「誰がいちばん幸せそうに見えるかゲーム」は、もうやめよう。紫原明子さんが国際女性デーに伝えたいこと

女性の生き方、答えはひとつじゃない。【 #本音で生きよう 連載第1回】

仕事やライフスタイルが多様化する現代。女性の人生にも、多くの選択肢が用意されている。それなのに未だプレッシャーを感じるシーンが多いのは、なぜか。
日本HPがおこなった「女性の本音を取り巻く環境」についてのアンケート調査によると、8割の女性が「結婚かバリキャリか、家庭か仕事かなど、どちらかを選ばなければいけない時代は終わるべきだと思う」と答えている。
女性が自分らしく本音で生きるようになるために、私たちができることは何か。エッセイストの紫原明子さんにお話を聞いた。

紫原明子(しはら・あきこ) エッセイスト。1982年福岡県生。シングルマザー。個人ブログ『手の中で膨らむ』が話題となり執筆活動を本格化。著書に『家族無計画』(朝日出版社)『りこんのこども』(マガジンハウス)。東洋経済オンライン、クロワッサンオンライン、BLOGOS、フミナーズなどに連載。WEラブ赤ちゃんプロジェクト「泣いてもいいよステッカー」発案。Twitter ID:@akitect
紫原明子(しはら・あきこ) エッセイスト。1982年福岡県生。シングルマザー。個人ブログ『手の中で膨らむ』が話題となり執筆活動を本格化。著書に『家族無計画』(朝日出版社)『りこんのこども』(マガジンハウス)。東洋経済オンライン、クロワッサンオンライン、BLOGOS、フミナーズなどに連載。WEラブ赤ちゃんプロジェクト「泣いてもいいよステッカー」発案。Twitter ID:@akitect

女性が生きやすい社会にするには、性別を飛び越えたアプローチが必要

――自分らしい働き方や、仕事とプライベートの両立に悩んでいる女性がたくさんいます。紫原さんご自身も、悩まれたことはありますか?

私は、18歳で結婚をして19歳で出産しました。専業主婦だったけど、31歳で離婚。仕事の経験がまったくない状態で、生活のために働き出さなければならなかったんです。子どもが二人いるので、悩む間もないくらい必死でした。

――想定外の離婚から就職、となると大変ですよね。女性はとくに結婚・妊娠・出産などのターニングポイントで「プライベートか仕事か」など優先順位を強いられるシーンも多いです。

社会構造の問題も大きいですよね。「男性が働く人、女性が育てる人」という古い社会の名残がある。女性が働くのがあたりまえになったいま、男性が仕事をセーブする、もしくは家事をになう側に回ることだって認めなくてはならないと思うんです。
女性の権利を高める機運があるけど、男性側にもアプローチが必要。性別を飛び越えてみんなで力を合わせて、男女が育児をしながら働けるモデルを作らないとって思います。
女性が抱える悩みも、男性が抱える悩みも、性差を超えて解決できるような構造を作らないとですよね。

「誰がいちばん幸せそうに見えるかゲーム」やめよう

――ライフステージを重ねるごとに個々で環境が変わり、溝が生まれることもあります。

悲しいことですよね。30代後半になると、「結婚している人としてない人」「子どもがいる人といない人」とか、なんとなく壁ができてしまうこともあります。

――壁ができる原因は、何でしょう?

数年前、女性誌で「だって『幸せそう』って思われたい!」っていう特集があったんですよ。ネットでも話題になったけど、「幸せになりたい」じゃなくて「幸せだと思われたい」っていう気持ちは、確かにあるかもなあ、と。
でも、「どんな生き方をしてもいい」って自分自身が思うためには「誰がいちばん幸せそうに見えるかゲーム」をやめないといけないと思うんですよ。
私も、結婚している間はすべてがうまくいっているように思われていたはずです。「あの人はお金持ちの奥さんになって、良い家に住んで幸せそうだな」って思われているんだろうなって。そんなときに「実は夫が毎晩飲み歩いていて、お金もたくさん使っている。この家も出て行かないといけないかもしれない」なんて危機に直面していることはすぐには言えなかった。
でも限界がきて、友人に苦しさを吐き出したら、「実はウチも!」って返ってきたんですよ。みんな、幸せそうに見せているだけで、本当は大なり小なり、人に言えない悩みや苦しみを抱えてる。みんながもっと、辛いことも気軽に言えるようになるといいなって思いました。

「習いごとやサークルのような“サードプレイス”を持つのもいいのでは」
「習いごとやサークルのような“サードプレイス”を持つのもいいのでは」

弱さを人に見せるって、最初は勇気がいりますよね。でも、困っていることを自分から先に言うと、みんなが言いやすくなる。それって、本当に苦しい人を助けているのと同じだと思うんです。弱さを見せたらその時点でちょっと強くなれるし、人が集まってくると思います。だから私も、自分の弱みを見せていこうと。

――紫原さんの“弱み”は?

いっぱいありますよ。子供もいるし、お金稼がなきゃとか、この仕事がいつまで続けられるだろうとか、これから老後どうやって生きていけばいいかとか。文章を書いたり相談に乗ったりしていると「こういう風にうまくいっていますよ」という話もしないといけないけど、いいことばっかりなわけないし(笑)

――どうしたら弱みを見せられるんでしょう?

