アメリカで、中絶薬が郵送でも入手可能になる。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は12月16日、経口中絶薬「ミフェプリストン」の規制の一部撤廃を発表。
今後は直接医師の診療を受けなくても、認可された薬局でミフェプリストンを処方してもらえるようになる。
共同通信によると、日本でもイギリスの製薬会社ラインファーマがミフェプリストンの製造販売承認を厚生労働省に申請する方針を固めている。
日本では手術による中絶が主流で、承認されれば、国内で初めて飲む中絶薬が選択できるようになる。
ミフェプリストンとは?
ミフェプリストンは、妊娠が継続するために必要なホルモン「プロゲステロン」をブロックする薬だ。ミソプロストールという別の薬と併用することで、初期(約10週間)の妊娠の中絶が可能になる。
ミフェプリストンは中絶薬として広く使われてきた一方で、FDAはこの薬を「リスク評価・緩和戦略(REMS)」と呼ばれるプログラムで30年近く規制してきた。
これまでは、提供できるのは認可された処方者のみ、処方される前に患者は同意書類にサインしなければならない、薬局で販売してはならない(直接処方されなければいけない)という3つの規制があった。
FDAは、このうち最後の「直接処方されなければいけない」という規制を解除。
これにより、今後はクリニックや診療所、病院などで直接診療を受けなくても、認可を受けた薬局を通して郵送でも処方してもらえるようになった。
郵送で受け取った人は、電話やビデオ電話などの遠隔診療で、薬の説明を受けられる。
新型コロナウイルスの影響で、バイデン政権はこの直接処方の規制を一時的に停止させ、郵送による処方も可能にしていたが、今回のFDAの決定で今後は永久に郵送での入手が可能になる。
人権団体や中絶の権利団体が歓迎
今回の規制緩和は、アメリカ自由人権協会(ACLU)が2月に連邦裁判所に提起した訴訟を受けて決定された。
ACLUのジョージアン・ウソワ氏は「直接診療の規制を永久に撤廃したFDAの決定は大きな一歩です。多くの患者が、交通費をかけずに遅れることなく、安全にこの時間的な制約がある薬を入手しやすくなります」と歓迎する。
また「クリニックから遠く離れた場所に住む人から、プライバシーを守りながら自宅で入手したいという人まで、中絶患者や流産患者にとっての大きな安心となります」とも述べる。
その一方で、ACLUやその他の中絶の権利擁護団体は、FDAがすべての規制を撤廃しなかったことに対する不満も表明している。
中絶の権利擁護団体の「オール・アボーヴ・オール」のデスティニー・ロペス氏は「今日の決定は、(中絶薬を)必要とする人たちにとって非常に大きな役割を果たしましたが、まだ障害は残っています。すべてを撤廃する必要があります」と語った。
また、望む人すべてが入手できるわけでもない。アメリカでは南部の州を中心に、中絶の権利を厳しく規制する法律が次々と制定されており、少なくとも19の州が、中絶のための遠隔診療を禁止している。
また、テキサス州とその他3つの州は、中絶薬の郵送を違法としている。