新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年04月23日 13時16分 JST | 更新 2020年04月24日 09時16分 JST

「どうか忘れないで」新型コロナで危機に、ブラジル人学校の今。不要になったら切られる...外国人労働者の子どもたちにしわ寄せ

新型コロナは、外国人の子どもたちの教育にも影響を及ぼしている。ブラジル人学校の運営者は「どうか多様な住民がいることを忘れないでほしい」と訴える。

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「エスコーラ・ネクター」の子どもたち

新型コロナが、外国人の子どもたちの教育にも影を落としている。

愛知県豊田市のブラジル人学校では、新型コロナの影響で保護者の休職や雇い止めが相次いでいる。運営は月謝のみで成り立っているため、学校側は「長期化すれば、月謝が払えなくなる家庭が出てくるのでは」と経営継続への危機感を募らせる。

また、休校措置によって子どもたちの学習の遅れが全国的に懸念されるなか、外国人の子どもは両親から家庭学習の支援を得られないことが多く、事態はより深刻だ。

リーマンショック時には、月謝を払えず退学する子どもも。再び「いつ起きてもおかしくない状況」

NPO法人希望の光
ブラジル人学校「エスコーラ・ネクター」

東京に次いで、外国人労働者が全国で2番目に多い愛知県。豊田市はブラジル人住民が約7,000人と最も多く、ほとんどが自動車産業を中心とした製造業の工場などで働く非正規労働者だ。1990年の入管法改正によって日系人の無期限就労が可能になったことを契機に、日系ブラジルが急増した。

同市のブラジル人学校「エスコーラ・ネクター」は、そんなブラジル人労働者の子どもたちが通う全校生徒20人の小規模校だ。6歳から18歳までの児童・生徒が学んでいる。日本語がハードルとなり、日本の学校の授業についていけない子どもたちの受け皿となってきた。

NPO法人希望の光
ブラジル人学校「エスコーラ・ネクター」の子ども

子ども一人あたり約3万から5万の月謝のみを頼りに運営をする同校。愛知県で緊急事態宣言が出された4月10日頃から、保護者の休職や雇い止めが発生し始め、今後の運営が危ぶまれている。

「エスコーラ・ネクター」の運営をする山家ヤスエさんは「ほとんどの保護者が、派遣労働者で『不要になったら切られる』という不安定な立場で働いています。リーマンショック時には生活苦から月謝が払えなくなり、公立の学校に転校してしまう子どもたちがいました。今のところ、まだそういった事態は起きていませんが、いつ起きてもおかしくないという不安があります」と先行きを心配する。

山家さんによると、リーマンショック時は、資金繰りが難しくなり廃校を余儀なくされたブラジル人学校が全国で続出したという。

「外国人学校は経済の煽りを受けやすい状況にあります。ほとんどの外国人学校が公的支援を受けていません。そのため、マイノリティ・社会的弱者のための機関ですが、その当事者から資金を得なければいけないという、とても脆い基盤で運営をしています」

雇い止めを恐れて仕事を休めない保護者たち

時事通信社(AFP=時事)
豊田市の自動車関連工場の様子

地域の公立の小中学校が休校になっているなか、エスコーラ・ネクターでは感染予防対策を行いながら、4月20日まで授業を続けていた。その後も完全休校には踏み切らず、24日までは子どもたちの「預かり」対応を続ける予定だという。

背景には、月謝で経営が成り立っているという事情に加えて、派遣など不安定な雇用下で働く保護者たちが「仕事を休めない」という難しい状況もある。

「保護者は雇用が解除されてしまうリスクを恐れて、子どもが休校でも仕事を休もうとはしません。また言葉の壁によって、会社側と交渉ができない方も多いです。ご両親が休めない環境で、子どもたちが一人で家にいるという状況が見えてくると、私たちも学校を続けざるを得ませんでした」

しかし「学校からクラスターが発生するかもしれない」という危機感が日に日に高まるなか、保護者との調整を進め、24日以降は完全休校とするという苦渋の決断を下したという。休校中はオンラインなどで学習指導を続けていく予定だ。

休校で外国人の子どもの学習に遅れが生じる懸念も

NPO法人希望の光
ブラジル人学校「エスコーラ・ネクター」の子どもたち

山家さんは、公立の小中学校に通うブラジル人の子どもたちの現状も危惧している。

日本語が不自由な両親のもとで、子どもたちの家庭学習に遅れが出ているのではないか、という懸念だ。

「休校中、保護者は『家庭学習を進めてください』と指示されていると思いますが、日本語のできない両親が子どもの家庭学習をサポートすることはかなり難しい。もし仮に休校措置が延長され、家庭学習だけで1学期が終わってしまうことになれば、外国人の子どもの大半が学習がほとんど進まない状態で取り残されてしまうことになると思います」

日本語指導を必要とする外国籍の児童・生徒は全国に約4万人いるが、言語のハードルから、日本の学校の授業についていけず「落ちこぼれ」てしまう子どもも多い。

外国籍の生徒を含め、外国にルーツがある生徒の高校進学率については正確な統計はないものの、かなり低いことが想定されている。また、日本語指導が必要な高校生等の中退率は9.6%と全体の約7倍、卒業後の非正規就職率は40%と全体の約10倍に及ぶことが分かっている。

新型コロナの長期化が見通されるなか、外国人の子どもたちがさらに不利な状況に置かれる可能性が高い。

「行政には、外国人家庭特有の課題があることを知ってもらい、どのような支援が必要なのかを柔軟に話し合ってもらえたら嬉しいです。たとえば、日本語指導員が外国人の子どもたちにオンラインで授業するなどの対応があれば、理想的です。どうか多様な住民がいることを忘れないでほしい」山家さんはそう訴えた。