同性婚訴訟で初弁論。「婚姻制度は社会のインフラだ」原告側が東京地裁で訴える

国は争う姿勢を見せた
法廷に向かう原告と弁護団
法廷に向かう原告と弁護団
JUN TSUBOIKE / HUFFPOST JAPAN

同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に反するなどとして、13組の同性カップルが国を相手取り、全国4地裁に提訴した民事裁判で、東京地裁(田中寛明裁判長)に起こした訴訟の第1回口頭弁論が4月15日にあった。

被告側は「請求の棄却を求める」などと争う姿勢を示した。

東京訴訟の原告は、佐藤郁夫さんとよしさん、小野春さんと西川麻実さんら首都圏に住む6組12人。

佐藤さんと小野さんは意見陳述し、同性カップルが直面している日々の苦しみや不安を法廷で訴えた。

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開廷前、記者の質問に答える佐藤さん(前列左)と小野さん(同右)=東京地裁

■なぜ男女の夫婦だけが、家族とされるのでしょうか

佐藤さんは38歳の時にHIVに感染した。周りの人が離れていく中で、「病気は関係ない、あなたが好きだ」と言ってくれたのが、パートナーのよしさんだった。

15年以上お互いを支えあってきたが、ふたりは男性同士なので法的な家族にはなれない。そのため、万が一どちらかが緊急入院した場合に、立ち会えないかもしれないという不安がある。

HIV以外にも病気を持つ佐藤さんは、残された時間がそんなに長くないと感じている。「最後の時には、夫夫(ふうふ)となったパートナーの手を握って「『ありがとう。幸せだった』と感謝をして天国に向かいたいのです」と訴えた。

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小野さんは、パートナーの西川さんと14年間子育てをしてきた。

しかし、小野さんが産んだ子どもが入院した時に西川さんが入院手続きをさせてもらえなかった、小野さんが乳がんになって精神的・肉体的もつらい時に、西川さんの扶養に入れなかったなど、日々の生活で選択肢の無さに苦しめられてきた。

小野さんは以前、男性と結婚していた。西川さんとの家族との暮らしは、その時の結婚となんら変わらないという。

「共に泣いて、笑って、悩んで、喧嘩もして、共に子どもを育ててきました。それなのに、なぜ法律で家族であると認めてもらえないのでしょうか」

「私にとっては男性と結婚していた時と、全く変わらない暮らしをしているだけなのに、なぜ世の中の男女の夫婦の家庭だけが、家族であるとされるのでしょうか」

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■性の多様性から目を背けている

代理人の弁護士は法廷で、同性カップルの婚姻が認められないのは「社会が人の性の多様性から目を背けているからだ」と指摘した。

そして、たくさんの重要な権利が結びついている婚姻制度は「社会のインフラ」であり、同性カップルがそこから排除されて権利や利益を受けられないのは差別である、と強く非難。

その差別的扱いがスティグマ(負の烙印)となって、性的マイノリティの人たちは「尊敬に値しない」「正常でない」という差別を強めてしまう、と訴えた。

法廷には、原告団を支援する多数の性的少数者やアライ(理解者)が駆けつけ、原告や代理人の言葉に耳を傾けた。

記者会見で語る、中川重徳弁護士(左)と加藤慶二弁護士
記者会見で語る、中川重徳弁護士(左)と加藤慶二弁護士
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■国は争う姿勢

一方、被告である国側は請求の棄却を求め、具体的な反論については、今後明らかにするとした。

弁論終了後、原告と弁護士が記者会見し、同性カップルに結婚が認められていないことで、自分を受け入れられない若者たちもいる、そうした苦しみを少しでも早く無くすためにも、今後の裁判でも原告の生の声を伝えていきたいと語った。

この日は札幌地裁でも第1回口頭弁論があった。4月19日には名古屋、26日には大阪の両地裁でもそれぞれ第1回口頭弁論が予定されている。

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