PRESENTED BY 日本アイ・ビー・エム

ESG投資時代の「企業価値」。今、企業がとるべきアクションは?

日本アイ・ビー・エムがオンラインセミナーを開催。コーポレートガバナンス・コード改訂後、サステナビリティーへの取り組みはどう変わる?
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Photo:SOTA OHARA

2021年にコーポレートガバナンス・コード(企業統治の指針)が改訂され、気候変動を中心としたサステナビリティーの課題への企業の取り組みがより求められる状況だ。しかし、厳しい情報開示が本当に企業価値につながるのかという疑問もある。日本企業は今どのようなアクションをとるべきか。

「ESG投資時代の『企業価値』をつくるには?」と題されたオンラインセミナーでは、IBMの大塚泰子さんをファシリテーターに、弁護士の塚本英巨さん、戦略コンサルタントの夫馬賢治さんら有識者らに話を聞いた。

大塚泰子さん(IBM Corporation IBMコンサルティング 戦略チーム パートナー)
大塚泰子さん(IBM Corporation IBMコンサルティング 戦略チーム パートナー)
Photo:SOTA OHARA

■ガバナンス・コードに沿うだけでは思考停止。横並びではなく一歩先へ

最初のセッションには、上場会社のコーポレートガバナンスや株主総会対応のアドバイスを行う塚本英巨さんが登壇。コーポレートガバナンス・コード改訂後の2022年の日本の株主総会を振り返り、日本企業へ提言をおこなった。

塚本英巨さん(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 パートナー弁護士)
塚本英巨さん(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 パートナー弁護士)
Photo:SOTA OHARA

塚本英巨さん(以下、塚本)「サステナビリティーに関する株主提案は、2020年に初めて行われたと言われています。2022年も引き続き、いわゆる環境NGOの方から商社・銀行・電力といった企業に対して、サステナビリティーに関する株主提案がありましたし、大手の機関投資家からも共同で電力関係の企業への株主提案がありました。パリ協定目標と整合する中期短期の温室効果ガス削減目標を含む事業計画を策定し、開示することを定款に書き込むといった株主提案になります」

この株主提案はいずれも否決されたが、気候変動関連の質問は商社・銀行・電力に限らず広い業種で株主から出されたという。

大塚「関心は高まりつつも、株主提案が賛成に至っていない状況ということでしょうか」

塚本「そうですね。まず、会社の基本原則である定款を改正する株主提案については、可決のハードルが非常に高いものです。ただ、気候変動関連の株主提案には20%以上の賛成を集めたケースもあり、機関投資家の多くが賛成していることが窺えます。気候変動関連以外の株主提案と比較すると、賛成割合は非常に高くなっていると言えるでしょう」

大塚「今後、日本企業はどういうアクションをとっていくべきでしょうか」

塚本「気候変動への対応は世界的な潮流であり、日本に限らず海外の企業も規制や株主などステークホルダーからの要求に粛々と取り組んでいる状況です。そのなかで最低限ガバナンス・コードに沿うといった発想では、日本的な思考停止に陥ってしまいます。横並びではなく一歩先の取り組みと開示で、機関投資家と一般株主の賛同を得られる対応をおこなっていくことが重要になると思います」

■ESG投資もグリーンボンドも日本は後発。まずはコミュニケーションを

続いて、日本のESG投資の第一人者である夫馬賢治さんが登壇。ファイナンス視点から、今後求められるアクションを探った。

夫馬賢治さん(戦略コンサルタント/ニューラル CEO/信州大学特任教授)
夫馬賢治さん(戦略コンサルタント/ニューラル CEO/信州大学特任教授)
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大塚「ESG投資が非常に増えていますが、一方で見せかけだけのグリーンウォッシュが指摘される問題もあります」

夫馬賢治さん(以下、夫馬)「金融機関投資家の全資産運用のうち、ESG投資が今36%を占める大きなトレンドになっていまして、同時に規制当局でもグリーンウォッシュ撲滅の動きが加速しています。機関投資家と銀行自身でもカーボンニュートラルを宣言していることで自主基準を明確にしてきていることから、グリーンウォッシュはさらにしづらい環境が生まれてきています」

大塚「日本の特徴にはどのようなものがありますか?」

夫馬「日本はまず、ESG投資の歴史が浅い。例えば日本の金融機関では、どうやって全社にこのサステナビリティーを統合していけるかの議論がようやく本格開始したという段階。イギリスやヨーロッパの金融機関が2013、14年頃に経験したプロセスを、日本では今経験しているという状況ですね。

適格性のある環境プロジェクトに資金使途を絞って資金を調達するグリーンボンドも非常に増えてきていますが、金融市場におけるグリーンボンドやソーシャルボンドの割合も、世界的に見ると日本ではまだまだ発行市場規模が小さいです」

大塚「事業会社側ではどうしたらうまく資本市場と向き合えるでしょうか」

夫馬「非常にシンプルなことですが、金融機関や投資家との対話がとても重要です。金融機関も事業会社もお互い相手に何を言うべきか悩んでいる状態なので、自分から対話の機会を設けていくことが必要になってきています。ですが、株主との直接対話を避けるような事業会社トップもまだまだ多い。共に動くパートナーとして、トップ自らが対話を持つべきだと強く感じています」

