自動運転で死亡のテスラオーナー、DVD鑑賞中だった可能性。トラック運転手が証言。側面からの衝突検知も機能せず

大破したModel Sに駆けつけたトラックのドライバーは車の中からDVDプレーヤーが再生する映画の音が聞こえたと証言しています。

5月7日に発生した"自動運転初の死亡事故"で、死亡したジョシュア・ブラウン氏のテスラ Model S車内からDVDプレーヤーが再生中の音が聞こえていたと、事故当事者のトラック運転手が証言しています。テスラ Model Sが備える半自動運転モードはベータ版の扱いであり、ドライバーはきちんとハンドルを握り、前方を注視していなければなりません。

テスラは2015年10月14日、OTAアップデートでModel Sのソフトウェアバージョン7.0を提供しました。このソフトウェアには初めて半自動運転モードが搭載されており、ドライバーはハンドルに手を載せておけば"ほぼ"自動で道路を走行することが可能となりました。

事故はフロリダ州ウィリンストンにほど近い、中央分離帯のある幹線道路で発生しました。事故を起こした半自動運転モードのテスラ Model Sは、前方で車線変更したトレーラーを感知できずに接近を続け、トレーラーの側面からコンテナ部の下に巻き込まれる格好で衝突しました。そしてトレーラーに踏みつけられながら向きを変えた電気自動車はふたつのフェンスを突き破り、道路そばの民家の電柱に激突したのち停止しました。

この事故によってModel Sはフロントガラスからルーフ、トランクリッドに至るまでをねじり切られるように大破し、搭乗していたジョシュア・ブラウン氏は死亡しています。

7月1日になって米国道路交通安全局(NHTSA)が公表したこの事故は、"自動運転初の死亡事故"として瞬く間に世界中の話題となりました。

推測される事故の原因は、Model Sの自動運転用センサーが強い日差しとトレーラーの白い車体を識別できず減速しなかったためとされます。

ただ、その後フロリダ州のハイウェイパトロールは車内からポータブルDVDプレーヤーがみつかったと発表しました。中に入っていたのは映画『ハリー・ポッター』で、大破したModel Sに駆けつけたトラックのドライバーは車の中からDVDプレーヤーが再生する映画の音が聞こえたと証言しています。

日本では、ドライバーは運転中にテレビなどを視聴できません。これは事故の発生したフロリダ州でも同じこと。しかし、ブラウン氏が住むオハイオ州ではこうした決まりはない模様で、Model Sの半自動運転モードを過信してしまったブラウン氏が日常的に車内でDVD鑑賞をしていた可能性も無いとは言い切れません。

事故の発生によって自動運転車に対する法規制の強化なども取り沙汰される一方で、こうしたドライバーの不安全行為も事故発生原因の一つになった可能性がありそうです。

前方監視カメラが眩しさのあまりトラックを見失ったという説明はまだ納得できるものの「360°感知できる12の長距離超音波センサー」と「高精度のデジタル制御式電動ブレーキ アシスト システム」が正常に機能していたのかも気になるところです。

テスラにセンサー技術を提供するMobileyeは「今日の衝突回避支援システム、自動ブレーキシステムは、前方に位置する車や物体に対して機能するよう設計されているが、側面からの衝突は考慮していない」とコメントしています。とすると、360度感知するというセンサーは衝突回避には使われていないことになります。

テスラは、今回の事故が天候とトラックの色が問題だったことを強調しつつ、2018年までに今回のような事故を回避可能なシステムを開発するとしています。またMobileyeのコメントに対しては「テスラは独自技術と他社技術を融合したセンサーを使用しており、Model Sでは2016年1月から全方位を監視できるようになっている」と反論しました。

なお、現時点でテスラオーナー諸氏が気をつけなければならないことは、通常運転時、半自動運転時にかかわらず「きちんとハンドルを握り、前後左右を確認して、前方の車に近づいたら減速する」という、ドライバーにとってあたりまえのことだけです。

[Images : Tesla Motors, Reuters]

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