選手への性的暴力の捜査で、シモーン・バイルスらがFBIを批判「さらに多くの女性たちが虐待された」

多くが犠牲になった米体操連盟の性的虐待問題。「FBIは子どもたちの安全よりも金メダルとお金を優先した」とFBIを批判しました

アメリカの女子体操代表チーム医師だったラリー・ナサール被告による性的虐待と、それを巡るFBIの対応についての公聴会が9月15日、米議会上院の公聴会で開かれた。

公聴会には、被害を受けたアリー・レイズマン氏やマッケイラ・マロニー氏、シモーン・バイルス氏などの現役や元体操選手らが出席し、FBIの対応を批判した。

公聴会に出席したアリー・レイズマン氏、シモーン・バイルス氏、マッケイラ・マロニー氏、マギー・ニコルズ氏
公聴会に出席したアリー・レイズマン氏、シモーン・バイルス氏、マッケイラ・マロニー氏、マギー・ニコルズ氏
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FBIが捜査を怠った

ナサール被告は、治療を装って大勢の若いアスリートを性的に虐待したとして2018年に有罪判決が言い渡された。現在は事実上の終身刑で収監されている。

この問題では250人以上が同被告からの性的虐待を訴え、証言をしたマロニー氏やレイズマン氏、バイルス氏やマギー・ニコルズ氏も、ナサール被告に複数回にわたり被害にあった。中には被害を受けた時に、わずか6歳だった選手もいる。

またこの問題では、2015年に複数の体操選手がナサール被告の虐待をインディアナポリスのFBIに通報したにも関わらず、FBI捜査官が訴えを1年以上放置していたことがわかっている。

関与した2人のFBI捜査官の1人ジェイ・アボット氏は、通報を受けた後にアメリカ体操連盟で求職活動をしていた。

もう1人の捜査官は不正行為を理由に解雇されたものの、上級職だったアボット氏は2018年に自主退職が認められた。

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15日の公聴会でマロニー氏は「FBIが職務の遂行を怠ったために、さらに多くの女性たちがラリー・ナサール被告に虐待されることになりました」 「市民を守るのが仕事であるはずの公務員が、なぜ守ろうとしなかったのでしょうか?」と述べ、FBIを批判した。

上院議員も「FBIが捜査すべきだった15カ月の間に、少なくとも70人の若いアスリートがナサール被告に虐待された」と報告した。

(ツイート)上院の公聴会に出席したマッケイラ・マロニー氏。ラリー・ナサール被告による虐待を、2015年にFBIに詳しく報告したと説明した。

「FBI捜査官が、報告を引き出しにしまってしまうのであれば、虐待を報告することに何の意味があるのでしょうか」

関係者すべてに対する捜査を求める

アスリートたちは、ナサール被告と提携していたアメリカ体操連盟や米オリンピック・パラリンピック委員会、ミシガン州立大学などについても、アスリートを守るための適切な行動を取らなかったと批判している。

公聴会で涙を見せたバイルス氏は「私が今日ここで皆さんの前で声を上げるのは、私やここにいるアスリート、そして治療を装ったナサール被告によって、多くの人たちが経験した不必要な苦しみを、もう二度幼い女の子たちが耐えなくてもいいようにするためです」と訴えた。

シモーン・バイルス氏
シモーン・バイルス氏
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さらに「助けてもらえなかった私たちは、答えを聞く権利があります。ナサール被告は今、然るべき場所にいますが、彼を許した人々も責任をとる必要があります」と、関係した人たち全てについての捜査をするよう求めた。

レイズマン氏も「FBIは子どもたちの安全よりも金メダルとお金を優先した」とFBIを批判し、「アメリカ体操連盟やとオリンピック委員会が何十年もの間、どうやって、そしてなぜ虐待を無視したのかを理解せずに、全ての責任の所在を把握できると考えるのは非現実的だ」と述べた。

(ツイート)FBIのラリー・ナサール捜査について語ったアリー・レイズマン氏。

「FBIからナサール被告の件で司法取引に同意するよう圧力をかけられたと感じました」「FBI、そしてアメリカ体操連盟とオリンピック委員会の人々は、ナサールが子どもたちを性的虐待していたことを知っていたにも関わらず、彼をそのままにした」

公聴会ではFBIのクリストファー・レイ長官も証言した。ナサール被告の捜査が始まった後の2017年に長官に就任したレイ氏は「FBI捜査官の行動は、全く許容できない」と述べ、当時の対応について検証する姿勢を示した。

苦しみは今でも続いている

ナサール被告による性的虐待の被害者たちは、今でも苦しみを抱えながら生きている。レイズマン氏は公聴会で、次のように語った。

「私は持てるすべての力を振り絞って、今日ここに来ています」

「一番の心配は、ここから出て行くだけの力が残っているかどうかということです。この問題に私たちがどれほどの影響を受けてきたのか、PTSDやトラウマが私たちをどれほど苦しめてきたのか、周りに理解されていないと思います」

「私はしょっちゅうこう感じるのです。いつかこの気持ちが癒されることはあるのだろうかと」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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