2019年12月19日 13時15分 JST | 更新 2019年12月19日 13時15分 JST

年間約2,500人が発症する小児がん。子どもたちが抱える切実な悩みとは

治療後も残る影響…広がる支援のカタチに迫る

年間2,000~2,500人が国内で発症するといわれる小児がん。抗がん剤の副作用などのつらさはある程度想像できても、後遺症による発育への影響など、治療後もさまざまな課題が残ることはあまり知られていない。

小児がんの子どもたちや家族にどんなサポートができるのか。それを長年模索し続けている企業がある。「小児がんは、大人のがんに比べて症例が少ない。そのため治療技術が進みにくく、世間の認知度も低いが、まずは多くの人に実態を知ってほしい」と担当者は話す。

■子どもたちが自然な笑顔に。アヒルが気持ちを代弁

「アヒルが、私たちも聞いたことがない声で鳴いたんです」アフラック社会公共活動推進室長の辻田毅さんは、アヒル型ロボット「My Special Aflac Duck」を贈った小児がんの子どもたちに会うため、都内の病院を訪ねた時の驚きをこう語る。 

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小児がんの子どもたちに贈ったアヒル型ロボット「My Special Aflac Duck(マイ スペシャル アフラック ダック)」を抱える、アフラック社会公共活動推進室長の辻田毅(つじた・たけし)さん

このアヒルは、人とのコミュニケーションに応じて何百パターンもの鳴き声を出したり、動いたりするよう作られている。

病院では子どもたちがそれぞれ、自分のアヒルをなでたり抱きしめたりすると、アヒルは辻田さんの知らない鳴き声を出し、見たこともない動きを見せた。

「担当者として使い方は熟知したつもりでいましたが、子どもたちは私以上に親しんでくれていて感動しました」と辻田さんは笑顔で話す。「『このアヒルが来てから、子どもの自然な笑顔がすごく多くなりました』そんな患児のお母さんからの一言が、何よりも嬉しかったです」

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米国アフラックのCEOから、アヒル型ロボット「My Special Aflac Duck」を受け取る子どもたち

アヒルには、闘病中に医師や看護師などの大人たちに囲まれ感情を抑えがちな子どもたちに代わって、笑ったり泣いたりする機能が備わっている。「楽しい」「悲しい」など自分の気持ちに合ったバッジをアヒルの胸にかざすと、鳴き声や動きでそれを表現してくれるのだ。

「周囲の大人たちも、アヒルの様子から子どもの気持ちをくみ取れることもあるのではないでしょうか」と、辻田さんは話した。

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「楽しい」「悲しい」など気分に合ったバッジをアヒルの胸にかざすと、鳴き声や動きでそれを表現してくれるアヒル型ロボット「My Special Aflac Duck」。取材中も、さまざまな鳴き声で場を和ませてくれた

■きっかけは、10歳の男の子からの手紙

アヒル型ロボットが日本の子どもたちに届けられたのは、ある10歳の男の子からの働きかけがきっかけだった。彼自身も3歳で小児がんを発症している。

米国のアフラックが、ロボットの開発を手掛けるスタートアップ企業と共同で小児がん患児のためにアヒル型ロボットを開発し、米国内ではすでに5,000羽以上が患児へ贈られている。男の子は、インターネットを通じてこのアヒルを知り、アフラックに「治療を頑張っている日本の子どもたちにも、ぜひ贈ってください」と、手紙を出した。

この手紙がきっかけとなり、2019年5月に日本大学医学部附属板橋病院の小児科にアヒル型ロボットが届けられた。アフラックは希望する全国の病院にアヒルを順次届けていて、その数は累計300羽ほど。今後も、さらに多くを贈る計画だという。

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アヒル型ロボット「My Special Aflac Duck」を贈られた子どもたち。贈呈式にて

■世間の知らない小児がんの影響

小児がんは一般的に15歳未満の子どもに起こるがんの総称で、血液のがんである白血病や、脳腫瘍などが多い。年間約100万人近い国内のがん発症者の中で、小児がん患者の占める割合は1%にすら満たず治療技術が進みにくいのが実情だ。

治癒率は7~8割と比較的高いが、腫瘍そのものや放射線、抗がん剤治療などの影響で、治療後も「晩期合併症」が残ることが多い。子どもによって、体力の低下、内臓や呼吸器に障害が出るなど影響はさまざまだ。

「学校に戻っても、運動会や外遊び、修学旅行などでの配慮が必要になる場合が多い。このため大人のがん以上に、友人や先生、地域住民など周囲の理解とサポートが大切なんです」(辻田さん)

■小児がんを社会課題に 

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ゴールドリボンウオーキングの様子

 アフラックは、小児がん啓発を目的とした「ゴールドリボン運動」への支援の一環として、「ゴールドリボンウオーキング」というイベントに特別協賛している。

同社社会公共活動推進室の伊藤春香課長は「小児がんを社会課題として認知してもらうため、出発式では、小児がん経験者の方に自身の闘病や思いについて語っていただいています。多くの方々がこのイベントに参加することで、小児がん支援が広がれば」と話す。

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アフラック社会公共活動推進室課長の伊藤春香(いとう・はるか)さん

第1回の2007年に約1,000人だった参加者数は、2019年には約4,200人にまで増えた。同社社員も多数参加しており、近年は、東京をはじめ、大阪や福岡でも開催されている。

■広がる小児がん支援の取り組み

小児がんに対して、近年、国や研究機関にも新たな動きが見られる。厚生労働省は小児がん患者の実態を把握するための全国調査を実施し、2019年度中に結果をまとめる。また、2019年10月には、ある研究機関が39歳以下のがんについて、初となる全国規模の調査結果をまとめた。厚労省が定める「がん対策推進基本計画(第三期)」にも、小児がん対策が明記されている。

「2006年にがん対策基本法ができて以降、がんに関するさまざまな課題への認知が進み、年々、小児がん患児への支援の輪も広がってきたと感じます」と、伊藤さんは明るい表情を見せた。

伊藤さんと辻田さんは、小児がん支援に取り組む思いをこのように続けた。「小児がんに関する正しい理解が進むこと、そして、子どもたちをみんなで見守り、受け入れ、共に生きていく社会をつくることが、最大の支援です」

(取材・文:有馬知子 写真:村田光司)