国際宇宙ステーションでパン解禁? 「Bake In Space」がオーブンとパン生地を打ち上げ予定

パンは食べるときに細かいパンくずが出てしまうものですが、宇宙ではそのパンくずが命取りに。

国際宇宙ステーション(ISS)の中でパンを焼き、焼きたてのパンを食べられるようにする。そんなプロジェクトBake In Spaceが英国で開催されたUK Space Conferenceで発表されました。

宇宙食というと真空パッケージされたフリーズドライなものを思い浮かべてしまうのですが、最近はだいぶ進化しており、日本食やインスタントラーメンなども用意されているのだとか。しかし、意外なことにパンは持ち込みが禁止されています。

パンは食べるときに細かいパンくずが出てしまうものですが、宇宙ではそのパンくずが命取りに。地上なら手で払えば済んでしまうパンくずも、宇宙ステーションの中では、機器の中に入り込み故障や火災の原因になるとして持ち込みが禁止されているそうです。このため、パンの代わりとしてパンくずが出ないように加工された特別なトルティーヤが使われているとのこと。

▲トルティーヤを使用した「スペースチーズバーガー」(Image: NASA

そんな理由で宇宙では食べられないパンですが、Bake In Spaceではパンくずが出ないようになった特別な生地を使い、ISSの中で焼きたてのパンが食べられるようにすることを目的としています。生地については、すでに地上での実証実験は完了済み。

しかし問題はパンを焼くオーブンのほう。ISSの規約により使用できる電力は250Wまで(一般的なオーブンは1000W~2000W程度)、温度も45℃を超えることができません。とてもパンなど焼けそうにありませんが、そこは宇宙空間。気圧が低ければ水の沸点も下がるので、真空に近い低圧オーブンなら低温でパンを焼くことができるそう。さらに、理屈はよくわかりませんが、この方法だとパンをよりふっくらさせることができるかもしれないそうです。

ちなみに、Bake In Spaceはドイツ航空宇宙センター(DLR)が開催した、宇宙市場に参入するスタートアップを応援するコンテストESA BIC Start-up Challengeで優勝したプロジェクト。このため、焼かれるパンはドイツパンで、パン焼き作業もドイツの宇宙飛行士アレクサンダー・ゲルスト氏が行います。

そこまでして宇宙でパンを焼かなくてもという気がしますが、焼きたてのパンの香りには、宇宙飛行士をリラックスさせ、肉体的・心理的に活力を与える効果が期待されています。たしかにISSのような密閉空間に長期間いることを考えると、せめて食事くらいはおいしいものをと考えたくはなります。そういえば、以前にはISSで使うためのエスプレッソマシーンというのもありました。

ゲルスト氏は2018年5月にISSに入り、6月に実際にパンを焼く作業を行うとのことです。

近い将来、パンとコーヒーの朝食を楽しめる宇宙旅行というのも夢ではないかもしれません。ボロボロになりがちなクロワッサンは難しそうですけど。

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