自分の苦しい状態に慣れないことが大事じゃないでしょうか。「この苦しさを少しでも軽減したい」という思いでいると、誰かに話したくなる。その気持ちを大事にしたほうがいい。私もそうだったんですけど、苦しい状態がマンネリ化して平気になってしまうことってあるんですよね。慣れちゃうんです、苦しみって。でも、それって自分を大事にしてないってことです。ちょっと踏み出して、自分が困っていることや大変だと思うことに気づく。さらにそれを口に出すことで、景色がガラッと変わるかもしれない。弱みや本音を言うのって最初は苦しいし、ハードルもあるかもしれないけど、その一言がまた、誰かを救うかもしれない。そう思うんです。

自分に向き合っているだけでは気づけない「自分らしさ」

――女性は「妻」とか「母」とか、肩書きによるプレッシャーもあります。

そうですね。一方で、たまに母になったり、たまに妻になったり、自分が洋服を着替えるようにいろんな顔と役割を持てるのは、ある面ではいいこともある。ただ、肩書きはあっても「家族のために生きる自分」それだけがアイデンティティになるのは少し危険かなとは思います。まさに私がそうだったのですが、“豊かで幸せな妻でいられる自分”以外には何もないような気がして。離婚したときに「誰々の妻」でなくなった自分とか、バツイチになった自分の自尊心を、どう取り戻したらいいかわからなくなって。かなり大きな挫折感を味わいました。

――どのように乗り越えたのですか?

なるべく外に出て行って、人間関係を広げる努力をしました。私の新しい価値を見つけてくれるのは未だ会ったことのない人だと思ったので。といっても当時は小さい子供を抱えていたので、実際に外にばかり出て行くわけにもいかなかったので、友人やその友人をたくさん家に呼んで、みんなでご飯を食べるってことをよくやりました。そこで繋がった縁が結果的に仕事になって、社会のなかに小さいながらも私が必要とされる場所を見つけることができました。

シングルマザーで2人の子供を育てる紫原さん。「子育てが終わってしまうと思うとやっぱり寂しいです」
シングルマザーで2人の子供を育てる紫原さん。「子育てが終わってしまうと思うとやっぱり寂しいです」

――「年齢」にプレッシャーを感じる女性も多くいます。

もしかしたら自分と属性の近い人たちに囲まれているから焦るのかもしれませんね。同年代の友達が結婚したとか妊娠したとか転職してキャリアアップしたとか、自分と比べてしまいがち。でも世の中にはいろんな人がいるので、違う世代の人とか、違うコミュニティに属する人に目を向けると、世界が広がるように思います。

――世界を広げていろんな人たちと触れ合うと、景色が変わるかも。

今は昔よりはるかにいろんな生き方が認められてきているので、人は人、自分は自分と、個々の選択を尊重することが大切ですよね。そして実際に最近は、その大切さを感じている人たちも目に見えて増えてきていると思います。
先日Twitter で子育て関連の話題をシェアした時に、ある女性が「私には子供がいないけど、会社には子供がいる人がたくさんいて、その人たちのために何かをしてあげたいからこの話をシェアします」とコメントをくれました。
子供がいなくても、子育ての話題を当事者として関心を持ってくれて、Twitterなどのオープンな場で伝えたりするのは本当に素晴らしいし、そういう気持ちを持っている人はたくさんいるはず。自分とは違う選択をした人を尊重するメッセージをみんなで発信しあっていきたいですよね。

答えは「グラデーション」のなかにある

――女性が自分らしく生きることにルールや答えはないですよね。

社会システムが未整備な部分とか、ジェンダー観が未成熟なところもあるけれど、とはいえ着実にいろんな選択肢が取れる世の中になっているのは事実だと思うんです。だからこそ、自分がどんな自分でありたいかを自問することが大切。基本的には誰よりも自分がいちばん自分を幸せにする力を持っていて、その方法もよく知っているはずなんです。でも、だからすべてが自分次第かというとそうでもなくて、やっぱり社会のいろんなところに「ガラスの天井」が存在しています。
自分の力でどうにかできることと、社会にアプローチするべきこと。いろんな手段を使いながら、知恵を絞って、自分を苦しい状態に留めないこと。より幸福になろうとすることが大事なんじゃないかなと思います。

――自分が動けば変わることも多い。

最近私たちが抱えている問題って、極論では答えが出ないことばかりです。生きづらさの原因が社会システムの中にあることもあれば、そうでないこともある。自分が女性であることに原因がある場合もあれば、そうでないこともある。本当はすべてがケースバイケースで、あらゆることがグラデーションの中にあります。

女性が社会におけるマイノリティである状況は当然是正されるべきだと思うけど、そのために「女性は強く生きよう!」とか「女性は輝こう!」と生き方を定義されるのは本末転倒という気もしてしまいます。男性も女性もいつも強くいられないし、いつも輝いてもいられない。グラデーションのなかを行ったり来たりしていていい。そういう社会がいいなと思います。
「自分が周囲から幸せに見られているか」という基準は一度脱ぎ捨てて、少なくとも「自分が苦しくないか」を自分に問いかけながら、一歩ずつ「どっちかな、こっちかな」って迷いながら進んでいきたいですよね。

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日本HPとハフィントンポストは共に、今年の3月8日の国際女性デーを契機に、「#本音で生きよう」のメッセージのもと、女性が自分らしく豊かに生きていくためのヒントを、識者や読者の方たちと一緒に考えていきます。

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