2020年09月30日 14時50分 JST | 更新 2020年09月30日 15時40分 JST

「男性なら髪を短く、女性ならひっつめ髪で」LGBTQ+が直面する“就活スタイル“の壁を考える、パンテーン #PrideHair プロジェクトが始動

LGBTQ+の元就活生の体験談をもとに、自分を偽らずに、自分らしさを表現できる就職活動について考える、パンテーン「#PrideHair」プロジェクトが立ち上がった。

リクルートスーツを着て、黒髪で、男性は短髪、女性は髪を結ぶ──。令和になっても就活はまだまだ変わらない部分が大きい。社会や企業の「暗黙の期待」は未だ根強く残っていて、それに応えなければと多くの就活生が“期待された姿”で就活をしているのではないでしょうか。

“型”にはまらなければ不採用にされてしまうのではないか。自分らしさを出したいのに、就活では本当の自分を隠している……そう悩む人の中には、LGBTQ+など自身のセクシュアリティならではの悩みを抱える人もいます。

「髪は自分らしさの最後の砦」と話すのは、星賢人さん。今回はLGBTQ+当事者の就活にフォーカスして、星賢人さん、上井ハルカさん、ホルコム彩ジーンさんの3人に、就活のリアルな実体験を聞きました。

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左から上井ハルカさんホルコム彩ジーンさん、星賢人さん

就活で求められる“暗黙の普通”に違和感

──みなさんはどんな就活をしましたか?就活で戸惑ったことや悩んだことはありましたか?

ホルコム 就活で戸惑ったことは色々ありますが、例えば会社説明会の時に「女性だから将来結婚したり子どもを産むと思いますが……」と言われたこと。

私はカテゴライズされるのは好きじゃありませんが、分かりやすくいうならレズビアンです。だから将来結婚して子どもを産むのが“前提”みたいな言い方をされると違和感がありました。

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I T企業で働くホルコム彩ジーンさん

でも「LGBTフレンドリーな企業」を軸に就活すると、日本では選択肢がかなり狭まってしまうので、ある程度は「仕方ない」と思っていました。セクシュアリティはあくまで自分を構成する一部分ですしね。

 戸惑ったことでいうと、僕はゲイなので、面接で「あなたは同性の友だちからどう思われている?」「彼女いるの?」など異性愛を前提とした質問をされると、自分のセクシュアリティを話す土台がないな、と感じてしまいましたね。

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人材WEBサービスを運営する星賢人さん

就活中は話の流れでカミングアウトすることもあれば、しないこともありました。面接によっては過去の原体験を深掘りすることがあると思いますが、自分のアイデンティティの一部にセクシュアリティがあるので、言わないと伝わらなかったからです。

上井 私はトランスジェンダーのMtFで、女性の格好をして働き始めたのは約2年半前に今の福祉関係の仕事に就いた時からです。派遣で働いていた頃の自分はショートボブで、社会的に“男性”として許されるギリギリの髪の長さでした。それでも「男性=短髪」の固定概念からか、面接ではよく髪の長さを指摘されましたね。

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福祉業界で働く上井ハルカさん

5年くらい前のことだったかな。派遣先に面接に行く時、派遣元の会社の人が私の髪をワックスでオールバックに固めたんです。そして「男らしいよ」と言ってきました。その人にとっては褒め言葉だったと思うんですが、私はもう鏡も見られませんでした。

「仕事だから男性は短髪」なぜですか?

──就職活動をする時、それまで人それぞれ好きな髪型やカラーを楽しんでいたのが一変。黒染めをして男性は短髪、女性は髪を結ぶなど、“就活スタイル”にせざるを得ない状況が今も続いています。

上井 髪というものは、その人そのものではないでしょうか。一度就活のために髪を切ったことがあるのですが、洋服を着ないで裸で歩いているような気分になりました。

派遣時代は「セクシュアリティは隠さなきゃいけないものだ」と思っていました。でも髪だけは譲れなくて、髪が長い“男性”として働いていました。面接や働いている時はいつも「髪を短くしろ」と言われたり、無言のプレッシャーを感じていたりしましたね。

なぜ清潔感のある髪でも短くしなきゃいけないのか聞いても、「仕事だから」「男だから」としか言われません。誰も「男性は髪を短くしなければならない」理由を分かっていなかったんです。

 僕はおでこが広いのがコンプレックスで、長めの髪にこだわりがありました。でもインターンに行く時、選考に影響するかもと不安になり、黒髪短髪にしました。

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「インターンに行く時、選考に影響するかもと不安になり、こだわりだった髪を切った」と話す星さん

でも、短髪にしたらコンプレックスが余計に気になってしまって、自分に自信が持てなくなりました。周りの友だちからも「オーラがなくなったよね」と言われたり……。

髪は自分らしさの最後の砦なんだな、と実感しました。自分が好きな髪でいると、自信が持てることに気づいたんです。

ホルコム 私は短髪でツーブロックの今の髪とパンツスタイルが自分にしっくりきます。学生時代から髪にはすごくこだわりがあって、ツーブロと共に生きています(笑)

でも母親から「その髪で就活するの?」と心配されて、「世間ではやっぱり良くないのか」と思ったこともあります。実際、トイレでよく男性に間違われるんですよ。“短髪でパンツスタイル”というだけで「男性だ!」と思う人が結構多いです。

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「トイレでよく男性に間違われる。いちいち訂正するのも疲れちゃいました」と話すホルコムさん

