PRESENTED BY ベネッセホールディングス

子どものウェルビーイングには「居場所」や「自己決定」が重要。石川善樹さんらが語ったポイントとは?

ウェルビーイングとは? 今、注目される理由とは? 1400組を超える申し込みのあった人気フォーラムをレポート。

新たな社会のキーワードとして「ウェルビーイング(Well-being)」に注目が集まる今。対話を通じて子どものウェルビーイングを考えていく活動を始めたのが、2022年末に「ベネッセ ウェルビーイングLab」を設立したベネッセだ。そもそもウェルビーイングとは? そして子どものウェルビーイングに重要なこととは? ベネッセが主催し、ウェルビーイング研究の第一人者、石川善樹さんらが登壇したフォーラムの様子をレポートする。

右から、公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事の石川善樹さん、ベネッセホールディングス常務執行役員兼ベネッセ ウェルビーイングLab所⻑の岡田晴奈さん、特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さん
右から、公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事の石川善樹さん、ベネッセホールディングス常務執行役員兼ベネッセ ウェルビーイングLab所⻑の岡田晴奈さん、特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さん

ウェルビーイングとは?

「ウェルビーイング(Well-being)」は、「well(よい)」と「being(状態)」からなる言葉。「個人や社会のよい状態」などと表現されることが多い。石川善樹さんによると、ウェルビーイングは「客観」と「主観」の2軸に分けられる。

客観的ウェルビーイングとは、教育を受けることができ、健康で、資産形成ができているような状態。一方、主観的ウェルビーイングは、各人の生活満足度を示す。

昨今、特に重視されているのが主観的ウェルビーイングだ。その背景として、石川さんは内閣府の世論調査を紹介。「今後、家庭の生活が『良くなる』」と思っている割合は、1968年には35%ほど。しかし、21世紀以降は7〜10%程度にまで低下している。

日本は世界4位に転落はしたものの、いまだトップレベルの経済規模を誇る。平均寿命も長い「豊かな国」とされ、客観的ウェルビーイングは高いはずだ。にもかかわらず、日本国民の主観的ウェルビーイングは低い。このような状況を受けて、ウェルビーイングは現代社会の課題として岸田首相の所信表明演説などでも言及されている。

子どものウェルビーイングと「居場所」

そのような社会の中で、次世代を担う「子どもたちのウェルビーイング」にも注目が集まっている。石川さんによると、子どもの主観的ウェルビーイングの重要な要素の一つが「居場所」だ。

石川善樹さん
石川善樹さん

居場所とは、自分の部屋や家庭、学校、地域、インターネット空間も含めてほっとできる場所や居心地のよい場所をさす。それらが多いほど、子どもたちの生活満足感が高まり、自己肯定感、チャレンジ精神、社会貢献意欲などにもポジティブな影響を与えるという(「子供・若者の意識に関する調査」令和元年度 内閣府より)。

「自分らしくあるための居場所があること。一方であまりにも居心地が良すぎる場所をつくらないことが重要です。他での居心地を悪いと感じ、一つの場所に執着してしまうからです」(石川さん)

さらに石川さんは、子どものウェルビーイングを取り巻く課題として、放課後の体験格差や、育児に翻弄されてストレスを抱える乳幼児のお母さんのウェルビーイングなども指摘し、こう続けた。「主観的ウェルビーイングが大切とされる社会の中で、子どものウェルビーイングを社会全体でどう支えていくか。とても大きなテーマです」

ベネッセ×パパママ「対話」で聞かれた声

ベネッセグループは「よく生きる」を企業哲学として追求してきた
ベネッセグループは「よく生きる」を企業哲学として追求してきた

企業として30年以上ウェルビーイングを重視してきたのが、ベネッセだ。第二パートでは、「ベネッセ ウェルビーイングLab」の活動を所長の岡田晴奈さんが紹介。

そもそも「ベネッセ(Benesse)」とは、ラテン語の「bene(よく)」「esse(生きる)」を組み合わせた造語で、英語では「Well-being(ウェルビーイング)」。人の一生における社会課題解決をミッションとして、妊娠出産時の情報を提供する「たまひよ」から、シニア層を対象とする介護事業まで、ベネッセはこれまでもそれぞれのライフステージにおけるウェルビーイングを支援してきた。

「ベネッセ ウェルビーイングLab」は、今という時代における一人ひとりのウェルビーイングや幸せに貢献したい、という思いで2022年12月に設立された。その活動の中では「多様性」「対話」を重視し、「子どものウェルビーイング」というテーマに対しても、子どものパパママへのヒアリングやワークショップを重ねながら活動の方向性を探ってきた。

その中で特に聞かれたのは「子どもの考える幸せと、親の考える幸せは違う」「大人が、子どもの幸せを勝手に定義していないか?」「子どもの声をもっと聞けるように」「子どもだけではなく、親もウェルビーイングを意識することが大切」といった声。今回のフォーラムは、そんな声に応え、共にウェルビーイングを学び・考えるために実施された。

「子どものウェルビーイングをテーマに対話した時間の中で、さまざまな気づきがあがりました。幸福度が高いオランダや北欧では、幼い頃から考える癖をつけることが重要視され、子どもの自己決定が尊重されているといいます。『子どもの声を本当に聞けているのかな?』というパパママの声が多くありましたが、自分自身の反省も含めて、子どもの考える機会を奪ってしまっていないか?と考えさせられます」(岡田さん)