■汚染物質排出削減にリスク予兆。テクノロジーを活用した新たな取り組みが必要

まだまだ遅れている日本の状況、グリーンウォッシュの撲滅、企業価値にとってリーズナブルな改革かどうかなどの課題が浮き彫りに。それら課題に対し、IBMのテクノロジーはどのように貢献できるのか。IBMの4つのソリューション、Envizi、Climanomics、Digital Twin for Sustainability Estimation (DTSE)、サステナブルSCMの担当者らが話した。

Enviziは、現状の可視化、適切な情報開示を支援するソリューションだ。

磯部博史さん(日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 サステナビリティ・ソフトウェア事業部 Solution Lead
磯部博史さん(日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 サステナビリティ・ソフトウェア事業部 Solution Lead
Photo:SOTA OHARA

磯部博史さん「スコープ2やスコープ3(※)といった温室効果ガス排出量係数は、いろんな国や地域、カテゴリごとにどんどん更新されていく状況で、ユーザー自らが管理することが非常に難しくなっています。Enviziではユーザーが活動量に関するデータを入力するだけで、自動的に排出量が算出されるようなっています。

ESG情報開示フレームワークも毎年のように変わっていますが、Enviziを使うことで簡単にレポーティング作業を管理することができます」

(※)サプライチェーン排出量は、 スコープ1(自社の直接排出量)、スコープ2(自社のエネルギー起源間接排出量)、スコープ3(それ以外の間接排出量)から構成される

Climanomicsは、アメリカのThe Climate Service社と日本IBMが共同で、日本企業のサステナビリティー経営の実現をサポートするソリューション。

鍋島四郎さん(IBMコンサルティング事業本部銀行証券セクター コンサルティングサービス統括 パートナー/理事)
鍋島四郎さん(IBMコンサルティング事業本部銀行証券セクター コンサルティングサービス統括 パートナー/理事)
Photo:SOTA OHARA

鍋島四郎さん「TCFD(※)項目のなかに戦略項目がありますが、Climanomicsはこの計算を支援してくれるツールです。気温上昇が2℃のシナリオ、4℃のシナリオに合わせて資産へのインパクトを計算するには大量のデータが必要となり、非常に大変。このツールでその収集分析を行うことで企業の手間・コストを削減し、例えば2100年までにどれだけ水位が上昇し、自社の資産がどれだけ毀損するかを可視化することができます。

現状では経営企画の人がこういった計算をする必要があり、困っている状況があります。Climanomicsが日本企業のブレイクスルーのきっかけになるのではないかと思っています」

 (※) G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのようにおこなうかを検討するため設立

Digital Twin for Sustainability Estimation(DTSE)は、デジタルツイン技術を使い、サステナビリティ―実現に向け温室効果ガス削減シミュレーションを提供する。

坂本佳史さん(日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 技術理事 エッジコンピューティングCTO、Ph.D.)
坂本佳史さん(日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 技術理事 エッジコンピューティングCTO、Ph.D.)
Photo:SOTA OHARA

坂本佳史さん「サステナビリティーに対するアクションをとりたくても、ROI、つまりいくら投資したらどれくらいのリターンがあるのかが見えないことはネックになってしまいます。

そこでIBMではデジタルツイン技術を応用し、非常にシンプルなシミュレーションモデルを作っています。既存の製造プロセスや流通のフローでミュレーションを回し、KPI、ROIの算出を自動でおこないます。どこをどう変えたらエネルギーが小さくなるといった提案も、高速でおこなえることが特徴です」

サステナブルSCMは、サステナビリティーを実現する複数のソリューションの集合体だ。

新嶋若菜さん(IBMコンサルティング事業本部 ビジネス・トランスフォーメーション・サービス事業部 シニア・マネージング・コンサルタント)
新嶋若菜さん(IBMコンサルティング事業本部 ビジネス・トランスフォーメーション・サービス事業部 シニア・マネージング・コンサルタント)
Photo:SOTA OHARA

新嶋若菜さん(以下、新嶋)「サステナブルSCMは、CO2など環境に負荷をかける排出をどう削減していくのかにフォーカスしたソリューションをまとめたものです。

例えば調達領域においては、サプライヤーのリスクを予兆分析するソリューションがあります。サプライヤーにまつわるニュースやイベントを過去10年間分分析し、サプライヤーのリスクを予兆します。企業価値にとっても非常に重要な、リスク管理の確実性を高めることができます」

大塚「日本企業は昔から省エネには取り組んできていますが、それでも改善の余地はありますか?」

新嶋「これまでの取り組み方だけでは、カーボン・ニュートラルのような野心的な目標の達成は難しくなります。QCD(※)とサステナビリティーのトレードオフ分析や、そのためにデータをとっていくといった新たな試みが必要になってくると思います」

(※)Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べた言葉

■サステナビリティーをコストからイノベーションに

これからの時代、企業価値をつくるにはサステナビリティーの課題は避けて通れない。大塚さんは、今、企業がとるべきアクションのまとめとして、以下の3つを挙げた。

・「気候変動リスクと機会が与える影響、それらが企業のビジネスモデルやセクターとの関連でどのように対処されているか」を分析・検討・明示すること

・信頼性が高く、タイムリーで比較可能な情報を開示すること

・グリーンウォッシュに陥らないように実行すること

そして、さらに視点を広げれば、気候変動が、エネルギー価格などの経済動向や、生物の生命へも影響を与えている現状を踏まえ「テクノロジーの力、科学の力を信じています。この地球をよりサステナブルなものにしていくために、皆様と取り組んでいきたいと思っています」と締めくくった。

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(撮影:小原聡太、 文:樋口かおる、 編集:磯本美穂/ハフポスト日本版)