私はいわゆるボーイッシュなスタイルが好きですが、別に男性になりたいわけではありません。このスタイルが自分にしっくりくるし、自分らしさを表現するために譲れないものです。

この髪の悩みって、セクシュアリティ関係なく多くの就活生が抱いていることなんじゃないかと思いますね。

自分の個性を表現できる就活にするために、企業に伝えたいこと

──最近では企業の中にも「LGBTフレンドリー」な発信が増えてきました。

ホルコム 発信してくれるのはいいことだなと思います。発信の中にLGBTQ+に限らず「ダイバーシティ」が含まれていると魅力的に感じますね。

でも企業は発信するだけじゃなくて、具体的にアクションに落とし込めているかが大事だと思います。就活の時もどんな取り組みをしているのか中身を見るようにしていました。

上井 私も、発信するのはいいけど、実際の中身が大事だと思います。特に気になるのが、「トランスジェンダー=性別移行が済んでいる人」のイメージが企業側にあるんじゃないかということ。

実際、性別移行途中の人が「LGBTフレンドリー」を謳う企業に面接しに行ったら、「戸籍が男性なのに髪が長いと言われ、不採用にされた」と聞いたことがあります。どこまで信頼していいのか分からないのが正直なところですね。

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「トランスジェンダー=性別移行が済んでいる人のイメージが企業側にあるんじゃないでしょうか」と話す上井さん

トランスジェンダーが自分の性自認にあった外見になるには、手術の有無に関わらず長い時間がかかることを知って欲しい。性別移行途中の人は、みなさんがイメージする女性像、男性像と異なることもあるかもしれません。髪が短くて化粧をしない“女性”や髪の長い“男性”がいることを、企業はちゃんと想定して欲しいです。

 企業が、LGBTQ+やダイバーシティについて発信してくれるのはとても嬉しいです。「わざわざ発信していると宣伝みたい」とネガティブに見る人がいますが、発信しないと“ないものと同じ”になってしまうかもしれません。

LGBTQ+を特別扱いしたいのではなく、異性を愛すること、性自認が一致していることが当たり前“じゃない”100年後の世界を作りたい、と思うからこそ、わかりやすくLGBTQ+という言葉を使っているだけだと思います。

少しでもLGBTQ+という言葉を使う必要がない世の中が早く来るように、私自身も奮闘しています。

今、就活生に伝えたいことは?

── 自分らしさの表現に悩みながら就活を頑張っている人へ伝えたいことはありますか?

上井 大学を卒業して、就活して、就職するだけが人生じゃないし、どこにも内定しなくても「生きていく場所がない」と思わないで。世間は思っている以上に広いから、自分の興味関心を大事にして活躍できる場所を探して欲しいです。

 自分らしさは個人が持っているものでもあるし、社会と触れ合う中で自分らしさが作られるという側面もあると思います。

社会も日本も確実に変わってきているし、先に社会に出ている僕たちが変えます。だからもっと希望を持って欲しいです。

ホルコム 髪や服装は自分らしさを形成する大切な部分だし、働く上でモチベーションに関わってきます。常識の範囲内で好きな髪型でいいと思うし、そこに突っ込んでくる会社はこっちから願い下げでいいと思いますよ!

企業も変わっていくべきだし、自分が苦しくなっちゃうくらいなら今までの“当たり前”を疑ってもいいと思います。

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左から上井ハルカさん、ホルコム彩ジーンさん、星賢人さん

◇◇◇

パンテーンはブランドメッセージ「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」のもと、2018年から「#就活をもっと自由に」「#令和の就活ヘアをもっと自由に」と就活における広告キャンペーンを展開。ひとりひとりの個性について考えるきっかけ作りに取り組んできました。

2020年9月30日からは、LGBTQ+当事者の就活体験談をもとに、自分の個性を偽らずに自分を表現できる就活を考える「#PrideHair」プロジェクトを開始します。少しずつ社会の多様化が進む一方で、就活における“暗黙の期待”は未だ根強く、「自分の個性を偽る場」になってしまっています。

パンテーンは「#PrideHair」プロジェクトを通して、一人ひとりの声を可視化し、「個性が尊重される就活」の実現に向けたアクションをみなさんと一緒に考えていきたい、とプロジェクトに対する思いを表明しました。

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今回インタビューに応じた3人もこのキャンペーンに対するそれぞれの思いを話してくれました。

上井 「髪を切ることは、ずっと大切にしてきたプライドまで切ることになるから。」というコピーに強く共感します! 「髪は女性の命」という言葉がありますが、昔から「なぜ女性だけなの?男性もどんな人にとっても命なのに!」と思っていました。

 セクシュアリティに関わらず、就活生の多くが抱える悩みなんじゃないかと思います。もちろん、当事者の中にも髪がアイデンティティではない人もいると思います。でも就活の「一律ルール」はやっぱり辛いから、「#PrideHair」からいろんな人に伝わって、多様な選択肢が増えればいいなと思います。

ホルコム 私も就活の髪については、セクシュアリティに関わらずきっといろんな人が悩んでいることじゃないかなと思いました。自分にとって髪は大事なアイデンティティなので、共感する部分があります!

この記事が就活で自分らしさの表現に悩む1つ1つの多様な声に気づき、考える人が増えるきっかけになることを願っています。 

#PrideHairプロジェクトサイトはこちら