ロサンゼルスの地下に超高速交通システム計画。イーロン・マスクが語る

課題はトンネルを掘りすすめる「スピード」
Elon Musk speaks at a Boring Company community meeting in Bel Air, Los Angeles, California, U.S. May 17, 2018. REUTERS/Lucy Nicholson
Elon Musk speaks at a Boring Company community meeting in Bel Air, Los Angeles, California, U.S. May 17, 2018. REUTERS/Lucy Nicholson
Lucy Nicholson / Reuters

イーロン・マスクが立ち上げたトンネル掘削会社The Boring Companyはトンネル掘削会社であって、べつに火炎放射器が主力商品というではありません。5月17日に開催されたこの会社の事業説明イベントでは、マスク本人とプロジェクトリーダーのスティーブ・デイビスが、大都市における交通渋滞を緩和するための地下ネットワークづくりについて詳細を明らかにしました。

まず、イーロン・マスクは地下の道路網が、交通渋滞緩和のための唯一の解決策ではないことを認めつつ、Uber Elevateを始めとするドローンタクシーはその騒音と(墜落の)危険性から実現には時間がかかるとの見解を示しました。

そして、The Boring Companyが打ち出している新しい地下交通システムCity Loopのコンセプト動画およびFAQ形式でを紹介し、最終的に都市部のいたるところを結ぶ数百本のトンネルに定員16人のライドを走らせ、たった1ドルの運賃でどこへでも行けるようにするとしました。マスクはイベント前、LAメトロ(地下鉄)との間で会合を持ち、互いにパートナーとして地下トンネル事業を行っていく考えであることを明かしています。

ただ、言うまでもなくこの構想を実現するには、何より先にトンネルが必要です。掘って掘って掘りまくらなければ、いつまでたっても完成には漕ぎ着けません。マスクは、現在のやり方ではカタツムリが這うほどの速度でしかトンネルを掘り進められないという問題を挙げ、これを現在の10倍速(といっても人が歩く速度の1/10程度)までのスピードアップに取り組むようチームに指示したとのこと。

実際のところ、トンネルを掘り進むのが遅いのは機械のせいだけではなく、たとえば掘削機の先端部分に挟まったりする瓦礫を取り除いたり、または掘り進んだあとの壁面や天井を補強するためにコンクリートで固める作業に時間を取られるのも一因となっています。The Boring Companyはこうした問題の解決策立案にも取り組んでいるとしており、掘り出される土や瓦礫を再利用したレンガまたは実物大レゴブロックの販売という、ツイートで公表済みのアイデアにも触れました。

トンネルと並行して準備・開発を進めなければならないのはライドです。SpaceX/テスラが製作したHyperloopの試験用ポッドは約355km/hを達成しています。マスクは都市と都市を結ぶ減圧トンネル内のポッドを約480km/hで走らせる計画。これは都市内を回るライドの最高速度の2倍に達するとのこと。

ただ、速度の達成よりも問題は乗り心地のほうかもしれません。急激な加減速や振動は乗客を不安にするうえ、トンネル内は景色も方向感覚もないため、乗り物酔いを引き起こす可能性も考えなければなりません。

まだまだ道半ばといった感じですが、利用する立場で考えてみればドローンタクシーと地下トンネルの高速ライドなら、まだ地下に降りるほうが安全に感じられそう。もし安全性が担保されるならば、裕福な人はドローンタクシーで空を飛び、庶民は1ドルで地下に潜るようになるのかもしれません。

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