世界に「静かな退職」が広がるなか、中国では「諦め」が流行語に

意味もなく達成も無理そうな人生への期待にさようなら。もう諦めてしまおう。
中国発の最新の働き方トレンド「摆烂(バイラン)・訳:諦め」は、世界中の不満を抱えた社会人の共感を得ているという
Malte Mueller via Getty Images
中国発の最新の働き方トレンド「摆烂(バイラン)・訳:諦め」は、世界中の不満を抱えた社会人の共感を得ているという

もう頑張るのはやめて「Let it rot(諦め)」しよう。

米メディアInsiderによると「Let it rot(直訳:腐らせる)、中国語で「摆烂(バイラン・放置して腐らせる)」は、中国で生まれた最新の働き方のトレンドで、不満を抱えた社会人の共感を得ているという。


言葉の意味は、出世や収入向上などの上昇志向を放棄し生きていくこと。中国語の「摆烂(バイラン)」は、「諦め」「放置」「投げやり」や「やけくそ」と訳されたりもする。

まだ日本では広く認知されていないため、この記事では「摆烂(バイラン)」や「Let it rot」を「諦め」と呼ぶことにする。

2022年夏、最低限の仕事はこなすがそれ以上は頑張らない働き方「静かな退職(Quiet quitting)」がソーシャルメディアを通じてアメリカなどで広がった。

しかし、それ以前に中国では「躺平(タンピン)」というワードが2021年に流行していた。日本語で「寝そべり」を意味するこの言葉は、競争社会に疲れた若者たちがそのレースから降り、最低限の生活をして自分のためだけに生きる、というムーブメントを指している。

「静かな退職」は、最低限の仕事はこなすがそれ以上は頑張らない、という働き方だった。「諦め」はもう一歩踏み込んで、放置すれば悪い方向に進むことを分かっていながら争うことをやめ、出世や収入向上などの上昇志向を放棄し生きていくことだ。

「諦め」はバスケットボールの試合で、既に負けているチームが、より早く試合を終わらせるために頑張ることを辞めることを意味する中国の流行語から由来しているという。

シンガポールのリー・クアン・ユー公共政策大学院のアルフレッド・ウー准教授は、この現象の背景には社会の不動性があるという。ウー准教授は、中国のミレニアルやZ世代の社会人たちにとって、教育・医療・住宅という「3つの負担」が障壁となっていると指摘する。

Intellasia.Netによると、ウー准教授は「彼らは大学を卒業し、博士号を持っている人たちもいる。しかしいざ就職となると、非常に地味な仕事に就かなければならない」と述べたという。

デロイト社のアメリカでの最新調査によると、労働者の77%が現在の仕事で燃え尽き症候群を経験しており、64%が頻繁にストレスを感じていると答えている。

香港中文大学メディア学部のケチェン・ファン教授は、「諦め」や「静かな退職」などのフレーズは、こうした不満の中で、労働者が連帯を感じるのに役立っていると考える。

「人はこうしたワードを使うとき、感情を表現しているだけでなく、同じ感情を共有する人との繋がりを求めているのです」とファン教授は英ガーディアン紙に語っている。

「静かな退職」が海外で支持を集めている今、中国発の「諦め」という考え方が、今後他の地域に広がっても不思議ではない。


ハフポストUK版の記事を翻訳・編集・加筆しました。

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