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2021年01月26日 17時50分 JST

「CFO募集、ただし18歳以下」の会社のその後 17歳CFOがペットボトル全廃を決定

18歳以下からCFO(=最高未来責任者)を募集するユーグレナ社。10代は会社にどんな変化をもたらしたのだろうか。

Kazuhiro Matsubara / Huffpost Japan
川﨑レナさん(左)、小澤杏子さん(右)

「CFO募集、ただし18歳以下」

2019年、新聞の全面広告で「10代の経営リーダー」を募集したユーグレナ社。東証一部に上場する企業の取り組みは、大きな反響を呼んだ。

ユーグレナ社は「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を理念に掲げ、「ミドリムシ」等を原料とする食品や化粧品の販売から、バイオ燃料の研究・開発まで手掛ける。CFOとは一般に最高財務責任者を指すが、同社が募ったのは「最高未来責任者(Chief Future Officer)」。未来に向けてサステナビリティに関するアクションの意思決定を担うという、まさに同社の理念を背負って立つ存在だ。

500人を超える応募から初代CFOに選ばれたのは、小澤杏子さん(当時17歳)。2020年には、2期目として川﨑レナさん(15歳)が就任した。

10代のCFOは、ビジネスの現場に飛び込んで何を感じたのか。そして、会社にどんな変化をもたらしたのだろうか。

意識を変えるのは難しい。だから「仕組み」から変えていく

Kazuhiro Matsubara / Huffpost Japan
小澤杏子さん

 ── 小澤さんは初代CFOとして「環境への意識の高さ、低さにかかわらず、お客様が意識せずとも環境に配慮した行動をとれる仕組みの構築を目指す」という方針を策定しました。「意識を高めよう」と呼びかけるのではなく「意識せずとも」というメッセージを打ち出されたのが印象的でした。

小澤さん 環境問題やSDGsに対し、行動を呼びかけるメッセージは社会に沢山ありますが、それが届くのはどうしても一部の人だけという課題意識がずっとありました。

たとえば環境問題に関するイベントを開催して、100人が参加してくれたとします。その場はすごい熱量で盛り上がるかもしれないけど、恐らくその100人は、もともと環境に意識が向いている人たち。すでに気づいている人に「行動してください」と呼びかけ続けても、一定数以上にはどうしても届くことなく終わってしまう。

では「意識が向いていない人」にどうアプローチしていくか、というのをサミットメンバー(CFOとともに活動する18歳以下のメンバー、5-8人)と議論する中で出した結論が、人の意識を変えようとするのではなく「仕組み」を変えよう、ということ。

そこで私たちは2020年、「ペットボトル商品の全廃」「2021年中に商品に使用される石油由来のプラスチック量50%削減」という提言をユーグレナ社にしました。コンビニや自動販売機で売っている飲み物の容器が、紙やバイオプラスチックなど環境に配慮された素材に置き換わっていけば、ただ買うだけで、ただ飲むだけで、自然に環境に配慮した行動を取ることができますよね。(ユーグレナ社は2020年6月、小澤CFOらの提言を受けて施策の実行を決定した)

もちろんこの取り組みはユーグレナ1社でやっては意味がないと思っていて、長期的には「ユーグレナができるのだから我々もできるんじゃないか」と、ほかの企業にこのような取り組みが波及していくことが必要と考えています。

理想を形にするための過程を学べた

── 初代CFOということで相当なプレッシャーもあったはずです。1年をどのように振り返りますか。

小澤さん CFOに就任した時、「絶対に成果を出す」と宣言したこともあり、確かにプレッシャーはありました。しかし、コロナの影響が大きく、予定していたイベントが実施できず、計画をゼロから練り直すことになったりと、振り返ればかなりバタバタの一年でした。

でもそれも含めて、ビジネスの現実を体感できて本当に良かったです。株主総会で株主と対話したり、社内外のいろんな方とディスカッションをしたりして、実際に事業を動かすことの大変さを学びました。

やっぱり私たち中高生は、ビジネスにはどんな優先順位があるのか、会社の意思決定がどう行われているのか、そういうことを知らない部分はどうしてもあります。「ああしたい」「こうしたい」ってアイデアはいくらでも膨らむのですが、「実際それってユーグレナでやる必要あるの?」って聞かれると私は答えられなかった。今ユーグレナ社がやるべきことは何なのか、夢や理想を形にするために何をすべきかを考えていく過程を学びました。

Kazuhiro Matsubara / Huffpost Japan
小澤杏子さん

 

10代が経営に参加することのメリットは?

── この1年の経験を踏まえて、企業にとって10代が経営に参加することのメリットは何だと感じますか?

