広げたものがあります。

たった一人で始めた挑戦

クラウドファンディングサービス「Makuake」で大ヒットを記録し、今も人気商品として好評を博している便利グッズがあります。それは、6つの機能を1つに集約した多機能鍵型便利ツール「Key-Quest」(キークエスト)。刃物で有名な岐阜県関市の、プレス加工業・株式会社ツカダによる初の自社製品として、2016年7月から9月までクラウドファンディングを実施。2,377人から7,639,100円の支援を集め、大成功を収めました。

今や、累計販売個数は約15,000個。この、片手の掌にすっぽりと収まるほど小さな便利グッズは、株式会社ツカダの代表取締役を務める塚田浩生さんの、ものづくりに対する大きな熱い想い、地元である「刃物の関市」の誇りが込められていました。

始まりは、他社からの下請け仕事に依存しない自社の新しい事業を作らなければいけない、という会社の代表としての危機感。それまでコンシューマー向けの自社製品など開発したことが無かった塚田さんは、普段の生活で不便なこと、改善したいことなどに自身のアンテナを張り巡らせ、ついに「Key-Quest」を考案。

早速、取引先の地元信用金庫に計画を話してみるも、新規事業という未知の領域に金融機関としては融資判断をしきれず、「クラウドファンディングで市場に需要を問うてみては」と塚田さんに持ちかけたのです。そこで地元信用金庫の営業担当者から紹介されたのが、クラウドファンディング「Makuake」の西日本事業部 事業部長・菊地でした。塚田さんのアイデアと熱意に心打たれ、その熱意とプロダクトの可能性を強く感じた菊地は、1プロジェクトにつき専任担当が1人付く「Makuake」独自のサポート体制において、自らキュレーターを担当することに。

クラウドファンディング開始に向け、塚田さんは慣れないながらもパソコンに向かい、クラウドファンディング実施に向けて商品をアピールするウェブページ作りに取り組みました。女性にも受け入れてもらえるような商品イメージの画像を差し込み、利用シーンも具体的にイメージしやすいよう構成を工夫。菊地も、これまで担当したプロジェクトの知見を元に、次々と塚田さんへ改善策を提案していきました。2人の密なコミュニケーションを通じてブラッシュアップされたページは、商品の魅力を最大限に引き出し、開発に込めた想いがページを通して伝わってくるような仕上がりとなりました。

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※当初、サムネイル予定だった靴下のタグを切る画像(上)は、「Key-Quest」の用途6つが一目でわかる画像(下)へ変更された

並行して進めていた試作品作りでは、細かい角度もこだわり、塚田さん自らステンレス鋼を削って作り上げました。2、30個もの試作品を作ったという塚田さんは「新しい挑戦なんて、最初は社員にはバカにされるんじゃないかと思って...(笑)。みんなが帰ってから作業することもありました」と、当時を照れくさそうに振り返ってくれました。クラウドファンディングの結果は大好評で、無事に商品化を果たした「Key-Quest」は、今や看板商品の一つになっています。

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※Makuakeの西日本事業部 事業部長・菊地(左)、塚田さん(右)

一般販売前にクラウドファンディングを活用し、消費者の需要を証明できたことで、地元信用金庫からの融資や設備投資も決定、大量生産を後押しする複数の販路も決まりました。クラウドファンディング実施時に、「Makuake」の応援コメント欄に寄せられた支援者の声は、より自社製品の開発に誇りを持たせ、次の挑戦に向けた意欲を喚起させるものでした。そして、その他にも嬉しい変化があったと塚田さんは語ります。

「社内の雰囲気が変わったんです。自社製品の第2弾としてクラウドファンディングに挑戦した極薄スマート名刺入れ「KEEP SMART」は、アイデアをスケッチした段階で社員に話しました。すると若手社員が試作品を作ってくれて...。みんなで成功させよう、という雰囲気が社内にできていったんです」

それは、塚田さん自らの手でこっそりと試作品を作り上げていた「Key-Quest」の時には、予想し得なかった光景でした。

予想し得なかった光景が広がっていった

塚田さんは「技術はあるのだから、自分たちで作ることができる。だったら、どんどんアイデアを形にしていけばいい」と、社員に呼びかけました。すると今では、新商品開発を目指す会議体が社内で作られ、複数名の若手社員がアイデアを持ち寄って議論しているのだと言います。また、週に1回、女性社員4名が集まり、「クローバー会議」と題して女性向け商品の開発会議も実施しているのだそう。

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※週1回開催される女性社員4人による「クローバー会議」の様子

さらに、今年2月7日~9日の3日間、東京ビックサイトにて開催された第85回東京インターナショナル ギフト・ショーにも初出展。ブースの設計をはじめ、社員全員が積極的にアイデアを出し合いました。出展ブースのスタッフとして東京へ向かう社員のほとんどが、入社してから初めての出張であり、中には東京へ行くこと自体が初めてだという社員もいたそうです。

その原動力は、想いのこもった自社製品をもっと多くの人々に知ってもらいたいという気持ち。新しい世界へ飛び出していく、イキイキとした社員の様子に、塚田さんは「こんなこと、2年前は考えられなかったことですよ」と、驚きと嬉しさを交えた表情で語りました。

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※第85回東京インターナショナル ギフト・ショーにおける株式会社ツカダ出展の様子

その熱量は、関市内へも拡がってゆく

そして、塚田さんのチャレンジに影響を受けたのは、社員だけではありませんでした。同市で刃物の製造販売を70年以上も続けているニッケン刃物株式会社の熊田さんも、親交の深かった塚田さんの挑戦に背中を押され、クラウドファンディングに初挑戦。日本刀をモチーフにした「名刀ペーパーナイフ」は、なんと3,238人から16,174,200円の支援を集めました。「クラウドファンディング」が何かも知らなかったニッケン刃物株式会社の社員も、支援が伸びるごとにモチベーションが上がり、毎日のように「Makuake」のウェブページを開き、増えていく支援人数を見ては湧き上がっていたのだとか。

熊田さんは「世間に(自分たちの作ったものが)認められたと思えて、嬉しかったですね」と当時を振り返り、今は次の挑戦に向けて着々と準備を進めているそうです。

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※名刀ペーパーナイフ:土方歳三モデル、坂本龍馬モデル、織田信長モデルの3種類を開発した

周囲の人々の熱量を上げて巻き込み、結果として「関市の刃物」を盛り上げて地域活性化に寄与することとなった、たった一人で始めた挑戦。

塚田さんは「同業者にも、"自分たちにも出来るはず。自分のところでできることは何だろう"って、新しい挑戦に興味を持つ人が増えてきたんです。クラウドファンディングへの挑戦を通じて、社内の雰囲気が明るくなりました。でも何より、(変わっていく社員や周囲を見て)僕自身が明るくなったかもしれないですね(笑)」と、にこやかに語ってくれました。

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