PRESENTED BY 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

人々のつながりを新しいカタチで示す、医療啓発×デジタルアートの可能性。

病気に苦しむ患者さんのために希望の光を灯す。

提供:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

(左から)NFTメタバース事業を行うAnifie Inc.代表 岩崎洋平氏。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授で、アトピーや乾癬が専門の大塚篤司先生。
(左から)NFTメタバース事業を行うAnifie Inc.代表 岩崎洋平氏。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授で、アトピーや乾癬が専門の大塚篤司先生。

皮膚疾患の一種・膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)の患者さんが直面している、病気の痛みや孤独、恐怖に光を当て、社会に啓発、そして患者さんをサポートするプロジェクト「Illuminate Tomorrow」。2023年2月28日の「Rare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、以下:RDD)」にあたり、プロジェクトに参画した皮膚科医の大塚篤司先生、デジタルアート制作を担当したAnifie Inc.代表・岩崎洋平氏にお話を聞きました。

―「膿疱性乾癬」とはどのような病気でしょうか。

大塚篤司先生(以下、大塚):
膿疱性乾癬は、乾癬という皮膚の病気の一種です。乾癬自体は日本で約43万~56万人 1) くらい患者さんがいるといわれていて、皮膚科医も日常的に接することの多い病気です。ところが乾癬の中にもいろいろな種類があり、膿疱性乾癬は乾癬患者全体の約1% 2)と、非常に割合の少ないものです。

乾癬の症状は皮膚に慢性的に現れるものが主です。一方、膿疱性乾癬では全身に赤い発疹が出て、その上に膿を持った膿疱が出現します。これに加えて熱やだるさといった全身症状も同時に現れます。治療するとある程度症状は治まるのですが、何かのタイミングでまた症状が出て、それが繰り返し起こるという病気です。

皮膚の症状と同時に高熱や関節痛に苦しんで入院される方も多く、生活や仕事を普段通りにすることは難しいです。適切な初期治療が行われなかった場合には呼吸器障害が起きたり、全身の循環状態が悪化したりして、生命にかかわることもあります。

近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授 大塚篤司先生
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授 大塚篤司先生

—膿疱性乾癬の患者さんが抱える苦しみとは、どのようなものでしょうか。

大塚:
膿疱性乾癬はQOLに非常に大きな影を落とす病気です。患者さんは症状そのものだけでなく、不安や恐怖など精神的な面でも苦しみを抱えています。

まず、主症状としての「痛み」。関節の痛みもありますし、体にむくみが出るときも痛みを伴います。「膿疱」は全身に出る膿疱によって大切な皮膚がただれていく症状の苦しみを示しています。皮膚の症状とともに、何日も高熱(「発熱」)が続くこともあります。(詳細はこちらをご覧ください。:https://www.gpphiroba.jp/

また、膿疱性乾癬は特定医療費助成の対象となる難病ですが、助成を受けている患者さんは2,058人と大変少なく 3)、大学病院の皮膚科医でも、膿疱性乾癬の患者さんを診るのは年に一人、二人です。同じ病気で苦しんでいる方と出会って声を聞いたり、励まし合ったりする機会を得られる方はほとんどいません。この「孤独」は計り知れないものがあります。

そして、この病気は一度症状がおさまったと思っても、また次にいつ症状が出るかわかりません。今は元気そうでも、あんなにひどい状態がまたいつ訪れるのか、という不安を抱えながら生活している方もいらっしゃいます。(「恐怖」)

Illuminate Tomorrow 患者さんの声から作成したデジタルアート
Illuminate Tomorrow 患者さんの声から作成したデジタルアート

—岩崎さんは、膿疱性乾癬のことは今回のプロジェクトで初めて見聞きしたのではないでしょうか。

岩崎洋平氏(以下、岩崎):
はい、初めて知りました。個人的なことではありますが、私自身、アトピー性皮膚炎を患って、皮膚のことでは非常に悩んでいた経験があります。自分の苦しみも思い出しながら、なんとか、少しでも助けになるようなことができたらいいな、と思いましたね。

病気に苦しみながら、孤独や恐怖で「暗闇の中にいる」と感じている方に対して、「同じような思いを抱えている人に出会えるのではないか」といった道筋や希望を示すようなコミュニケーションをアートで表現したいと考えました。

Anifie Inc.代表・岩崎洋平氏
Anifie Inc.代表・岩崎洋平氏

—患者さんの苦しみをアートで表現することの意義をどのように捉えていますか。

岩崎:
私は、アートでしかコミュニケーションできないものがある、と考えています。たとえば、苦しんでいる友人のそばにいるとき、「がんばれ」と直接的に声をかけることで、かえって傷つけてしまうというジレンマがあります。私自身、そういう場面では黙って横にいて、ただ友人の声を聞いていることを選びます。

