「フォアグラ弁当販売中止」を、考えるために必要な3つの視点。

諸外国での対応などを視野に入れつつ、動物愛護の観点からファミリーマートは販売中止を決定しのでしょう。一方で食とは全ては殺生である、と考えた時にどう捉えるのか?本件を機会に、正確な情報とともに議論の深まりを期待したいと思います。

コンビニ・ファミリーマートの「フォアグラ弁当」がクレームを受けて販売中止となった件が、ずいぶんと話題です。(正式には、2014年1月28日に発売予定だった「ファミマプレミアム黒毛和牛入りハンバーグ弁当~フォアグラパテ添え」(690円)のことですね)

■ プレミアム感ある商品の市場投入の一環

この商品、販売前からプレミアム感あるちょっと高めの商品として、一定の注目を集めていたようです。コンビニの主要な顧客が若者から中高年層に移りつつあるなか、また景気回復の温度感を反映しての市場投入だったのではないかと思います。

ところが、発売四日前となる24日、ファミリーマートは突如「発売見合わせ」を発表したわけです。

一部のお客様のご意見の中に、フォアグラを使用した商品の取扱いについてご指摘をいただきました。(中略)お客様から頂戴したご意見や諸外国におけるフォアグラに対する見解の違い、フォアグラ自体の生産過程なども踏まえ、弊社内で慎重に検討しました結果、当該商品の発売を見合わせることとなりました

出典:ファミリーマートプレスリリース

これについて、ま、ネット上では賛否両論となっているわけです。

これについて、ファミマに対して抗議を行ったとされるNPO法人アニマルライツセンターは販売中止を受けて発表をWEBでしています。

この問題をどう見るか?大きな論点は3つのように思われます。

1)伝統的な食文化を、他国にない習慣の場合の違和感、という視点

日本におけるイルカ漁(クジラ漁のことですね、太地町での。クジラとイルカは同種なのです)や、韓国における補身湯(犬肉の鍋)もそうかもしれません。たとえば、昆虫食など、各地には伝統的な食文化として根付いているけれども、他地域・他国から見ると違和感がある、という観点からの議論があります。フォアグラ自体は、後述の通りローマ時代に起源があり、フランス国会が決議しているような伝統等があるようです。

そして、改めて日本のイルカ(くじら)漁について。

ちょうど、ケネディ大使の指摘に対して、安倍首相が反論しています。

伝統的な食文化への他国からの違和感、について考える上で示唆にとむと考えます。

2)動物愛護、という視点

ここが今回の最大の焦点でもあると考えられます。

(掲載されている動画の一つ...屠殺のシーンなどもあるため閲覧はご自身の判断でお願いします)

ひとしきり見ましたが、おそらくこの映像を見て何も思わない人もまたいないでしょう。(狭いゲージ、なんてあたりはしかし養鶏場などもさほど変わらないとは思いますが)

では、食べるための養殖や、美味しくするための掛け合わせ、遺伝子組み換えなどといったものをどう捉えるのか?

結局、ここが最大の価値判断のポイントではないでしょうか。

3)クレームへのリスクヘッジを優先する姿勢、という視点

ネット上では、販売中止という判断に対して批判的な姿勢も少なくないようです。

少数のクレーム(22件という数字を上げているサイトもありますが、筆者が調べる限りでは数字の裏は取れませんでした)に対して、過剰な対応をしすぎではないか?との意見。例えば「モンスターペアレンツ」を思いリスクをヘッジする教育現場や、同様にCMの中止を決めたキリンの缶酎ハイや、ANAの件を引き合いにだし、クレームにたいしてどんどんと弱くなり無難になっていくことへの反発を持つ意見も多いようです。

今回の一件を判断する際に必要な視点は、この3つ。

諸外国での対応などを視野に入れつつ、動物愛護の観点からファミリーマートは販売中止を決定しのでしょう。

一方で食とは全ては殺生である、と考えた時にどう捉えるのか?

本件を機会に、正確な情報とともに議論の深まりを期待したいと思います。

ーーー【参考情報】ーーーーーーーーーーーーーー

実際のところ、世界各国では以下の様な規制がおこなわれているようです。以下ウイキペディアによると。。。

欧州

欧州評議会の「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」加盟国35カ国では、フォアグラの生産は「すでに定着している場合を除き」、1999年に禁止された。

イタリア、オーストリアの6州、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、ルクセンブルクの各国では、「動物の強制給餌」自体が禁止されたことにより、フォアグラの生産は事実上、違法となった。(ただし、外国産フォアグラの販売は必ずしも禁止されていない)。また、アイルランド、イギリス、スウェーデン、オランダ、スイスでも、動物保護法の解釈上、フォアグラの生産は違法とされている。デンマークでは議論を受けてすべてのスーパーマーケット・チェーンがフォアグラ販売からも撤退している。

アメリカ合衆国

2004年9月29日、アメリカ・カリフォルニア州は、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を2012年以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった。

また2006年4月には、イリノイ州シカゴに於いてのフォアグラの販売が、市議会の決議によって全面的に禁止された。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。さらにリチャード・M・デイリー市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」などとこき下ろし、撤廃を訴えていた。そして当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で何の審議も行われず37対6で廃止が決まり、制定後わずか2年でお払い箱となった。

でも8割以上を生産するフランスでは、保護を決める国会決議があったようです。

2000年度の世界生産量18,000トンの内、15,300トンがフランスで生産され、現在はほぼフランス一国で生産している状況である。2005年10月、フランスの国民議会が農業政策に関する包括法の一部として、フォアグラは仏文化の遺産であるとした法案を全会一致で可決した。その際、フランスが世界でフォアグラの80%以上を生産していることを指摘し、保護すべき仏文化、料理の貴重な遺産であると宣言。カモやガチョウの強制肥育についても、他に方法はなく止むを得ないとして、擁護する姿勢を鮮明にした。

では、実際にフランスではどれほどの歴史的背景があるかというと、、、(これもウイキペディアより)

古代ローマ人が、干しイチジクをガチョウに与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりと言われる。大プリニウスの『博物誌』によると、古代ローマでは、ガリアからもたらされたガチョウに強制肥育を施して、食材としていたことが記録されている。これにある美食家がさらに工夫を加えて、イチジクで肥育させた上に、肥大した肝臓を蜂蜜入りの牛乳に浸して調理する技法を発案したと伝えられている。

ローマ帝国崩壊後にこれらの技法はいったん衰退したが、徐々に復活し、ルネサンス期にはフォアグラ生産業が定着して、食材として認知されるようになった。フランス革命前までは、フォアグラの製造にはガチョウだけではなくニワトリなども用いられたが、19世紀になると、ガチョウがフォアグラの素材の定番として定着した。ガチョウは牧草などの粗食で大きく育つため、あまり地味の豊かでない土地で多く飼育され、またそうした地方には17世紀に新大陸からトウモロコシが導入されて、農業生産がようやく向上した。後述のような今日のフランスの主要フォアグラ産地は、このような地理的、歴史的条件を背景とし、ガチョウ飼育農業とトウモロコシの出会いの上に成立したのである。

(2014年1月26日「Yahoo!個人」より転載)

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