子どものウェルビーイングを考えることは、親や家族のウェルビーイングを考えることにもつながります。さらには、(家庭だけではなく)学校や塾、放課後の時間での先生や大人、そして地域の人々とのつながりの中で、安心できる時間や空間があることが大切。周りの大人が子どもを信じて見守る中で、その子らしさが育っていく。そういう世界が、どんどん広がっていくといいなと感じています」岡田さんは、そう締め括った。

「小1の壁」「小4の壁」もある中で、子どもたちの放課後の課題

続いて、放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さんが、子どもの放課後の課題やアフタースクールの活動を解説した。

まず紹介されたのは、「約7割の小学生は、放課後に友達と遊ぶ回数が週1回以下」という驚きの調査結果だ。平岩さんは、楽しい放課後を象徴する「時間」「空間」「仲間」という「3間(サンマ)」が失われていることを指摘。

さらに、「小1の壁」「小4の壁」と言われるような保護者を悩ませる社会問題がある中で、子どもたちにとって放課後の居場所となる学童保育の数や質の課題、経済や地域による体験格差などを説明した。そのような課題を解決すべく、平岩さんはアフタースクールの活動を2009年に始動。

その活動で得た知見の一つが、「子どもの居場所の4つのキーワード」だ。4つのキーワードとは、あなた自身が素晴らしい存在だと伝える「①ありのまま」。自分で選んで決めることができる「②自己決定」。誰かに貢献することで自分が好きになるという「③人への貢献」。さらに、つながりの中でその子を信頼し共に歩む「④伴走者」の存在。これらを大切にしながら、放課後だけではなく学校や家庭でも、単なる場所としての居場所ではなく、人とのかかわりにおける「質」を高めていくことの重要性を語った。

子どもの感情はどう動いている? 観察してみよう

続いて、行われたディスカッション。石川さんはまず、ウェルビーイング研究の重要なキーワードとして「健全な多重人格」を解説。人は24時間365日、「〜社の〜さん」といった首尾一貫した自己だと、つらくなってくるもの。仕事などで活躍する「何者かである自分」と、学生時代の仲間などと過ごす「何者でもない自分」。いろんなバリエーションの自分でいられることが重要であると教えてくれた。

子どもについても同様だ。「学校で活躍できていないけれど、放課後に活躍できている」状況は、長い目で見ると、「どこかに居場所がある」というポジティブな考えにつながる可能性を指摘。「逆にどこへ行っても活躍できている子どもは、挫折した時の回復力が身につかない可能性もあります」と続けた。

「子どもの自己肯定感を伸ばすために、親が家庭でできることは?」という質問に。平岩さんは「子どもが外で活躍しようがしまいが、あなたは唯一無二の存在だと伝えてあげることが大切では」と答えた。

「不登校も増える中で、子どもたちを受け入れるために、学校はどのように変わればいい?」という質問には、岡田さんが次のように回答。「コロナ禍でデジタル化が進み、国際学力調査のPISAでも日本の学力は高いなど、前提として日本の学校や教育はすごく頑張っている。学校の先生方の多忙さも社会課題となっている中で、これ以上何かをしていくというより、学校でしか学べないことや『学びの本質』について、みんなで考え、合意をとっていくタイミングがきているように感じます」平岩さんは「もう少し先生が自由裁量でやれる余白を増やしていくことが、子どもと先生の幸せにつながるのではないでしょうか」と続けた。

最後に石川さんは、「ウェルビーイングが主観のエリアに入ってきたことで、自分も『多様すぎてわからない』と感じている」と前置きしたうえで、次のように指摘した。「重要なのは、自分がよかれと思ったことが相手によってはストレスになることもある、と知ること。人との違い、多様性を学ぶ時代です。ゲーム一つとっても、色々なゲームをどんどん変えながら遊ぶことを楽しむ子、一つのゲームをずっとやり続けるのが好きな子と、その子どもによって取り組み方は大きく異なります。表面で判断するのではなく、どう物事に取り組み、そこでどう感情が動いているか、じっと子どもを観察することからウェルビーイングは始まると思います

ウェルビーイングに一つの答えはないけど…

ウェルビーイングの概念や実践について、広く議論されたこのフォーラム。視聴者からは、「親である自分自身のウェルビーイングにも目を向けることが大切だと気付けました」「子どもにとっての幸せとは何だろう、と考え直すきっかけとなりました」などのコメントが多数寄せられた。

「ベネッセ ウェルビーイングLab」は、ウェルビーイングを応援する独自のコミュニケーションアプリなども公開している。今後も多様な意見を聞きながら、ウェブサイトやSNSなどでの発信を通して、ウェルビーイングを深め、可能性をひろげる活動を続けていくという。

コロナ禍を経て、心身の健康を保ちながら生きることを大切にする人は確実に増えている。政策や経営課題としてもウェルビーイングが注目される中、子どもから高齢者まで、一生を通じたウェルビーイングを高める活動には、大きな意味があるはずだ。多様な人々のウェルビーイングに一つの答えはないが、対話や学びの中でウェルビーイングを意識し、考えることがその一歩になるのだろう。

「ベネッセ ウェルビーイングLab」活動の詳細や最新情報はこちら

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