では、今すぐその友人のところに行けないときはどうするか。「あなたのことを思っています」と伝えるにも、テキストメッセージで当たり障りのないことを書き送るのか、それとももっといい方法はないのだろうか——そんなときアートならば、相手に対して負荷になりにくい形で、気持ちを伝えられるのではないかと思うのです。

優れたアートはかっこいい、美しいという以上に、見る者に訴えかけるコミュニケーションの力を持っています。患者さんの苦しみに寄り添うというテーマに対して、アートを介してコミュニケーションを創出できたことは、私たちチームにとっても素晴らしい経験になりました。

—大塚先生は、医療者として、疾患啓発がデジタルアートで表現されてどう感じましたか。

大塚:
『Illuminate Tomorrow』の世界を初めて見たときには、とても美しく表現された世界観が印象的でした。

岩崎さんはじめチームの皆さんの、患者さんを一番大切にするという気遣いがとてもよく伝わってきます。その上で、参加する人に対しても、美しい世界観で感銘を与えたり、遊び心で参加意識を促したりする工夫が施されている。今回、初めて医療啓発とアートが良い形で結びついたプロジェクトになったと感じました。

—『Illuminate Tomorrow』の世界はNFTで保存されます。このことの意義についてはどう考えていますか。

岩崎:
今回、参加者の皆さんが置いたランタンで明るく照らされたWEBの世界は、参加者のコメントや参加時間などの情報を集約化させた「NFT」の形にされ、永遠に残るかたちで保存されます。

これは、たとえて言うなら『Illuminate Tomorrow』という広場にいつ、誰が集まってきてどんなランタンとメッセージを置いていったか、という記録です。これを書き換え不可能な「NFT」にすることで、信頼できる情報としてずっと残されていくということに意味があると考えています。

大塚:
これだけの人が集まってきてくれて、つながろう、応援しようと思ってくれた気持ちが、こうして形になって残っていくわけですね。みんなの思いを詰めたタイムカプセルみたいですね。

今後の運営にもよると思いますが、これを見た患者さんがまた書き込みをしたり、10年後、20年後に振り返ってみたときに、膿疱性乾癬の治療や認知の発展の道筋を辿ったりできるようになるといいなと思います。

岩崎:
暗闇の中にいる患者さんが、ここに来ることで光や温かみを感じてくださる場になっているといいなと思います。大塚先生がおっしゃるように、進んできた道のりを確認できる場所にもなっていてほしいです。

—医療啓発のような社会課題と、デジタルアートを組み合わせることへの展望をお聞かせください。

大塚:
私が参画している医療啓発活動では、以前は一般公開市民講座を開催し、対面で患者さんたちとお話ししていました。コロナ禍になってからはオンラインイベントになりましたが、それによって遠方、体調などの面でお会いするのが難しかった方が参加できるようになりました。「つながる」方法が一歩進んだわけです。さらにNFTを使うことで、「つながり」がもう一歩先に進める感覚がありますね。

岩崎:
今回テーマとなった、膿疱性乾癬の患者さんの苦しみのような、非常に難しい社会課題に対峙して解決策を打ち出していくにあたっては、「人々の力」が非常に大切だと考えています。

大塚先生のような専門家、社会に影響力のあるインフルエンサー、家族や友人など患者さんに近い人、そして今回ランタンを灯してくださったような一般の方々など、いろいろなステークホルダーの方々が協力し合って向かっていくことが、課題を解決するには欠かせません。

NFTやメタバースの技術は、人々のつながりやコミュニティをつくっていく上で、大きな推進力となり得ると私は考えています。まだまだ新しい技術であり、その活用は未知の可能性にあふれていますし、そこに集う人々の熱量も高く、つながりの強さを感じやすい特性があります。

大塚:
リアルでつながることができたらベストなのだとは思うのですが、医療啓発の場面では直接お会いすることができないことも多々あります。今まで手が届かなかった患者さんとコミュニケーションする手段として、オンラインコミュニケーションのさらに先を行くNFTやメタバースには期待しています。どんなことができるのか、これからも岩崎さんはじめデジタルアートの領域の皆さんとアイデアを出し合って、楽しい医療啓発コミュニケーションを考えていきたいですね。

1)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015; 5: e006450., 照井正, ほか. 臨床医薬. 2014; 30: 279-85. より
2)照井正, ほか. 臨床医薬. 2014; 30: 279-85.
3)難病情報センター.特定医療費(指定難病)受給者証所持者. https://www.nanbyou.or.jp/entry/5354

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