小澤さん 私たち10代が「未来の社会のために行動を起こそう」というモチベーションは、今の60代、70代の方より「さらに自分ごと」なのかなと感じています。たとえば「50年後の世界」を考えるときに、その時の自分自身の生活をイメージしやすいからこそ、持てる視点や問題意識があると思うんです。

また、先ほどはアイデアが先行してしまったという話をしましたが、逆に「夢や理想を自由に語れた」というファーストアクションがあったからこそ、企画を形にできたのではないかとも思っています。そういう意味では「あれがしたい」「こういう世界になってほしい」という純粋な思いを、難しく考えすぎず言えるのが子どもの価値。大人になると、背負うものが増えていくのは仕方ないですし、そのお陰でいまの社会もあります。だから、これまでのやり方を尊重しつつ、子どもの「フィルターのかかっていない視点」を織りまぜていけば、社会で、そして企業で、価値が生まれるのではないかと考えています。

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「ペットボトル商品の全廃」「2021年中に商品に使用される石油由来のプラスチック量50%削減」という提言は会社にとっても大きな決断だったはずだ。社内で異論はなかったのだろうか。同社の広報担当は「反対の声はなかった」と話した上で、こう語る。

「もともとペットボトル商品に関しては社内で議論が何度かありました。その度に、取引先や、定期購入いただいているお客様などを考え、廃止に踏み切れずにいたのですが、今回初代CFOたちに提言され『やはり(ペットボトル商品廃止を)やるべきなのだ』という決断に至りました」

また、10代のCFOとサミットメンバーの提言で、社内でも環境保護に対する意識の変化が起きたという。マイボトルを持つ社員が増えたり、「ゴミゼロ」を目指すプロジェクトが立ち上がったり、研究拠点の電力を再生可能エネルギーに変えたりというアクションが起きた。広報担当者は「今や、10代が社内にいることが“当たり前”になったと感じる」と話す。 

サステナビリティを一般常識に。「教育」が鍵?

Kazuhiro Matsubara / Huffpost Japan
川﨑レナさん

── そんな小澤さんからバトンを引き継いだ川﨑さん。2期目CFOとして今後、どんなことに取り組みたいと考えていますか?

川﨑さん たとえばなのですが、サステナビリティへの取り組みをもっと社会に認知してもらうためにも、「教育」にアプローチする方法を考えていきたいです。

啓蒙活動ではなく「教育」という言葉を使ったのは、みんなが平等に、必須で受けられるものであってほしいという思いからです。小澤さんが「意識を変えるのではなく“仕組み”を変える」という話をしていましたが、教育も仕組みの一つと考えています。小学校や中学校での授業で、サステナビリティについて当たり前に学ぶことができれば、社会に一般常識や道徳として浸透していくと思うんです。

Kazuhiro Matsubara / Huffpost Japan
小澤杏子さん(手前)、川﨑レナさん(奥)

── というと、同世代でもSDGsやサステナビリティへの知識や認識が浸透していないという課題感があるのですか?SDGs認知率の調査では、男性10代の認知率が約55%と男女別の全世代で最も高いなど、若い世代の関心の高さが目立つ結果となっていますが。

川﨑さん まわりの同世代にSDGsのことを話しても「SDGsって何?」って言われることもありますし、言葉は知っていても「SDGsって商業的じゃない?」とネガティブな印象を持っていたりする人が多いとも感じます。

また「先進国の学生が途上国で井戸を作りました」みたいな話があったとき、同じ先進国の中で「その学生は生活に余裕があるからできるんだろう」という冷ややかな視線もあると感じていて。SDGsに対する眼差しもこれと似たところがあるなと思うんです。SDGsについて発信すると「意識高い」「上から目線」という声も上がりますよね。

でも本来、サステナビリティって全員に関わることであって、全員が行動したり、意見を持てるテーマなのですが…。だからこそ「教育」で知識の最低レベルを底上げしていかないと会話が始まらないというのは感じています。もちろん私自身も、まだまだ勉強中です。

「行動するか・しないかの責任は、将来の自分たちが被る。時間もありません」 

小澤さん 確かに、私たちの世代には「言葉」の浸透自体は大分進んできていると感じますが、やはり「行動に移せているか」というと、人よってムラがあるなと感じます。

そんな中で、サステナビリティについて発信したり、何かアクションを起こしたりすると、世代に関わらず、理解を得られないこともあります。でも、それは仕方ない。そもそも全ての人と100%分かり合うのは難しいと思っています。ただ、今行動するか・しないかの責任は、将来、自分たちが被ることになる。時間もありません。そう考えると、やらなきゃいけないことの優先順位をつけて、1つ1つ取り組んでいくことが大切だと思います。

1月26日夜9時のハフライブ では、モデルのトラウデン直美さんらをお迎えして、ファッションとSDGsをテーマに、新しい買い物のあり方を考えます。大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルからシフトするために。知ること、調べること、そして“買わない“ことも「買い物」の新しい形かも…? #ハフライブ でご意見やゲストへの質問をお待ちしています。

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